今この瞬間を感じて、
生きることを大切にしたい
ヒロインを演じた『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022年)では韓国で公開された邦画実写作品において歴代2位の観客動員を記録。話題沸騰のドラマ「トリリオンゲーム」に出演するなど、近年めざましい活躍を見せている福本莉子さん。3月公開の映画『お嬢と番犬くん』では、ヒロインの一咲を演じる。
ヒロインの二面性を
目線の違いで表現
編集部(以下・編) 『お嬢と番犬くん』は、極道の孫娘「一咲」とその”番犬“である若頭「啓弥」の溺愛ロマンチックコメディです。
福本莉子(以下・福) 現実にはあり得ない、ファンタジックな世界観が面白いですよね。私自身、中高生時代、少女マンガが大好きでよく読んでいたので、この二人の関係性は少女マンガならではのものだなーと楽しみながら演じることができました。
編 一咲は極道の家に生まれたがゆえに、普通の高校生活や恋愛に憧れている女の子です。ご自身と通じる部分はありましたか?
福 原作コミックスの絵柄が儚くかわいらしいこともあって、最初は一咲に対して「かわいらしい女の子」というイメージを持っていました。でも、実はツッコミが鋭かったり、男っぽい一面もあって、ギャップのあるところが魅力。私も関西人なので普段はけっこうツッコミをしちゃう。そこは似てるなと思いました。あと中学の時はサッカー部だったので、劇中のボールを蹴るシーンはうまくやれたと思います(笑)。
編 福本さんは、いわゆる「普通の高校生活」を送れた?
福 高校1年生のときにこの世界に入ったんですが、週末だけ東京に行ってお仕事をしていた感じだったんです。だから行事もちゃんと楽しめたし、周りの友達もグランプリを取ったからといって、特に態度が変わるわけでもなく、これまで通り接してくれていたので、 普通の高校生活を送っていました。
編 役作りで特にこだわった点があれば教えてください。
福 今回、監督から「上目遣いをデフォルトにして」と指示があったんです。一咲はこれまで友達があまりできなかったので、学校で友達と喋っていても、上目遣いでどこか様子をうかがっているようなところがあるからということでした。実際にやってみて、ただ目線を変えるだけなのに、こんなにオドオドした雰囲気になるんだ! と驚きました。逆に、啓弥に対しては家族みたいな感じで自然体でいられる。その特別な関係性が出るように啓弥としゃべるときはリラックスした目線でしゃべるように意識しました。
編 啓弥役のジェシーさんとの共演はいかがでしたか?
福 私はバラエティーで活躍しているジェシーさんをよく見ていたので「面白いことを言う人」みたいなイメージがあったんです。でも初めて会った時のジェシーさんは穏やかで落ち着いた印象だったので、少し驚きました。ですが、撮影が進むにつれて、ジェシーさんがボケて現場がどっと明るくなるようなシーンが増えてきて、やっぱりムードメーカーだなと感心しました(笑)。
常にそばで守ってくれる
“番犬くん”は理想!?
編 そんなジェシーさん演じる啓弥は、普段はクールで強面なのに一咲に対しては盲目的な愛を注いでくれる。ツンデレ番犬っぷりがたまりません。
福 常にそばにいて守ってくれる男性がいるって心強いですよね。他の人にはクールなのに自分だけには思いを寄せてくれるって、ある意味、理想だなと思いました(笑)。一咲と啓弥は、お互い自分にないものを持ちながら、お互いを尊重して共鳴し合っている。そんな関係性はすてきだなと憧れますね。
編 福本さんは本作以外にも『思い、思われ、ふり、ふられ』『今夜、世界からこの恋が消えても』など、多くのロマンチックコメディに出演されています。
福 ロマンチックコメディとひと口に言っても、作品ごとに主人公の二人の関係性も違えば、抱えている思いも違う。だから、毎回難しいけど新鮮ですね。自分が演じる役のことをちゃんと調べて、この子は相手のどういうところに引かれてるのかな? とか、台本には書かれていない部分にまで思いを巡らせて演じるように心掛けています。
編 そういう意味では、恋人の数だけ恋愛の形があるし、深いですよね。
福 深いですね。今思えば、学生の頃の私は、なんであんなことで悩んでたんだろう? みたいに些細なことを宇宙規模で悩んでいました。でも、悩みに大きい小さいはないし、演じる人の価値観や思いをちゃんと受け止めたい。演じる年齢や立場を加味しながら、この人の思いはこうだろうなーと丁寧に考えながら演じていきたいですね。
今という時間を感じる
茶道は最高のリフレッシュ
編 今年は本作を始め、主演作の公開が控えています。多忙な日々の中で自分を見失わないために大切にしていることはありますか?
福 毎日のルーティーンでいうとお風呂ですね。どうしても人前に出る仕事をしていると、自分でも気付かないうちに体が緊張している。だから、毎晩必ず湯船に漬かって心身をリラックスさせるようにしています。あとは月に1、2回、茶道を習っています。もう四年目になるんですが、普段時間に追われがちだからこそ立ち止まって、おいしいお茶を点てて、季節の花や茶器を愛でながら、おいしいお菓子とお茶をたしなむ。そんな時間が最高のリフレッシュになっています。
編 今この時間をしっかり味わうことは、つい忘れがちです。
福 人間つい先のことを考えてしまうもので、スケジュール帳を見ていると、あっという間に一年終わりだ! って。焦ってつい今をおざなりにしてしまいがちだからこそ、一度立ち止まって、今この瞬間をしっかり感じて、生きることを大切にしたいですね。
今この瞬間をしっかりと感じる。そんな福本さんの姿はきっと、お芝居にも通じているはずです。
Profile
福本莉子
RIKO FUKUMOTO
2000年生まれ、大阪府出身。2016年開催の「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリ、集英社『Seventeen』賞を併せて受賞し、芸能界デビューを果たす。代表出演作は『思い、思われ、ふり、振られ』『今夜、世界からこの恋が消えても』『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』など。
MOVIE INFORMATION
『お嬢と番犬くん』
3月14日(金)公開
アニメ化もされた大ヒットコミックスが実写映画化。瀬名垣組組長の孫娘・瀬名垣一咲は、普通に友達を作って普通に恋をするという夢をかなえるべく、地元から離れた高校へ入学する。だが、過保護な若頭・宇藤啓弥が年齢を詐称しボディーガードとして高校に裏口入学してきて……。
監督/小林啓一 原作/「お嬢と番犬くん」はつはる 著(講談社) 脚本/政池洋佑 出演/福本莉子、ジェシー(SixTONES)、櫻井海音、香音 ほか 劇場/TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ梅田、OSシネマズミント神戸 ほか
取材・文/井口啓子 写真/門脇遼太朗 ヘアメイク/伏屋陽子(ESPER) スタイリスト/金順華
※この記事は2025年4月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている場合があります。最新情報をご確認ください。