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“誰よりも好奇心旺盛な
「視聴者代表」のスタンスで”

夕方の報道番組『news ランナー』内の企画で話題となっているのが、堺出身の俳優・大東駿介さんによるレギュラーコーナー「大東駿介の発見! てくてく学」。街深掘り系企画だけど、大東さんは通行人とも「会話のセッション」をし、取材対象者には前のめりに質問。これは新たな「ロケの達人」の登場。
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カンペはなく、自分の
聞きたいことを質問する

編集部(以下・編) 大東さん、街ロケがうますぎます……! 道ですれ違う人に「なぁ、これ知ってる?」と話し掛けて、さらっと街の人をフレームインさせたり。まさに関西のお兄ちゃんという感じで、自然体で街を歩かれてますよね。
大東駿介(以下・大) 「今、僕たちはテレビの撮影でお邪魔してます!」という顔をして街を歩くことが、僕はあまり好きじゃなくて。「非日常のテレビマンが来たよ!」という雰囲気が。その街の日常を生きている方にお話を聞く街ロケであるなら、僕ぐらいは日常の中にいたいなって。だから台本はあまり読み込まないようにしてるんです。
編 取材対象(街や店や人)の情報を頭に入れ過ぎないようにしている……と?
大 台本を僕が読み込みすぎると、テレビ的に欲しい答えを導くための質問をしちゃうと思うんです。僕は、その人と街の物語を自分で探りに行く、というスタンスでいたい。自分が相手から話を引き出さないといけないから、待ちの姿勢ではだめですよね。だから「会話のセッション」をすることを心掛けてます。
編 取材対象者に本当に興味を持っているんだな、ということは、大東さんの輝く目が語ってます。大東さんが食い気味で話を聞くから、取材される人も、カメラを向けられた用のしゃべりじゃない。
大 スタッフさんにはなるべくカンペを出さないでほしいともお願いをしてるんですよ。(一般の方は)カンペを見るだけで委縮するやろうし、テレビ的なことを強いるのは失礼な話やから。僕も、本心から知りたいから質問してる。そうすると相手も心を開いてくれる。自分の気持ちで質問して、向こうも自分の気持ちで答えてくれるから、必然的に仲良くなっちゃうんですよね。番組の収録で大阪に来た時は、前にロケで訪れた場所にプライベートで遊びに行ったりするから、忙しいんです(笑)。
編 テレビロケという「いち仕事」で終わらない関係性が続くって、すてきです。
大 僕、日本中を巡りながら、伝統工芸を引き継いでる方や農家さんに会いに行ったりする旅が好きなんです。日本中を旅するなかで、自分が生まれた大阪のこと知らんってどやねん、と思っていたタイミングでこの番組のお話をいただいて。ぜひやらせてください、と。知的好奇心から人と出会う旅をしていた僕にとって、この「発見! てくてく学」はその関西版ですね。

俳優・大東/人間・大東、
この両輪で走ってます

編 「人と出会う旅」というのは、どうしてやろうと思われたんですか?
大 俳優をやってると、自分のなかで矛盾が生まれるというか。いろんな人生を演じているのに、芸能界という小さな社会でしか生きていないことに矛盾を感じてしまうんです。「芸能人らしさ」はよく分からないですけど、僕は「自分らしい生き方」をしたいなって。さらに言えば俳優って、仕事でいろんな地方に行けるんだから、それに甘えて日本中の知らない職業、出会ったことのない人、僕にはない感性を集めに行こう、って。
編 「仕事」と「知的好奇心の旅」を同時に行われていたんですね。
大 仕事先でずっとホテルに滞在してるっていうのも、僕からしてみればちょっと物足りないというか。例えば、北海道在住の役で、現地での撮影が1カ月あります……となれば、北海道に友達を作るべきだと思うんです。それが現代劇だったら、その土地で暮らしてる人と仲良くなった方が、土地のリアルなムードとか人の温度感が体に染み入るわけやから。ホテルの部屋では見つからないこと、台本を手にする自分の頭のサイズ感では分からないことが、けっこうあると思うので。だからまずは人を探しに行く。人と出会うことで自分の価値観も変わるし。
編 大東さんは「自分で探しに行く」というスタンスを大事にされてるんですね。
大 関西人らしい発想で言うと、損得勘定でちょっと動いている感じもあります。1カ月という撮影期間で、役に向き合った俳優・大東駿介に達成感はあるだろうけど、同軸で生きる人間・大東駿介は何を育めただろうか、ということを考えるんですよ。俳優としてアウトプットする僕と、人間としてインプットする僕……今この両輪で時間を使おうと意識してて。
編 俳優・大東さんと人間・大東さんを常に同時に走らせてるって、エネルギーめっちゃ使いそう、とか思ってしまうのですが……。
大 仕事一本軸でやってるほうが無理が生じるんちゃうかな、と僕は思うんですよ。そうなると休日に依存したりする。僕は、休日にするようなリフレッシュを仕事中にしてるみたいなものだから(笑)。プライベートで旅しながらいろんなものを吸収したい、ということを、仕事しながらやってるわけで。インプットとアウトプットを同時にしてるので全然エネルギーが枯渇しない。「発見! てくてく学」も、仕事だけの場とは捉えてないです。お店の大将に歴史を聞いたりするインプットの場。だから、このロケに疲労というものを感じたことないですね。

Profile
大東駿介
SHUNSUKE DAITOH

1986年生まれ、大阪・堺市出身。2005年に芸能活動を開始。リアリティのある演技を追求し、関西を舞台にした作品に出演する際は制作陣に関西弁のせりふのアイデア出しもするそう。待機作に5月公開予定の映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』、 2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』がある。

TV INFORMATION
『news ランナー』「大東駿介の発見! てくてく学」
月〜金曜16:45〜/カンテレ
※3/31より 月〜金曜16:50〜

事件や事故、トラブルなど、社会問題となっている出来事を記者が追跡取材する関西テレビの報道番組『news ランナー』。その木曜レギュラーコーナーとして、2024年10月からスタート。その地域ならではの取り組みや歴史、人の魅力あふれる街の店のドラマを、俳優の大東駿介が探しに行く。公式YouTubeチャンネル「カンテレNEWS」にて、これまで訪問した各地域の過去放送回も配信中!

写真/中島真美 取材・文/廣田彩香

※この記事は2025年5月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている場合があります。最新情報をご確認ください。

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