イラストレーターの久保沙絵子が、毎月1冊をピックアップして、勝手にその本の表紙を制作する企画。イラストが描き上がるまでを追いかけます。2冊目は、第13回(平成4年)吉川英治文学新人賞を受賞した中島らもの代表作『今夜、すべてのバーで』です。

久保沙絵子/イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。
連載2作目は、何かに取り憑かれてしまったとき、苦しくてもぼんやりとやり過ごす主人公のあり方がとてもリアルな、『今夜、すべてのバーで』(著/中島らも)への作品。ずっと手元に置いておこうと思っている一冊です。
著/中島らも
講談社 (講談社文庫)
「人はみんな、何かに依存してしか生きられない。」という内容の言葉が出てきます。言い換えると、人はみんな弱いものだということです。だけど、弱いから強くなる瞬間が見いだせるのだと考えると、たとえ苦しくても、悪くないなと思えます。
物語の終盤に、それまで淡々としていた主人公が大きく取り乱す場面があります。ハッと何かに気付いた途端に考え方がぐんと変わって、主人公が強くなる。そんな瞬間に立ち合えたような気持ちで読んでいました。
『今夜、すべてのバーで』を読み終えた後、中島らもさんにハマり、らもさんの過去の映像をいろいろと見て思った”中島らもさんはこんな人”というイメージと、この本のイメージがバチッと合っていました。
許せることの幅が広い人だったのかなと思います。
そしてこの本も、とても受け皿の広い優しい本だと思いました。
アルコール依存症という、少し難しいテーマではありますが、小説を通して「あなたも、あなたもあなたも、大丈夫ですよ。」と、言ってくれているような話です。
自分の弱いところはどういうところか、また、それを補填する強さはどこで見いだすことができそうか、ちょっと考えるきっかけになるかもしれません。
そして完成!
1軒目で飲んで、2軒目にも行って、そしてフラフラさまよってこの路地にたどり着いた。そんなイメージで描きました。

久保沙絵子
イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。
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