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イラストレーターの久保沙絵子が、毎月1冊をピックアップして、勝手にその本の表紙を制作する企画。イラストが描き上がるまでを追いかけます。3冊目は、アニメ化でも話題となった森見登美彦の代表作『四畳半神話体系』です。

久保沙絵子/イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。

連載3作目の『四畳半神話体系』。この小説は、勉学に励まず、不満と後悔を力に変えて大暴れする京都の大学生の話です。キラキラとしたキャンパスライフとは程遠いのに、なぜだか無性に主人公の大学生生活が羨ましくなる1冊です。

『四畳半神話体系』
著/森見登美彦
KADOKAWA (角川文庫)

『四畳半神話大系』は、4つの並行世界からなっています。
4つとも同じ主人公、同じ場所から始まりますが、主人公の選択によって物語の流れがそれぞれ分かれていきます。

キラキラキャンパスライフを渇望しながら、不満と後悔たっぷりに過ごす主人公ですが、選択により最終的に理想を掴むことができるのかどうか、というのがひとつの見どころです。

あの時ああしておけば……。
と、思ったことは誰でもあるはずです。
主人公の、ああしておけば……。がどうなるのかを見届けて、自分に重ねてみるといいと思います。
きっと、気持ちが楽になります。

机の上のホチキス留めされた紙の束は、大学の授業で提出するレポートです。
主人公は、単位修得用の偽造レポートを作成する”印刷所”と呼ばれる組織にレポートの作成を依頼していました。

部屋の中に、ついさっきまで人がいたような印象にするために、手の跡をたくさん残す、”ぱなし”を意識して、部屋に物を並べています。

私は、美術系大学に進んでおけば……。
と、大学在学中から社会人の初めくらいまで、長いこと後悔していました。
ですが、線画を中心に生きている今は、後悔の、”こ”の字も見当たらないような感じです。
よかった〜。と、しみじみ思います。

主人公は大学生活を、思うようには過ごせていないようですが、いろんな気持ちをフツフツと沸かし蓄積しながら作られた人間性は、とっても面白いです。

主人公に、今のままでいいと思うよ。
と、伝えたい気持ちになります。

WEB連載「久保沙絵子の勝手に表紙作ります。」は、毎週水曜更新!次回は、4/16(水)公開予定です!
著者

久保沙絵子

大阪在住、雑誌やウエブなどで活躍中のイラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチの作風が特徴。線の質感にこだわり、作品はすべて一発書き! 制作は、生命保険の粗品のスヌーピーのコップで白湯を飲みながら。また、街中でスケッチすることも。もし、見かけたらぜひ声をかけてください。

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    @saeco2525

※過去記事は、ハッシュタグ #久保沙絵子の勝手に表紙作ります をクリック

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