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今月のNEWSな人・東 樫(あづま かし)
野蛮に自らの喜びを追求した
その先で……『大棍棒展』再び!

東 樫(あづま かし)全日本棍棒協会会長にして、棍棒飛ばしチーム「大宇陀神殴仏s」主将。『人類堆肥化計画』(創元社)の他、『棍棒入門』、『KONBOU CLUB創世号』(共に全日本棍 棒協会)など刊行物も多い。Instagram @greatkonbou
200本ものこん棒がごりっと並び、全力で試し殴りもできた2022年の『大棍棒展』(だいこんぼうてん)から3年。2回目となる『大棍棒展』を前に、主催者である全日本棍棒協会の東 樫さんを奈良・大宇陀に訪ねた。『人類堆肥化計画』(創元社)の著者でもある東さんは、里山を「いびつで禍々しい不定形の怪物」として捉え直しつつ、宇陀の地で生活実践を営む農耕民でもある。
「のどかな里山ってよく言われるけど、自分の実感としてはもっと激しくにぎやかな場所だと思っていて、いろいろな生き物が文字通り命がけで生きる生態系の中に人間も身を置いている。道徳的で清貧を売りにしてやってきた結果の限界がもう見えてるわけで。こん棒にも似たところがあって、従来の木製品は木の温もり、優しさと形容されがちだけど、同じ木でもこん棒になった途端に怖いものカテゴリーに変わる。これは面白いなって」
第1回の『大棍棒展』では、3000円から6万円までのこん棒が約100本売れた。実際、樹種ごとに異なる重みや匂いがあって実は千差万別、なにより殴る機能に特化したルックスは、無性に人を引き付ける迫力がある。
「普段から木製品に囲まれているのに、それが山に生えていた木だという意識が希薄なんだと思う。こん棒って持ち手を削ってるだけで、残りの打撃部はもとの木の姿のまま。何も削られてない丸太だと面白がれないのに、こん棒になった途端に面白くなる。人間の意識って興味深いなと。ただ、第1回は歴史上初の『棍棒展』だったから物珍しさで売れたところもあって、今回はまた違うことも見せていかなあかんとは思ってます」
とは言うものの、販売が主目的では決してなく、あくまでも自分たちの楽しみのため、そして里山に目を向けてもらうことも目的の一つ。だから、「KONBOU(棍棒飛ばし)」なる新スポーツまで考案して、10月末には宇陀で第2回の全国大会を開く。
「愛媛の内子、栃木の足利など全国6チームが参加するトーナメント戦と個人戦も開催予定です。大量にこん棒を作ってるとやっぱり何か殴らなあかんよなって気持ちになるけど、殴る用途は閉ざされている。いろいろ試すなかでこん棒をこん棒で殴って飛ばす競技が生まれました。細かくルールも整備して、参加者は山のケアをすることも要件にして。けど、こん棒を自作してこの競技で勝つには、山が豊かじゃないとそもそも無理。だから、参加者が増えるとその分だけ全国の山がよくなる仕組みで、野蛮な風に見せて注目を集めつつ、実はちゃんと考えているところもある」
従来の里山保全活動とはまったく違うルートで里山と真摯(しんし)に向き合って、その傍らにこん棒がある。第2回となる『大棍棒展』では、人が中にも入れる3メートル大の即身こん棒、芯材原木を磨きあげた「抗朽曝露芯材棍棒」(通称・パワーウッド棍棒)のような新シリーズの展示、初となる「棍棒品評会」も開催される。スローガンは「まだ棍棒がある」だ。まずはリアルなこん棒の重みを体験してほしい。
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企画展:『大棍棒展二〇二五』
期間:9月27日(土)~10月12日(日)
場所:アートエリアB1
- 住所大阪市北区中之島1-1-1 京阪なにわ橋駅B1
- 営業時間11:00~18:00
- 定休日月
- 料金1,000円
- アクセス京阪なにわ橋駅から徒歩すぐ
- 問い合わせメールgreatkonbou@gmail.com
取材・文/竹内 厚 写真/西岡 潔