世界の最果てで出会った
天使の指先のよう
☑『Luminescent Creatures』/青葉市子
*hermine
発売中 3,300円
青葉市子の8枚目のオリジナルアルバム。歌声の息遣い、ピアノの打鍵、コントラバスの爪弾きが耳の近くに感じる。そこへビオラ、チェロ、ハープが静かに舞い降りてくる。音の使者たちが幻想的な世界へと導いてくれる、極上のサウンドスケープ。10曲目「SONAR」で印象に残った歌詞「やみのむこうに点滅してる、さいしょのうたごえ」はまさに、青葉市子というアーティストを表した言葉だと思う。彼女の存在は、世界の最果てで立ち尽くす孤独にそっと触れる天使の指先のよう。
これが好きなあなたには……
☑『呼吸』(2001年)/Lily Chou-Chou
映画「リリイ・シュシュのすべて」で生まれたシンガーソングライターのアルバム。青葉市子は後に監督の岩井俊二とアルバム曲を演奏している。「リリイ・シュシュ」のはかなくて残酷で美しい世界を知ってから、今も私の中にこの音楽がこだまし続けている。
文/Tokiyo Ooto
シンガーソングライター。3/26(水)は[SOCORE FACTORY]でJUU4E & Friends「イズ」ツアー大阪編に出演。詳細はXにて!
ユーモアとアイデアの
空想科学音楽集
☑『hajimeht』/立花ハジメ
*Sony Music Labels Inc.
発売中 4,400円
ギタリストでサックス奏者で、グラフィックデザイナーの先駆者としても活躍してきた立花ハジメの40年以上にも及ぶ軌跡を振り返る、初のオールタイムベスト盤。東京発の1980’sニューウェーブとその後、の絵巻物として貴重なアーカイブでもあるけれど、御大ならではのユーモアとアイデアあふれる空想科学音楽集なり。令和の今でも近未来的ロックンロール、そして環境音楽的なファンタジー性は唯一無二。選曲は本人と高木 完、小山田圭吾。マスタリングは砂原良徳。
これが好きなあなたには……
☑『Low Powers』(1997年)/立花ハジメとLow Powers
『hajimeht』にも収録された、立花ハジメがプラスチックスを解散し15年後に組んだロックバンド。当時14歳のeri(現在はアクティビストでビンテージショップ[DEPT]オーナー)のあどけない歌×立花のギターサウンドが癖になる。Low=脱力に浸る心地よさ。
文/中村悠介
編集者。京都市在住。先日、[梅田クアトロ]での立花ハジメのライブへ。何が起こるか分からない、ニューウェーブのムードに新感染。
ロンドンで切り開いた、
ジャパニーズR&Bの新境地
☑『Zatto』/⼩袋成彬
*エピックレコードジャパン
発売中 3,300円
シンガーソングライター小袋成彬の3年ぶりのアルバム。ロンドンの腕利きミュージシャンたちと作り上げた楽曲は、生楽器によるグルービーかつ温かいサウンドが持ち味。その上に歌謡曲を思わせるような、日本語の響きを重視した歌をのせるスタイルはノスタルジックながら新鮮にも感じる。特に表題曲「Zatto」は日本語をオーセンティックなファンク、ジャズのサウンドに持ち込んだという意味でエポックメイキング的で、彼がこれからの日本のR&Bシーンのゲームチェンジャーであることを証明している。
これが好きなあなたには……
☑『Voodoo』(2000年)/D’Angelo
名盤と名高いD’Angeloの2nd。実は「Zatto」は「Voodoo」と同じエンジニアが担当しており、小袋のサウンド面でのルーツをこのアルバムで感じられる。ドラムのQuestloveが生み出す強烈なグルーブは一度聞くと病みつきに。
文/北川航成
SAVVY編集部スタッフ。バンド・穴熊のギター担当。2月にバンド初のアルバムリリースが決まりました! 楽しみ!