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今月、スパイされる人
澄 さん

建築、デザインを見たり、インタビューや文章を読むことが好きな20代。銭湯の匂いも、なんか好き。

テーマは、“縁やタイミングを大切にする” 3冊

☑1.『軽いノリノリのイルカ』


著/満島ひかり、又吉直樹
マガジンハウス 1,980円

☑2.『渡辺のわたし 新装版』


港の人 1,650円

☑3.『夫婦間における愛の適温』


著/向坂くじら
百万年書房 1,870円

興味のあることや人をたどって手に取った3冊

 本を読むきっかけは、興味のあることとのつながりを見つけたときや、その本を読みたい衝動に駆られたタイミングだという澄さん。縁をたどって読んでみたものに面白いと感じることが最近増えてきたそう。

 そんな澄さんが、元々好きだった俳優や写真家が関わった作品と知り手に取った1冊目は、俳優・満島ひかりが考えた回文を元に芸人兼作家として活躍する又吉直樹が物語を描いた短編集。「イラストや写真を効果的に使っていることもあって、一種の展示会やインスタレーションを見たような密度でした。又吉さんは“いくつかの物語が暗くなった”と語っていましたが、ストーリーの最後はどれも不思議とほんのり明るくてさっぱりしていたように思います。薄暗いトンネルを歩いて霧の中の光に向かう、ある日のさんぽのような空気が心地よかったです」

 「M-1グランプリ」を見ていて「渡辺」の名前を使ったネタが流れたときに“今かも”と思い、読みたいものリストから選んだという2冊目は、自由な作風で現代人の心を突く歌人・斉藤斎藤の短歌集。「短歌ってこんなことしていいの? と驚きましたが、読み進めるうちに、歌集でしかできないこんなこと……と合点がいきました。短歌の世界を自由に踊りながら進んでいる本だと思います。SNSで一首単体で目にすることも増える中、連作で読むと印象が変わる作品が、歌集の意味や良さを示してくれました」

 3冊目は、詩人・向坂くじらが自身の夫婦生活をありのままにつづったエッセイ。人を好きになることや愛についての哲学って意外と人から聞く機会がないな、と考えていたところ、タイミングよく友人が薦めてくれたそう。「軽い話題から芯を食った哲学の話へ移行するのが、仲の良い友人と話しているみたいで面白い。哲学や道理は重要だけどそれ以上に目の前にいる誰かと一緒に生きていきたいという衝動に振り回されてしまうところに人間らしさを感じます」

 「無意識に日常生活の中で興味を持つトリガーを探しているからか、ライトに見えてディープな3冊が今の自分の興味とぴったり合った」と話す澄さんでした。

※この記事は2025年4月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認ください。
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