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今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!

文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、割とジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶を嗜むこと。

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。

☑『Take Me Out 2025』

メジャーリーガーたちを通して見る、今の世界と未来

大谷翔平選手の活躍で、すっかり日本人にも身近な存在となったメジャーリーグ(MLB)。その世界をテーマにした衝撃作の、7年ぶり2度目の再演が実現した。主な舞台となるのは、強豪チーム「エンパイアーズ」の選手たちがくつろぐロッカールーム。スター選手の一人が、他チームの選手に感化されて、自分がゲイであることをカミングアウトした。選手もスタッフも、彼の告白を巡って意見が真っ二つに分かれてしまい、チームも不振にあえぐ。そこに圧倒的な強さの魔球を持つ、謎めいた投手が新たに加入し、チームを救うかと思われたが……。
 本作が初演された、20年ほど前のアメリカが直面していたさまざまな社会問題を、「野球」という娯楽的な題材を通して浮き彫りにしていく異色の群像芝居。所々に挟まれるアメリカ流のユーモアや、演劇ならではの手法で表現される試合のシーンに心を踊らされつつも、球場では無敵に見える選手たちが、実は現状から「Take me out(連れ出して)」と願っているということに、共感と教訓を得るような気持ちとなるだろう。演出の藤田俊太郎が「未来に対する警鐘と、未来に対してあるべき姿を描いている」と語る世界を見に、いざ球場……いや、劇場へ!

『Take Me Out 2025』
日程/6月27日(金)~29日(日)
場所/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
作/リチャード・グリーンバーグ 演出/藤田俊太郎
出演/玉置玲央、三浦涼介、章平、原 嘉孝、小柳 心、渡辺 大 ほか
料金/一般9,800円(全席指定) 
公式サイト/www.gcenter-hyogo.jp
問い合わせ/0798-68-0255(芸術文化センターチケットオフィス)

☑パルコ・プロデュース2025『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』

中井貴一×行定 勲による、昭和映画界への賛歌

『世界の中心で、愛をさけぶ』『今度は愛妻家』などの作品で知られる映画監督・行定 勲が、俳優・中井貴一に熱烈オファーをして実現した、昭和の映画界を舞台にした人間ドラマ。映画の黄金期が終わろうとする時代の撮影所を舞台に、皆に「先生」と呼ばれた監督を取り巻く現実と、彼が見たひとときの幻が交錯していく。芳根京子や柚希礼音など多彩な俳優たちが、これまで先生と関わった女性たちとして絡んでいくのも見どころ。映画監督だからこそ、舞台でしかできない演出にこだわってきた行定と、昭和時代から幾多の映像作品に出てきた中井が、昭和の映画への愛をどのように立体化するかに注目しよう。

パルコ・プロデュース2025『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』
日程/7月5日(土)~7日(月)
場所/森ノ宮ピロティホール
作/鈴木 聡 演出/行定 勲
出演/中井貴一、芳根京子、柚希礼音、土居志央梨、藤谷理子、升 毅、キムラ緑子 ほか
料金/一般12,000円(全席指定) 発売中
公式サイト/stage.parco.jp
問い合わせ/0570-200-888(キョードーインフォメーション)

☑ミュージカル『LAZARUS-ラザルス-』

伝説のロックスターのミュージカルを日本初上演

1970年代に、ロックの世界にシアトリカルな要素を持ち込み、その後の音楽&アートシーンに大きな影響を与えたロックスター、デヴィッド・ボウイ。演劇とも縁の深い彼が、逝去の直前まで手掛けたミュージカルが、日本で初めて上演される。主人公は、かつてボウイが映画で演じた、地球に取り残された異星人・ニュートン。地球人たちと触れ合いながら、自分の運命を探すニュートンを演じるのは、ボウイに憧れてロックの道に進んだという松岡 充だ。「Heroes」「Changes」など、世代を超えて人々の心を動かすボウイの音楽を通じて、彼が最後に表現しようとしたものを、ニュートンとともに見つけに行こう。

ミュージカル『LAZARUS-ラザルス-』
日程/6月28日(土)・29日(日)
場所/フェスティバルホール
音楽・脚本/デヴィッド・ボウイ 脚本/エンダ・ウォルシュ 演出/白井 晃
出演/松岡 充、豊原江理佳、鈴木瑛美子、小南満佑子、渡部豪太、上原理生 ほか
料金/S席13,800円(全席指定) 発売中 
公式サイト/lazarus-stage.jp 
問い合わせ/0570-200-888(キョードーインフォメーション)

☑らんぶる 第一回公演『晩節荒らし』

還暦超えのベテラン俳優同士が、真剣に遊ぶ二人芝居

関西小劇場界の出身で、ドラマ『相棒』の角田課長役などでおなじみの俳優・山西 惇が、同い年の俳優・佐藤 誓と「演劇で真剣に遊べる場所」を作るために結成したユニット。3年間の準備期間を経て、ついに旗揚げ公演を実現する。高度な劇構成と人情味を両立させた舞台で人気の高い、岸田國士戯曲賞作家・福原充則を作・演出に迎えて上演するのは、濃密な二人芝居だ。「世の中の役に立ちたくなった男」と「誰かの役に立っていたかを知りたくなった男」が、土地と時空を超えて右往左往するという複雑怪奇な物語。しかし数々の修羅場をくぐり抜けてきた二人なら、その面白さをひょうひょうと伝えてくれるはず。

らんぶる 第一回公演『晩節荒らし』
日程/7月19日(土)・20日(日)
場所/ABCホール
作・演出/福原充則 出演/佐藤 誓、山西 惇
料金/一般6,800円(全席指定) 発売中
公式サイト/www.lambre.jp
問い合わせ/0570-00-3337(サンライズプロモーション東京)

☑ダンス公演 ポスト舞踏派『魔笛』

森山未來らが踊る、舞踏×オペラのダンス作品

飛んだり跳ねたりする西洋のダンスと異なり、地面を「踏む」ことを強く意識する、日本独自の踊り・舞踏。このジャンルのレジェンド的な存在の笠井 叡(あきら)が、森山未來や辻󠄀本知彦などのトップダンサーたちと組んだ「ポスト舞踏派」の最新作が、関西で初めて上演される。モーツァルトのオペラ『魔笛』を、フィナーレから序曲まで逆回転状態で見せることで、モーツァルトが本作に込めた秘密のメッセージを解き明かすという試み。ただ美しい動きを鑑賞するだけでなく、遊び心のあるビジュアルとユーモアが楽しめるのもポスト舞踏派の特徴。「現代ダンスの見方が分からない」という人ほど、目撃するべき祝祭空間だ。

ダンス公演 ポスト舞踏派『魔笛』
日程/7月5日(土)
場所/神戸文化ホール 中ホール
振付・演出・構成・出演/笠井 叡 出演/森山未來、辻󠄀本知彦、猪野なごみ、島地保武、大植真太郎
料金/一般5,000円(全席指定) ほか 発売中
公式サイト/www.kobe-bunka.jp/hall/
問い合わせ/078-351-3349(神戸文化ホールプレイガイド)

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。

※この記事は2025年8月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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