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今月のNEWSな人
取材・文/竹内 厚 写真/原 祥子
『実寸』
期間:開催中~4月20日(日)
場所:VOU/棒 1Fギャラリー
[VOU/棒]10周年で展開中の
実直なる実寸展、その心は?
手描き文字を中心にさまざまなメディアでデザインを手掛ける大原大次郎さんが、京都のギャラリー&ショップ[VOU/棒]で個展を開催中。それも過去作紹介ではなく、5月に10周年を迎える[VOU/棒]に合わせた全力投球の展覧会だ。
「[VOU/棒]が積み重ねてきた10年に応えたいという気持ちの良いプレッシャーになって、この場所に合わせた面白い課題設定ができたと思ってます。このタイミングで僕に声を掛けてくれたのもうれしくて」
関西カルチャーを牽引してきた[VOU/棒]といえば、「棒」キャップをはじめ、数々のオリジナルグッズでもおなじみだが、それらの文字は、京都を拠点にする文字デザイナー、三重野龍氏が手掛けているのも知られるところ。
「そうなんですよ。三重野くんが[VOU/棒]とやってきたことをめっちゃリスペクトしてるし、友人としても切磋琢磨してきたので、彼に展示を見られて、いつもの大原さんの感じやなと思われないようにって、そこは自分の一つの基準になりました。もう一つ言えば、どっちが上手い下手とか、売れてる売れてないとかのせめぎあいで苦しむんじゃなくて、ベストよりもベター=自分のより良い成長でいこうって感じでやったほうが楽になるよなという気付きを最近、海外のサインペインターから学んだこともあって、その話にも展示のなかで触れてます」
そう、今回の展示の前半は、『実寸』展ができるまでの試行錯誤や、大原さんが考えたことなどがつらつらと手描き文字で書かれた構成で、展覧会オープン前夜に即興的に書いたというその文字も含めて率直なテキストは読み応えも十分。そうやって決まった展示テーマが『実直に実際に実感できるような「実寸」』。メガネやラケットの実寸、久しく会ってなかった友人の実寸、テトリス棒の実寸、小京都のような概念の実寸まで。後半の展示ではさまざまな実寸を検討している。
「実寸ということが『実物大に描く』って話だけでもなくて。そのやり方だと、個人的な実感に近づけなくてあまり楽しめなかったので、今回、行き着いたのは、僕が使う道具自体、その線の太さとか筆圧とかによる変化が僕の実寸として画面に出てるなという気付きでした。あと、描くモチーフにも縛られなくなって、ビッグフットの足跡ような、本当はいないんだよねというものの実寸感まで考えてみたりもできました」
プロンプトを打てば大原大次郎風に出力される、そんなAIの進化もある中で、今回の試行錯誤を通して一つの気付きも得たという。
「作者本人の手へのフィードバックがあることの実感が大事というのかな、そこに作者としては大きな違いがあるなと感じました。もしかすると、見る人にとってはあまり違いが分からないかもしれないけど、この手応えということが、物作りを続けていく上で残っていく部分じゃないかなって感じられて、ちょっと気が楽になったかな」
大原大次郎 おおはら だいじろう
1978年、神奈川県生まれ。タイポグラフィを基軸とした数々のデザインワークを手がける。4月からの『瀬戸内国際芸術祭』ではホンマタカシの展示にデザイン面で関わる。
Instagram @daijiro_ohara
『実寸』
期間:開催中~4月20日(日)
場所:VOU/棒 1Fギャラリー
- 電話番号075-744-6942
- 住所京都市下京区筋屋町137 VOU bldg./棒ビル
- 営業時間13:00~19:00
- 定休日木
- 料金無料
- アクセス阪急京都河原町駅から徒歩6分