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イラストレーターの久保沙絵子が、毎月1冊をピックアップして、勝手にその本の表紙を制作する企画。イラストが描き上がるまでを追いかけます。4冊目は、高野和明の代表作『幽霊人命救助隊』です。

久保沙絵子/イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。

この小説は、自殺をして天国にも地獄にも行けない4人の男女が神様からの命令で自殺志願者の自殺を食い止める、という話。自殺って悲しく寂しい現象です。だけどこの小説は、温かいです。もう死んでしまった人、死にたい人、いつか死にたくなる人を救うように書かれていて、「人にも自分にもやさしくしないといけないな。」と、振り返ることができる1冊だと思っています。

『幽霊人命救助隊』
著/高野 和明
文藝春秋 (文春文庫)

幽霊人命救助隊は、神様から伝えられた救助者数のノルマを達成するべく、次々と自殺志願者の自殺を食い止めていきます。

救助しながら主人公が自殺志願者に対して思うのは「なぜ、そんなことで自殺をするの?」という疑問。側から見ると”そんなこと”でも、本人にとっては消えたいほどに思い詰めてしまうようなことがたくさんあるということです。

そんな、それぞれの個人的な辛さを、わたしはスマホやSNSのせいにしたくなります。スマホがあるから、SNSがあるから、今の世の中、とても人と比べやすくなっていると感じます。

容姿やライフステージ等、人と自分を比べて落ち込み、たまに優越感に浸り、無意識のうちに心をすり減らしている気がします。自分にとって、スマホを触ったりSNSを見ることは、”楽しいことによく似た楽(らく)なことでしかない。”と、いうのを頭に置いておきたいです。

スマホの画面には「死にたい」と検索したときに出てきた画面を描きました。相談できる場所のリンクなどがたくさん出てきます。

折れた傘を描きました。折れた傘では、降る雨に立ち向かえないですね。

幽霊人命救助隊は、天国にも地獄にも行かせてもらえていないため、天使ではありません。

だけど、辛い人を見守り、助けているから天使のような存在にも思えます。

以前、この連載でも取りあげた作家・中島らもさんの名言に「その日の天使」があります。”一人の人間の1日には、必ず一人「その日の天使」がついている”というものです。この天使の存在には、苦しいときほど気づくのだと、中島らもさんは書かれていました。

久保沙絵子の勝手に表紙作ります 2冊目(1)
『今夜、すべてのバーで』(著/中島らも)への作品

私もこの先辛いとき、幽霊人命救助隊のような天使みたいな助っ人が現れてくれたらいいのに。と、思います。

WEB連載「久保沙絵子の勝手に表紙作ります。」は、毎週水曜更新!次回は、5/28(水)公開予定です!
著者

久保沙絵子

大阪在住、雑誌やウエブなどで活躍中のイラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチの作風が特徴。線の質感にこだわり、作品はすべて一発書き! 制作は、生命保険の粗品のスヌーピーのコップで白湯を飲みながら。また、街中でスケッチすることも。もし、見かけたらぜひ声をかけてください。

  • Instagram
    @saeco2525

※過去記事は、ハッシュタグ #久保沙絵子の勝手に表紙作ります をクリック

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