今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!
文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、割とジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶を嗜むこと。
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。
☑ミュージカル『SIX』
英国王妃たちが音楽バトル! ガールズパワーさく裂の傑作
在位中に6人もの女性と結婚・離婚を繰り返した英国史上最大の暴君として知られるヘンリー8世。その6人の元妻たちが現代によみがえり、ガールズバンドを結成した! こんな驚きの設定でイギリスに社会現象を巻き起こした傑作ミュージカルが、日本キャストでの公演を実現する。
離婚させられた者、斬首刑とされた者、出産後に逝去した者……と、さまざまな理由でヘンリー王と離別した元妻たち。「王に一番ひどい目に遭わされた人」をリードボーカルにするために、どんな仕打ちを受けたのかを次々に歌って聴かせるが、そこから歴史の影に隠された彼女たちの真実の姿が浮かび上がってくる。日本キャストは、元宝塚歌劇団スターから元アイドル、日本のミュージカルを支える実力派まで、オーディションで厳選された精鋭ぞろい。全員がノンストップで歌い上げ、わずか80分で終了するステージはまさにバンドのライブそのもので、他のミュージカルにはない疾走感と一体感を味わえる。そして暗い過去と対立を乗り越えて、全員が自分らしさを取り戻すというフィナーレには、特に社会のいろんなしがらみにいら立ったり、縮こまったりしている女性たちの励みになるはずだ。女王たちと一緒にブチ上がろう!
ミュージカル『SIX』
日程/3月7日(金)~16日(日)
場所/梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
出演/鈴木瑛美子、皆本麻帆、原田真絢・遥海(Wキャスト)、エリアンナ・菅谷真理恵(Wキャスト)、鈴木愛理・豊原江理佳(Wキャスト)、和希そら・斎藤瑠希(Wキャスト)
料金/14,000円(全席指定)
公式HP/www.umegei.com
問い合わせ/06-6377-3888(梅田芸術劇場)
☑KAAT×新ロイヤル大衆舎『花と龍』
昭和の名優たちに愛された、波乱万丈の夫婦の物語
演出家・長塚圭史を中心に、泥くさい人情にあふれる“THE・昭和”な名作をよみがえらせるユニット・新ロイヤル大衆舎。今回は石原裕次郎や高倉健など、昭和のスターたちがこぞって出演した作品に挑戦する。明治~太平洋戦争直後にかけて、北九州の労働者たちを取り仕切った玉井金五郎と妻のマンが、多くのトラブルに直面しながらもたくましく生きていく姿を描く。金五郎を演じるのは、爆発力のある役が天下一品なユニットの看板俳優・福田転球。マン役は健気な色気のある役が絶品の俳優・安藤玉恵が演じる。令和ではなかなか見られない、直球だからこそ心にずどんと響いてくる骨太なドラマを堪能して。
KAAT×新ロイヤル大衆舎『花と龍』
日程/3月8日(土)・9日(日)
場所/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
原作/火野葦平 脚本/齋藤雅文 演出・出演/長塚圭史 音楽・出演/山内圭哉 出演/福田転球、安藤玉恵、松田 凌、大堀こういち ほか
料金/8,800円(全席指定)
公式HP/www.gcenter-hyogo.jp
問い合わせ/0798-68-0255(芸術文化センターチケットオフィス)
☑『オイディプス王』
現代人にも突き刺さる、古典の悲劇を最高の俳優で
ミステリアスな容貌と確かな演技力を武器に、数多くの舞台に出演する俳優・三浦涼介。2023年の初演で絶賛された公演を、ついに大阪でも見ることができる!古代ギリシャの都市国家・テーバイで、先王のきさき・イオカステをめとり新たな王となったオイディプス。彼に先王殺害の疑いがかかり、無実の罪を晴らそうとする中で思わぬ真実に直面する……。元宝塚歌劇団宙組トップスターの大空ゆうひがイオカステを再び担う一方、物語の鍵を握るきさきの弟・クレオン役として岡本圭人が新たに出演。謎解きのようなスリルもありつつ、人間の業をえぐってくるギリシャ悲劇最高傑作のパワーを、名優たちが最大限に増幅して見せる、極上の舞台だ。
『オイディプス王』
日程/3月1日(土)
場所/SkyシアターMBS
作/ソポクレス 翻訳/河合祥一郎 演出/石丸さち子 出演/三浦涼介、大空ゆうひ、岡本圭人 ほか
料金/一般11,500円(全席指定) ほか
公式HP/www.oedipus.jp
問い合わせ/06-6676-8466(SkyシアターMBS)
☑匿名劇壇『いいから早く助けてく』
笑いこそが救いの手? 現代の救済を考えるコメディー
自分たちの世代が直面する問題をリアルにとらえながらも、世代を超えて笑っちゃうようなユーモアにあふれたコメディーで評価される大阪の劇団・匿名劇壇。タイトルがすでに技ありの新作は、助けが必要な人たちのために働く「お助け屋」が主人公。借金や虐待のようなシリアスなものから、推しの失墜という一見どうでもよさそうなことまで、助けを求める声に応えようとするが……。どうしようもない今の世をシニカルな目線で描きながらも、いつの間にか観客の心に寄り添っていくのが匿名劇壇の魅力。まさに今「助け」が欲しいという人は、この現状を笑い飛ばすだけでもちょっとは救われた気分になるはずだ。
匿名劇壇『いいから早く助けてく』
日程/3月13日(木)~16日(日)
場所/インディペンデントシアター2nd
作・演出/福谷圭祐 出演/あこ、石畑達哉、佐々木 誠、東 千紗都、松原由希子 ほか
料金/一般4,000円 ほか※当日は+300円
公式HP/tokumeigekidan.jimdofree.com
問い合わせ/tokumeigekidan@yahoo.co.jp(匿名劇壇)
☑『三月花形歌舞伎』
初めての歌舞伎にぴったり! よりすぐりの古典ぞろい
漫画やアニメを題材にした新作歌舞伎が注目を集める中、期待の若手たちがあえて古典歌舞伎の名作に挑戦する名物企画。今年は、歴史的事件に巻き込まれた恋する女性の姿を描く『妹背山女庭訓』「三笠山御殿」(松プログラム)、実際の事件を元にした残酷で美しい立ち回りが見どころの『伊勢音頭恋寝刃』(桜プログラム)、5人の登場人物を一人の主役俳優が早替わりで演じ分ける『於染久松色讀販』「お染めの五役」(松・桜)を上演。「これぞ歌舞伎!」と感嘆する俳優の演技の妙と、派手な仕掛けの面白さを堪能できる上に、出演者による演目の解説もあるので、前知識ゼロで見に行っても楽しめるはず。
『三月花形歌舞伎』
日程/3月2日(日)~23日(日)
場所/南座
出演/中村壱太郎、中村米吉、中村福之助、中村虎之介 ほか
料金/1等席12,000円 ほか
公式HP/www.kabuki-bito.jp
問い合わせ/075-561-1155(南座)
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。
※この記事は2024年9月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。