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宇宙から眺めた無常の世界

☑『宇宙旅行』/田山ショーゴ


*Spotifyほかデジタルリリース
配信中

2002年生まれ、茨城県出身のシンガーソングライターによるデビューアルバム。ベッドルームから宇宙へ、というストーリーラインに内なる孤独と社会との距離感を投影し、ドリームポップ~シューゲイザー調のサウンドとイノセントなボーカルに刻み込んだ全11曲。そのコンセプト自体は珍しくないが、浮遊感一辺倒でふんわりと表現するのではなく、すでに別の惑星にすみ着いた者から地球へと送られるレクイエムのような、SF的無常観や物悲しさがあるのが大きな魅力となっている。

これが好きなあなたには……
☑『ヘブンリィ・パンク:アダージョ』(2002年)/七尾旅人

全34曲、2時間33分に及ぶ壮大かつ七尾本人の中にある小宇宙を示したコンセプトアルバム。「天使」、「天国」というモチーフやイノセントなボーカルからにじむ退廃感、トリップ感と、一瞬で心を震わす美しいメロディーのせめぎ合いに酔わされる傑作。

文/森 樹
編集者、ライター。近々取材で茨城県の大洗に行くことが決まって、現地でのアンコウ鍋チャンスに沸き立っています。

シンプルな音で胸に迫る、
強じんな前作の続編

☑『Tears of Injustice』/Mdou Moctar


*Beat / Matador
発売中 2,500円

“砂漠のジミヘン”とも称される熱量の高いサウンドでニジェールから世界へ躍進し、今年はついに「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演が決定した4人組の新作は、前作『Funeral for Justice』を丸ごとアコースティックな編成で再録音したもの。クーデターが起こって不安定化する祖国を取り巻く状況への怒りに満ちた前作とは一転したフォーキーなアレンジが、ラウドさの奥に潜んでいたメロディーの良さと、彼らの地に足の着いた表現力の深さを浮き彫りにしている。砂漠のブルース入門としてもぜひ!

これが好きなあなたには……
☑『Funeral for Justice』(2024年)/Mdou Moctar

“正義の葬儀”というタイトル通りに祖国のニジェールで政変が起こる中で録音され、政治的なメッセージを発することにもためらいなくエナジーを爆発させた2024年リリース作。今、世界で最も真摯(しんし)かつ刺激的なロックを奏でている。

文/吉本秀純
大阪市在住の音楽ライター。今年のフジロックでは、インドネシアのThe Panturas、アルゼンチンのCa7riel & Paco Amorosoあたりも楽しみです。

海を超え共鳴する
都市的ナイトミュージック

☑『Telepa Telepa』/一十三十一


*ビルボードジャパンレコーズ
発売中 3,080円

約8年ぶりのオリジナルアルバムとなる本作は、その間海外でも躍進を続けた一十三十一と海外アーティストのコラボやcero、Yogee New Wavesといった秀逸な国内のソングライターたちからの提供による粒ぞろいの楽曲集。今や手垢が付き過ぎたとも感じられる「シティポップ」というその表現を避けようにも避けられないほどに、都市生活を彩るサウンドと歌声は現在地を更新し続け、彼女が放つシティポップ・ディーバとしての説得力は増す一方だ。

これが好きなあなたには……
☑『WINDORGAN』(2021年)/Yogee New Waves

左のアルバムの3曲目「Wave Of You」を提供した角舘健悟氏が作詞曲とボーカルを務めるバンド。ロマンチックな詩世界は決して突飛であることはなく、現実を見つめた先にある本質的な美しさがサウンドと共に織りなされている。

文/原田美桜
バンド・猫戦の作詞曲とボーカル担当。猫とワインを愛する日韓ミックスルーツ。今号の発売頃に開花し始めそうなサクラが楽しみ……!

※この記事は2025年5月号からの転載です。記事に掲載の情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認ください。
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SAVVY5月号『北浜・中之島』
発売日:2025年3月22日(土)定 価:900円(税込)