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人生何があるか分からないから
「これが正解」は決めたくない

 モデルとして同世代の女性から支持を集める一方、俳優としても確かなキャリアを重ねている玉城ティナ。5月23日(金)公開の映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』では、岸辺露伴をヴェネチアの迷宮へと誘う仮面職人の女性・マリアを演じています。

SAVVY2025年6月号に掲載のインタビュー記事をWEB限定で本誌未掲載カットでお届け。ぜひチェックしてくださいね。

ヴェネチアの街を
歩いているのは役か自分か?

編集部(以下・編) 今回演じる「マリア」は、ある「呪われた運命」の元に生まれた女性です。
玉城(以下・玉) マリアは運命を受け入れざるを得ない感じで生きてきましたが、ただ受け身というわけでもなく、自分の頭で考えて納得して生きている。とても芯の強い子だなと思いました。彼女は仮面職人として仮面作りをしながら、どうやったら自分は自分らしく生きられるのか、迷いを抱えながらも自分の居場所を探している。そこは私自身の仕事に対する導かれ方と重なる部分もあったし、親から受け継いだ血筋とか関係性みたいな部分でも考えさせられたり、いろいろ共感する部分が多いキャラクターでした。
編  役作りはどのようにしましたか?
玉  岸辺露伴シリーズの登場人物は独特のせりふ回しといい、奇抜なファッションビジュアルといい、強烈なキャラクターが多いんですが、マリアはそこまで強烈なところはないし、わーっと喋るキャラクターでもない。だから、感情的に作り込んでいくというよりは、ちょっとした目線なんかで内なるものをにじませるように心掛けました。
編  岸辺露伴役の高橋一生さんとの共演はいかがでしたか?
玉  カメラが回る前から、岸辺露伴として出来上がった状態でそこにいらっしゃることに驚きましたね。漫画のキャラクターなのでデフォルメしてキャラを立たせた部分もあるんですが、生きている人間としてちゃんと血が通った感じがある。計算されているのに自然。そこがこのシリーズの魅力なのかなと思いました。高橋さんはもう5年間、岸辺露伴を演じていますが、岸辺露伴の立ち位置は他のキャラクターを通して変わっていくものなので、毎回ちょっとずつアップデートしてるとおっしゃってて。緊張しましたが、とにかく付いていくしかない! という感じでした。
編 泉京香役の飯豊まりえさんとは、古くからのご友人なんですよね。
玉 そうなんです。私、もともと泉京香という役がすごく好きで、すごく明るくて天真爛漫だけど鋭いところもあって、彼女にぴったりだと思っていたので、今回間近でそれを見れて感動しました(笑)。一緒のシーンは実は少ないんですが、ヴェネチアでの撮影で彼女が一緒にいてくれて本当に助けられました。同世代で昔から一緒に仕事してきた二人がヴェネチアで一緒に撮影をしてるなんて人生何があるか分からないものだねって話をしました。彼女がマリアという役はティナにぴったりだと言ってくれたのも、うれしかったですね。
編 邦画初の全編ヴェネチア・ロケということで、退廃的なムードを漂わせるイタリアの古都と岸辺露伴ワールドとのコラボも見どころです。
玉 本当に建物も街並みも圧倒的なオーラがあって。ずっと撮影していると慣れてはくるんですが、ふとわれに返った時にすごいところにいるなと不思議な気持ちにさせられました。東京だと車で移動することも多いですが、ヴェネチアは船か歩きの二択しかないんですよ。だから撮影現場にも歩きながら向かうことが多かったんですが、いま歩いてるのは自分なのかマリアなのか分からなくなる瞬間がありました。

生活に緩急をつけたいから
プライベートでは自分を緩める

編 20代後半になって、仕事への向き合い方は変わりましたか?
玉 仕事を始めた頃は、撮影で1カ月とかワーッと濃密な時間を過ごして、オールアップしたら「お疲れさまでした」って終わる、みたいなことに戸惑いもあったんです。毎回想像もしないような出会いがあって、今まで自分が良しと思っていたことが今回の監督は違う、みたいなこともある。柔軟な姿勢が求められる仕事だなと思いますし、適材適所もあるので、あまり重く考え過ぎず、今日できることを全力でやろう、と考えるようになりました。
編 20代後半といえば、女性はライフステージの変化を実感する時期でもあります。
玉 20代前半はまったくそんな話にならなかったのに、いきなり「結婚は? 子供は?」みたいなムードになりますよね。まさか自分が結婚するとは思ってもいなかったし、昔も今も、結婚はしてもしなくてもどっちでもいいと思っています。人生って本当になにがあるか分からないし、「こうするぞ」みたいなのは決めたくない。「これが正解」みたいなのを決めちゃうと、そこから少しずれただけで間違えた気になるのが嫌なんです。もちろん「こうなりたい」と思うことは大事だけれど、それが自分を縛るものになると本末転倒なので、別になんでも良いか、みたいなことは常に思っていますね。
編 そんな自分でいるために行っている趣味や習慣などはありますか?
玉 最近ハーブティーを飲むのが習慣になってて、自分のコンディションに合わせてブレンドしてもらったものを飲んでいます。以前は、例えば「頭が痛かったら薬を飲む」というのが当たり前になっていたんですが、もっと自分の自然治癒力みたいなのを高めたくて。生活に緩急を付けたい気持ちもあって、プライベートでは自分を緩めてリラックスすることにフォーカスしてます。歳を重ねるにつれて、自分はここが足りてないなということも分かってくるので、ハーブの力を借りて、自分の弱みを底上げでしていきたいですね。

Profile
玉城ティナ
TINA TAMASHIRO
1997年、沖縄生まれ。2012年に講談社主催のオーディションで初代グランプリを獲得。同社発行の『ViVi』専属モデルとなる。2014年に俳優デビュー。代表出演作は『Diner ダイナー』『惡の華』『窓辺にて』『#ミトヤマネ』『366日』など。

MOVIE INFORMATION
『岸辺露伴は動かない 懺悔室』
2025年5月23日(金)公開

荒木飛呂彦の人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ『岸辺露伴は動かない』を高橋一生主演で実写化したテレビドラマの映画版第2作。人気漫画家の岸辺露伴はベネチアの教会で仮面をかぶった男のざんげを聞く。それはかつて誤って浮浪者を殺した男がかけられた「幸せの絶頂を迎えた時に“絶望”を味わう」呪いについての告白だった。

© 2025『岸辺露伴は動かない 懺悔室』製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

監督/渡辺一貴 原作/荒木飛呂彦 脚本/小林靖子 
出演/高橋一生、飯豊まりえ、玉城ティナ、戸次重幸、大東駿介、井浦 新 ほか 
劇場/TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ梅田、OSシネマズミント神戸 ほか
HP/[映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』公式サイト]

写真/中村寛史 取材・文/井口啓子 ヘアメイク/今井貴子 スタイリスト/丸山佑香(まきうらオフィス)

※この記事は2025年6月号からの転載です。記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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SAVVY9月号「島旅 船旅 」
発売日:2025年7月23日(水)定 価:900円(税込)