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今まで5分の1だったものを
がんばって全部背負いたい

 今年4月より個人活動をスタートさせた岡﨑彪太郎は、早速『あの夏、君と出会えて〜幻の甲子園で見た景色〜』で、大舞台への出演を決めている。彼が演じる高校球児・津田昭夫が夢見た聖地・甲子園で話を聞くことができた。

編集部(以下・編) 本日、甲子園のグラウンドに立ったとうかがいましたが、気分はいかがでしたか?
岡﨑(以下・岡) すっごい感動しました! 整備が行き届いていて「こんなに(芝生の)緑がきれいなんや」って。でもそんな所に、自分が踏み込んでしまうのは、高校球児たちに申し訳ないとも思いました。
編 大阪出身ですが、これまで甲子園に来たことは?
岡 中に入るのは初めてです。実際に足を踏み入れたことで「(舞台では)ここを目指していくんだ」という意思を持つことができたし、解像度高く演じられそうな気持ちがしてきました。
編 『あの夏、君と出会えて』は、コロナ禍で甲子園に行けなかった元高校球児が、岡﨑さん演じる昭和17年の高校球児と出会い、共に甲子園を目指すという物語です。まずオファーがあったときは、どのような気持ちになりましたか?
岡 すごく不思議な感じでしたね。(主役の)藤井(直樹)さんと共演することも、野球がテーマということも、戦時中の話ということも、本当に驚きでした。それと同時に、いろんな試練とか、乗り越えなきゃいけない部分もあるだろうな、って。
編 野球にはなじみはあったのでしょうか。
岡 キャッチボールぐらいです。周りはサッカーをやっている子が多かったし、僕は父の影響でテニスをやっていたので。
編 今は野球の特訓を受けているそうですが、本格的にやってみていかがですか?
岡 いや、思ってる通りにはいかないですね。球速は出なくても、球筋ぐらいはいけるんちゃう?と思ってたんですけど、まったく無理(笑)。打撃の方も、「バットに(球が)当たるわけないやん!」って、振れば振るほど思ってきました。
編 演じる津田くんは、どんなキャラクターですか?
岡 すごく自分に厳しいけど、人情にあふれるすてきな子ですね。年齢的にも自分とは近いキャラなので、高校時代の感覚をまだ忘れていないうちに、この役ができるのはありがたいです。もう、どんどん抜けていく感じがあるので(笑)。
編 とはいえ、戦時中の若者との価値観の違いにとまどうところもあるのでは。
岡 「お国のために」的な精神が、難しい部分です。僕はやっぱり、自分が一番大事なので。でも演じる時には、心からそういうふうに思ってないと伝わらないことが多くなってしまうから、そこが課題だと思っています。

主人公と同じような悔しさを
感じていたのを思い出した

編 心身共に鍛えなければならないことが多いということですね。でもその中でも、何か楽しみが見えてきたのでは。
岡 役作りでランニングや肩のトレーニングをしてるんですけど、自分の中でどんどん筋トレがブームになってきました。特に大胸筋と上腕二頭筋のトレーニングが楽しいです。野球の技術と体力が付いて、しかも筋肉もあったらカッコいいじゃないですか? だから今は、一石三鳥みたいな気持ちです(笑)。
編 個人活動として初めての大きな仕事ですが、改めて一人になって感じることはありますか?
岡 シンプルに、背負うものが5倍になりました。それこそこういう取材でも、5人いたらしゃべる量も5分の1になるし、コンサートでもセットリストを決める人や、歌を頑張る人みたいな役割分担を結構してたんですよ。だからその全部を、これから背負っていかないといけないなと思います。
編 ずっと関西で活動してきていますが、どこか好きな場所はありますか?
岡 なんばですね。特に大阪公演を開催する[大阪松竹座]は、毎年のように舞台に立たせていただいてるので、すごく縁(ゆかり)を感じます。お風呂が広くって気持ちいいんですよ。夏はアレですけど、冬はそこで全部洗って、今日のお風呂はおしまいにしちゃうというのが、よくあります(笑)。
編 今回はまだ残暑の季節なので、おしまいにはできなさそうですね。最後に、この舞台で野球以外の見どころを教えてください。
岡 僕と同世代の方って、コロナ禍が学生時代に食い込んだ人が多いと思うんです。大事な学生時代がコロナ禍で潰れて、もったいないとか、辛い経験をしたんじゃないかと。僕たちもコンサートができなくて「いつになったらできんねやろう?」って、もどかしさや悔しさを感じていたなあ……と、台本を読んだ時に思い出しました。
編 そういう意味では、コロナ禍で不完全燃焼となった主人公の気持ちには、多くの人が寄り添うことができそうです。
岡 そうですね。特に何か大きな目標を持っていた人なら、絶対共感できる部分が多いと思います。僕も野球をしっかり練習するので、ぜひ注目してください!

Profile
岡﨑彪太郎
KOTARO OKAZAKI

2004年生まれ、大阪府出身。2016年に舞台『ANOTHER & summer show』で芸能界デビュー。2019~2024年にアイドルグループ「Lil かんさい」として活動。2025年4月1日の解散まで、コンサートや情報番組出演などで活躍した。個人で、ドラマ『年下彼氏2』(ABC)、リーディングアクト『一富士茄子牛焦げルギー』などに主演している。

STAGE INFORMATION
松竹創業百三十周年
『あの夏、君と出会えて ~幻の甲子園で見た景色~』
9月6日(土)~14日(日)

コロナ禍で甲子園の夢を絶たれた元高校球児・森下令児(藤井直樹)は、突然昭和17年の東京にタイムスリップ。彼の野球の実力を認めた、江戸川実業高校野球部主将・津田昭夫(岡﨑)に誘われ、改めて甲子園を目指すようになるのだが……。脚本は、映画『フラガール』、NHKの連続テレビ小説『マッサン』などを手がけた羽原大介。

会場/大阪松竹座
作/羽原大介 演出/木村弥寿彦 
出演/藤井直樹、岡﨑彪太郎、前島亜美、宮地真緒、永井 大 ほか
料金/1等席12,000円、2等席5,000円共に全席指定 
問い合わせ/0570-066-007(チケットホン松竹/大阪公演専用ダイヤル)
https://www.shochiku.co.jp/

写真/中島真美 取材・文/吉永美和子

※この記事は2025年10月号からの転載です。記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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