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演劇ライター・吉永美和子の2月の劇推し!

今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!

文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、割とジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶を嗜むこと。

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください

☑大阪国際文化芸術プロジェクト『FOLKER』

フォークダンスのイメージを変えた名作を25年ぶりに

映画『パコと魔法の絵本』など、シュールなギャグと泣ける展開が入り乱れたコメディーで知られる後藤ひろひと。彼の最高傑作と言われた幻の名作が、25年ぶりに豪華キャストで上演される。雑誌記者の下に送られてきた、ある女囚の告白記。そこには、凶悪犯ばかりが集う刑務所の女囚たちが、フォークダンスのバトルに挑戦したことが記されていた。彼女たちは常に笑顔の指導者に導かれ、バトルを勝ち進みながらも、思わぬ試練に直面する……。

学校の体育で習ったものとは別物のようなフォークダンスの数々に目を見張り、奇妙なキャラクターたちの一挙手一投足に笑い、思いがけない悲劇に涙し、さらにラストへ向けた二重三重のどんでん返しに驚かされる。まさにエンタメの全てが詰まったようなダンス・コメディーが今回も展開されるはず。出演は元宝塚歌劇団星組トップスター・紅ゆずるから、実は演劇サークル出身のお笑いコンビ・男性ブランコまで、さまざまなバックグラウンドを持つ俳優や芸人たちが大挙出演。中でも、吉本新喜劇でおなじみの内場勝則には思わぬ形で泣かされるだろう。「皆さんの想像を超えたフォークダンスの世界を、必ずお見せします」という後藤の言葉を信じてぜひ飛び込んでみて!

大阪国際文化芸術プロジェクト『FOLKER』
日程/2月14日(金)~23日(日・祝)
会場/堂島リバーフォーラム
作・演出・出演/後藤ひろひと 
出演/紅ゆずる、遠藤久美子、小島聖、内場勝則、平井まさあき・浦井のりひろ(男性ブランコ)、粟根まこと、松尾貴史 ほか 
料金/6,000円(全席指定) 
※チケット発売中 olker-theater.com/
☎︎0570-550-100(FANYチケット問い合わせダイヤル)

☑市原佐都子/Q『キティ』

宇宙規模で常識を切り刻む、注目の作家の新作

主に女性が直面するさまざまな社会問題を、いろんな面でぎりぎりのユーモアで風刺する作風で、国内外から高く評価される劇作家・演出家の市原佐都子。京都の劇場[ロームシアター京都]とタッグを組んで、劇場のレパートリー作品を作るシリーズの最新作を発表する。地球を脱出して新たなユートピアを作ろうとする者たちの、宇宙レベルとも言える物語を、私たちがよく使う日本語“かわいい”をキーワードにして見せていく。韓国や香港の俳優たちも交えたグローバルな舞台は、特に今の世界に対して生きづらさや怒りを抱えている人には「これを言ってほしかった!」と、痛快さを感じるような観劇になるかも。

市原佐都子/Q『キティ』
日程/2月17日(月)~24日(月・休)
会場/ロームシアター京都 ノースホール
作・演出/市原佐都子 
出演/ソン・スヨン、永山由里恵、バーディ・ウォン・チンヤン ほか
料金/3,000円 ※2月21日(金)以降の公演は+1,000円 ほか ※チケット発売中 rohmtheatrekyoto.jp/
問い合わせ/☎︎075-746-3201(ロームシアター京都 チケットカウンター)

劇団壱劇屋 オールスタンディング演劇
『地底人CEREMONY』

劇場の地下全てを舞台にした、新感覚の演劇体験

高度なパントマイムやダンスの技術に裏打ちされた、スタイリッシュでありつつも、大阪の劇団らしいサービス精神にあふれた舞台が人気の壱劇屋。彼らが得意とするオールスタンディング&インタラクティブな演劇作品が、劇場B1エリア一帯の複数のスタジオを使って上演される。高槻城跡の地底に住む地底人の伝統的な儀式の場に、僧侶からブライダルスタッフまで、さまざまな“セレモニー”を手掛ける人間たちが乱入したことで起こる大騒動。観客は好きな部屋で、好きなキャラクターを追いかけながら物語に参加できる。観劇というよりも、ライブやイベントの感覚で能動的に楽しめる世界は、一生の思い出になるはずだ。

劇団壱劇屋 オールスタンディング演劇
『地底人CEREMONY』

日程/1月30日(木)~2月2日(日)
会場/高槻城公園芸術文化劇場
脚本・演出・出演/大熊隆太郎 
出演/河原岳史、鍬田大鳳、湯浅春枝、𠮷迫綺音、明穂 ほか
料金/4,000円※当日は+500円 ほか ※チケット発売中 ichigekiyaoffice.wixsite.com/ichigekiya
問い合わせ/☎︎072‑671‑9999(高槻城公園芸術文化劇場)

完売注意なので前売り券を要CHECK!
☑東京サンシャインボーイズ復活公演『蒙古が襲来』

三谷幸喜の書き下ろしで、伝説の劇団が復活!

今や押しも押されもせぬ人気作家となった三谷幸喜が主宰し、『12人の優しい日本人』などの名作を生み出した東京サンシャインボーイズ。1995年から続いていた充電期間が終了し、ついに三谷の新作で待望の復活を果たす! 時は鎌倉中期、モンゴルが日本に攻めてきた蒙古襲来の頃。モンゴル軍が目前に迫っていることを知らずに、穏やかに暮らしている対馬の漁村の人々の命運を描く群像劇になるという。大きな事件に直面しても、特定のヒーローが解決するのではなく、集団の力でなんとかしたりしなかったりするという三谷コメディーの、まさに決定版と言えるものを見せてくれそうだ。関西は京都のほか、大阪(4月11日(金)~14日(月)@[SkyシアターMBS])でも公演あり。

東京サンシャインボーイズ復活公演『蒙古が襲来』
日程/3月13日(木)~16日(日)
会場/京都劇場
作・演出/三谷幸喜 出演/東京サンシャインボーイズ 
料金/11,000円(全席指定)
※チケット2月16日(日)発売  stage.parco.jp
問い合わせ/☎︎0570-200-888(キョードーインフォメーション)

☑ハイバイ20周年『て』

撮影:平岩 享

機能不全となった家族を通じて“家族”を考える傑作

現代人の身近な悩みや不安を、当事者たちの声を反映しながら、ユーモアと痛みを交えた舞台に作り上げていく劇団・ハイバイ。過去幾度も再演してきた代表作で、主宰で作・演出の岩井秀人の家族をモデルにした会話劇を、劇団20周年を記念して上演する。父のDVのためにばらばらになった家族が、祖母の危篤をきっかけに再集結。そこで巻き起こる悲喜劇を、主観を変えながら見せることで“家族”という集団の持つ不条理さを浮き彫りにする。大倉孝二や伊勢佳世など、小劇場をベースに映像でも活躍する多くの俳優たちが出演。岩井自身の演出としては最後の上演とうわさされる点でも、見逃したくはない舞台だ。

ハイバイ20周年『て』
日程/2月1日(土)・2日(日)
会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
作・演出/岩井秀人 出演/大倉孝二、伊勢佳世、田村健太郎、岩井秀人、小松和重 ほか
料金/5,500円(全席指定) ほか ※チケット発売中 www.gcenter-hyogo.jp
問い合わせ/☎︎0798-68-0255(芸術文化センターチケットオフィス)

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。

※この記事は2025年3月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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