イラストレーターの久保沙絵子が、毎月1冊をピックアップして、勝手にその本の表紙を制作する企画。イラストが描き上がるまでを追いかけます。記念すべき1冊目は、2016年第155回芥川賞受賞。『コンビニ人間』(著/村田沙耶香)です。
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久保沙絵子/イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。
「狂気を感じる絵ですね」と、お褒めいただく私の作風。連載第1回目は、狂気を感じる本に向けた絵にしよう思います。『コンビニ人間』(著/村田沙耶香)への作品。装画がすてきで、ジャケ買いした1冊です。
著/村田沙耶香
文藝春秋(文春文庫)
人にどう思われるかはもう気にせずに、好きなことをギューっと抱きしめて、没頭しながら生きていきたいな〜。と、思うことはもちろんあり、この話の主人公は、狂気の濃度を高めながら没頭していく姿を見せてくれる手本のように感じました。
反面、実際の私は、日頃の小さな後悔や反省を重箱の隅をつつくように細やかに気にしてしまいます。(私がつつく重箱は四隅だけではなく、ものすごい多角形でほぼ円形です。)
自分を取り繕った状態での人間関係に、どうしても嘘っぽさが透けてしまう場面が、この話の中にはたくさん出てきます。
私もこれは実体験から感じてきたことで、取り繕おうとしていなくても、うまくやろうとすること自体がそれに直結してしまい結果的に嘘っぽくなり…。なのですが、自分の人生の中の絵のウェイトが多くなればなるほど、そういう場面は確実に減ってきていると感じます。
やっぱり、自分の大好きなもの(アニメでも、電車でも、筋トレでも野鳥観察でも料理でもなんでも)と共にある自分はとてもプレーンで、よい状態なのだろうと思います。
それが、狂気的であろうとも。
タバコもイラスト制作もかっこいいとは思いませんが、タバコを喫いながら制作するのはちょっとかっこいいなと思っています。(タバコは吸いませんが……。)
私がこれぞ狂気と思っていることは”ながらスマホの自転車運転”です。
ひどいときはイヤホンしたまま。
器用だなぁとも思えないし、平然と命を危険に晒している姿が恐ろしくて、狂気を感じます。
そういえば、高校のとき、”ながらシス単の自転車運転”で通学している、やすとみーというあだ名の同級生がいました。
(シスタンとはシステム英単語帳のことで、私が通っていた大阪桐蔭高校では毎朝、早朝テストという英単語のテストがありました。やすとみーは自転車に乗りながらその勉強をしていました。いずれにせよ、ながら運転はNGです。)
お肌がとっても綺麗で、髪の毛がふわふわだったやすとみー。
元気にしてるのかなぁ。
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久保沙絵子
イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。
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