イラストレーターの久保沙絵子が、毎月1冊をピックアップして、勝手にその本の表紙を制作する企画。イラストが描き上がるまでを追いかけます。2冊目は、第13回(平成4年)吉川英治文学新人賞を受賞した中島らもの代表作『今夜、すべてのバーで』です。

久保沙絵子/イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。
連載2作目は、何かに取り憑かれてしまったとき、苦しくてもぼんやりとやり過ごす主人公の在り方がとてもリアルな、『今夜、すべてのバーで』(著/中島らも)への作品。ずっと手元に置いておこうと思っている一冊です。
著/中島らも
講談社 (講談社文庫)
尼崎の展覧会で、中島らもさんの小説の生原稿を見たのがきっかけで、らもさんに興味を持ちました。
それで、本をたくさん持っている叔父に「らもさんの本ある?」って聞くと、どっさりらもさんの本ばっかりが入った大きな紙袋を渡してくれました。
その中に入っていたのが今回の本『今夜、すべてのバーで』です。
アルコール依存症で緊急入院した男性が主人公の、依存症ストーリー。
らもさんの実体験をベースに書かれた小説です。
アルコール依存症を経験した人がアルコール依存症の体の変化や精神を書いたからこそ、解像度がものすごく高いです。
そして、なぜだがはわからないけど、文章がとても読みやすいです。
喉ごしがいいような感じで、つるつる読めてしまいまうのに、心にたっぷり残る小説です。
モデルにする風景は、新宿ゴールデン街の路地。
2年前の夏、新宿ゴールデン街の路地に立ってスケッチしたことがあります。
今回は、それとは別のアングルから。
2年前の夏、新宿ゴールデン街の路地に立ってスケッチしたことがあります。
今回は、それとは別のアングルから。
奥へ奥へいろんなものが重なっているのはいいことです。
前にあるもののおかげで、奥のものが、より奥にあるっぽくなります。
前にあるもののおかげで、奥のものが、より奥にあるっぽくなります。
自分の今がよくない状況だったとしても、深刻になりすぎず、ぼんやりとその状況を俯瞰するような主人公のあり方がとてもいいなと思いました。
“ピンチをチャンスに変える。”みたいな、熱い言葉がしんどい時もありますから。
“ピンチを静かに観察する。”
これもいいなと思います。
WEB連載「久保沙絵子の勝手に表紙作ります。」は、毎週水曜更新!次回は、3/12(水)公開予定です!
著者

久保沙絵子
イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。
- Instagram.com@saeco2525
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