このアーティスト、要チェック!
今月のNEWSな人
取材・文/竹内 厚 写真/小檜山貴裕
『In Front of Behind
~ インゴ・バウムガルテン+鈴木崇』
期間:開催中~3月29日(土)
場所:HRD FINE ART
“それ、どう見えてますか?”を
問うような写真による作品
西洋を中心とした長い美術史の文脈を踏まえた上で、写真をベースに制作している鈴木崇さん。ただ、絵画や彫刻などと違って、いわゆる写真という言葉で表されるものの際限のなさから、写真での制作には難しいところもある。
「写真って美術の領域に踏み込んだものもありますけど、広告や個人的な思い出、ただの記録でも全てが写真という同じ言葉で表されますよね。で、多くの人が日常的に見る写真の99%は美術の領域にはない写真なわけで。そのよりどころのなさ、いい加減さが写真というメディアの面白さであり、危うさ、難しさだと思ってます。でもそれってアートにも似てません?」
アートも写真も人によって思い描くものが全然違っているという点では確かにそうかも。そんな鈴木さんの作品を強引かつシンプルに要約すれば、見て捉えた視覚情報と認識の誤差やズレを提示するもの。たとえば、カラフルなスポンジを組み合わせて撮った「BAU」シリーズの話。
「人によっていろんな印象を受けると思いますけど、撮ってるのはただの日用品のスポンジ。しかも、自分でこういう組み合わせにしようとかは一切考えずに即興的に積み上げて撮り、こうすれば形が整うなとか思ってしまった時点で撮影はやめる、という作品です。なんだけど、立体感が分かるように二点透視図法で撮ってることもあって、意図的なオブジェにも見られる。それが写真のイメージがもたらすズレで、写真による美術表現の可能性がそこにあると思う」
アイデアとモチーフを固めてばちっと撮っているようでいて、実は即興や偶然性の要素を取り入れた制作にもなっているのが近年の作品。鈴木さんいわく、シュルレアリスムにおけるオートマティズム、ジョン・ケージのチャンス・オペレーションといった表現方法にも接続できる話でもあるのだが。
「固めたアイデアに被写体をあてがうというやり方に限界がきたのか、自分のコントロール外のものをどう入れるかを考えるようになってきましたね」
近年の展覧会では、日本各地で撮った街や建物のイメージを、これも即興的に組み合わせた作品(「Fictum」)をはじめ、それぞれに進めてきたいくつもの異なるシリーズの作品を組み合わせて展示空間を構成している。
「いろんなアイデアからなる作品同士が関係を結ぶような展示をすることが最近は増えています。アウトプットとしてはまったく異なるように見える作品でも、自分の中では同じような関心事から制作しているので」
京都での二人展と同時に、滋賀県立美術館で開催中の物撮りをテーマにした意欲的な滋賀県立美術館の展覧会『BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現』(〜3月23日)にも「BAU」シリーズを出品中。
「物を撮る『ブツドリ(物撮り)』というのは広告写真の分野で広まってきた業界用語だと思いますけど、この展覧会は広告写真ではないものがほとんどで。ただ物を物として撮るというだけの表現がいかに多様に発展してきたかを見せる、あらためて物撮りという概念を問い直そうという意図を感じる展覧会になっています」
鈴木 崇 すずき たかし
1971年生まれ。アメリカ・ボストンの大学を卒業後、ドイツ・デュッセルドルフでトーマス・ルフに学ぶ。町家を改修したギャラリーでの当展はドイツ人ペインターとの二人展。
www.takashisuzuki.com
『In Front of Behind
~ インゴ・バウムガルテン+鈴木崇』
期間:開催中~3月29日(土)
場所:HRD FINE ART
- 電話番号090-9015-6087
- 住所京都市上京区上御霊竪町494-1
- 営業時間11:00~19:00
- 休館日日~水
- 観覧料無料