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今月、スパイされる人
橋本央尊さん

IT企業に勤めパソコンの前でうなる日々。趣味の音楽作りでも、度々スピーカーの前でうなっている。

テーマは、“ジャンルレスに楽しむ” 3冊

☑1.『新東京』


写真/鈴木 親
G/P+abp 3,850円

☑2.『クジラアタマの王様』


著/伊坂幸太郎
新潮社(新潮文庫) 825円

☑3.『リバース』


著/湊 かなえ
講談社 1,540円

写真、挿絵、文、さまざまな表現が世界を広げる

 本を選ぶときはジャンルにとらわれないという橋本さんが教えてくれた1冊目はフランスの雑誌『Purple』をきっかけに国内外で活躍中の写真家・鈴木親が1990年代から現在に至るまで撮りためた東京の風景をまとめた写真集。仕事の都合で上京が決まったとき、これからお世話になる街を事前訪問する気持ちで手に取ったそう。「写真の多くは、渋谷や新宿、目黒という“まさに東京だ”と思わせる場所だけど被写体は花や川、何気ない人々の生活などと意外にも普遍的。東京は常に時代の最先端でどこも雑多でせわしないイメージでしたが、ごく普通の日常や変わらない風景もあるんだということをこの本が教えてくれました」

 タイトルに引かれて読み始めた2冊目は“現実世界”と“夢の世界”が交差する不思議な物語を描いた長編小説。「著者の他の作品は学生のころからよく読んでいて。この小説では主人公の日常生活での描写が多く、彼自身の性格や言動もごく一般的に描かれているので共感しやすかったです。驚いたのは、挿絵を使った巧みな仕掛けや見事な伏線回収。挿絵が重要な役割を果たしていることに気付いてからは絵をじっくり見ながら物語の展開を予想する楽しみ方ができて新鮮でした。読み進めるにつれて主人公は一般人では経験し得ない状況に陥るのですが、なくもない話にも感じる絶妙なリアルさも面白かったです」

 橋本さんが3冊目に選んだのは2017年にドラマ化もされた人気ミステリー小説。「推理小説やどんでん返しのある物語は昔から大好きなのに、なぜか読んだことのなかった“湊かなえ作品”。初めて読むなら有名な作品からと思い手に取りました。スローテンポな展開で読者を安心させておいて、急に裏切ってくる。最後の1ページを読み終えたとき、思わず声を上げてしまうほど意表を突かれました。この小説で完全に“湊 かなえ作品”にはまり、すでに2冊目を購入しました(笑)」

 写真集、ファンタジー、ミステリーと異なるジャンルの3冊を読んで、かなり世界が広がった! と満足そうな橋本さんでした。

※この記事は2025年5月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認ください。
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