interview_HE_KAMIOFUJU-100

“同じ音楽が好きという人は
「話したいな」と思います。”

 爆風スランプの同名曲を基に、過去と現代の2つの恋愛を同時に描いていく映画『大きな玉ねぎの下で』。観た人を漏れなく涙させると話題の作品で、神尾楓珠は現代パートの主人公の一人・丈流(たける)を演じた。ナイーブで謎めいた役が似合う彼が、文字通り「等身大」の青年を演じたという点でも必見だ。

「素のまま」と言われたから
作り込み過ぎないようにした

編集部(以下・編) 『大きな……』は、平成と令和でまったく違う物語が流れますが、当然撮影も別ですよね。
神尾(以下・神)そうなんです。向こうがどうなっているかは全然分からなかったので、完成を見て初めて「こんな感じだったんだ」と。平成パートの男の子たちの、自由でワチャワチャした感じが、いわゆる「青春」みたいだなあと、うらやましくなりました。
編 丈流はちょっと冷めた雰囲気を持ちつつも、実は就職活動や、母親の病気から来る焦燥感を抱えているという、なかなか複雑なキャラクターです。
神 本当に冷めてる人ではないんですよ。不安があっても素直に表に出せないし、強がってるけど「強がってるな」とは思われたくない。それが冷めて見えるんじゃないかな? と思います。
編 丈流を演じる上で、準備をしたことはありますか?
神 草野(翔吾)監督から「素のままやってほしい」と最初に言われたので、演技を作り込み過ぎないようにしました。だから今回は、正直準備は全然しなかったです(笑)。
編 それでもやってみると、自分と相容れない部分も出てきたのでは。
神 僕はあそこまで人に強く当たることはないし、特に(相手役の)美優に対して「女性にそれを言うのはなあ」って(笑)。でも僕も丈流と一緒で、本気になっている人を「ダサい」と思っていた側だったんです。そういう考えがむしろダサいということを分かっているけど、僕はなかなか素直に感情にできなかった。そこが少し、丈流とは違うのかなあと思います。
編 その美優に対して、いつもケンカしているけど、どこかで通じ合ってるというさじ加減が絶妙でした。
神 美優との距離の作り方は、かなり難しかったです。本当に嫌い合ってるのではなく、お互いイジってるというか、はたから見るとかわいく思えるような会話のリズムを探るのが、苦労しましたね。
編 ノートの文字がすごくきれいだったのに驚いたのですが、練習されたのでしょうか?
神 幸い、文字は昔からきれいな方でした(笑)。僕は手紙もほとんど書いたことがなかったけど、やはり手書きって時間がかかるから、メールより文章と向き合う時間が長くなる。その分、相手に対する思いも強まっていくんだろうなあ……と感じました。
編 丈流と両親の関係も印象的でしたが、母親がずっと野菜を食べているか心配して、野菜ジュースを渡してくるのは「母あるある」でしたね。
神 僕はおじいちゃんと、そういうやり取りをしてました(笑)。おじいちゃん家に行くと毎回「持ってけ」って言って、紙パックの野菜ジュースを一箱ぐらい渡されていましたね。

世代で違いを楽しめるから
親子で見てほしい恋愛映画

編 神尾さんは、一世代前のロックをよく聞くそうですが、この『大きな玉ねぎの下で』は、なじみがありましたか?
神 爆風スランプさんは『Runner』とこの曲は知っていて。最初に聞いた時は「すごくピュアだな」と思いました。歌詞では「好き」という言葉を一つも使ってないのに、すごく相手の人のことを思っていることが伝わってくる、すごい歌です。
編 丈流と美優の距離が近づくきっかけは、同じアーティストのファンということでしたが、そういう経験はあるのでしょうか。
神 ありますね。同じ曲やアーティストが好きな人がいたらやっぱりうれしいし、話がしたいって思います。ずっと聴いてる音楽って、自分の人格形成に絶対影響しているはずだから、この人は自分と近い感性や感覚を持っているんじゃないかな? と、気になります。
編 ある取材で「関西の知識が全然ないから、これから知っていきたい」とおっしゃってましたが、あれからなじみの場所とかはできたのでしょうか。
神 ないですねえ。仕事ではよく来るんですけど、観光ができないんですよ。プライベートで兄弟と大阪に来た時も、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで全部完結してしまいました(笑)。大阪にイベントや舞台挨拶に行くたびに、やっぱりほかの所より、お客さんの距離が近いなと感じます。でも自分の中で勝手なイメージができてるから、逆に反応が薄いと「え?」ってなりますね(笑)。歓声をすでにこっちが待ってしまっていますから。
編 これを読んだ皆さんは、熱い反応を送ってほしいですね。この映画は、世代によって感想が大きく変わりそうで、そこが見どころの一つだと思います。
神 そうですね。上の世代の方は「懐かしい」と思うでしょうし、僕らの世代は「こんな時代があったんだ」と、新鮮に受け取ると思います。でもどっちの世代も「いい映画だったね」と思っていただけるんじゃないでしょうか。友達同士で観てもいいけど、親子で観に行ったら、感想が全然違ってくるのが面白いんじゃないかと思います。恋愛映画を親子で観に行くって、なかなかないですしね(笑)。

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Profile
神尾楓珠
FUJU KAMIO
1999年生まれ。東京都出身。2015年に『母さん、俺は大丈夫』(NTV)で俳優デビューし、人間の暗部も巧みに表現する演技力で注目される。主な出演作は、ドラマ『17 才の帝国』、『いちばんすきな花』、映画『彼⼥が好きなものは』、『恋は光』など。

INFORMATION
映画『大きな玉ねぎの下で』
2月7日(金)公開

令和の時代、バイト先の連絡ノートを通じて、知らず知らず心を通わせる、大学生の丈流と看護学生の美優。一方平成初期の時代には、互いに自分を偽ったまま文通を続ける高校生がいた……。文通相手との恋を歌った爆風スランプの名曲『大きな玉ねぎの下で』を通じて、二つの時代の物語が交錯するラブストーリー。

©2024映画「大きな玉ねぎの下で」製作委員会

監督/草野翔吾 出演/神尾楓珠、桜田ひより ほか
MOVIX京都、大阪ステーションシティシネマ、OSシネマズ神戸ハーバーランド ほか
公式HP/https://tamanegi-movie.jp/

写真/中島真美 取材・文/吉永美和子

※記事に掲載されている情報は1月23日(木)時点のものです。記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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