神戸・元町四丁目の本屋[本の栞]を営む、田邉栞さんの日々のブックマーク
VOL.24
「それではドビュッシーの月の光とともにお別れです」
text and photo
田邉 栞(たなべ しおり)
神戸で[本の栞]という本屋をやっています。
1月は24日にbutajiさん、25日に工藤裕次郎さんのライブがあります。
12.16 mon.
友人の営む八百屋[ちょっとどころ] 1 に野菜の配達を頼んでいる日なので、起きたての布団のなかで今日の入荷の投稿を確認する。画面ごしに目をやると猫がめずらしく本棚の上に登っている。窓からの陽に透けて光る猫。ふかふかと冬毛になっているのがよくわかる。夏とはべつの猫のようだね。
サンプルを送ってもらったので昨日から読んでいる佐々木里菜さんの『ロイヤル日記』 2 がなんだか妙に良い。[ロイヤル・ホスト]へ行った日のことだけを書いた日記ZINE。わたしもロイヤルのことがとても好きで、ロイヤルを愛する友人の顔もたくさん浮かぶ。ちなみにロイヤルホストのことはずっとロイホ、と呼んできたのだけど、著者いわく公式の呼称はロイヤルらしい。そちらのほうがなんだか上品なひびきでお似合いじゃない? と思ったのでわたしも今後はロイヤルと呼ばせていただくことにする。作中に登場する閉店アナウンスの文字起こしを読んでいたら、謎に涙ぐんでしまった。これが「ロイヤルの閉店アナウンスでしか埋められない穴」なのか?
母はおいしいものしか食べない。と言うと語弊があるが、おいしくないものは絶対に食べない。食べたとしても記憶から消している。
(『ロイヤル日記』)
すぐに読み終えたのでそのまま同じ著者の『Between Timid and Timbuktu』 3 も読む。引っ越しの日記、だとおもっていたら、引っ越しの日のことも書いたが、それ以外のことも書いているので引っ越しの日記ではないらしい。著者は8年間ずっと同じ家に住んでいたそうだが、わたしはまったくの反対に大の引っ越し好きで、大体年に1度のペースで引っ越しをしている。実際に数えてみたら2016年からの8年間に7回引っ越しをしていた。引っ越し日記のZINEを出せるんじゃないか、と日記とカメラロールを遡ってみる。引っ越しの前後、関連する言葉を使っている日の日記を引っ張り出していくと、ついでにいろいろなことを思い出した。こんなことをまだ覚えていたのか、ということ、日記にはしっかりと書いているのに、もうまったくディテールが思い出せないこと。
変わることがつらい。私は、ずっと同じところに同じかたちで、幸せに生きて暮らしたいと思っていた。
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引越し日記として日記祭に出そうと思ったが、引越しの渦中を描かない引越し日記は破綻している。じゃあ普通に日記にする。引越し前と、引越しの後の日記。あいだにあるのは全て時間。
(『Between Timid and Timbuktu』)
帰宅し、いつかの北海道土産のスープカレーの素と今日届けてもらった野菜でカレーを作って食べる。スープカレーの調理ははじめてで、完成形がよくわからんままに作ったがおいしくできた。食べながら、自分の作ったごはんを食べるのは、自分の書いた文章を読むのと似ている、という話をされたのでちょっと考えてみたが、あまりよくわからなかった。その流れで引っ越し日記のZINEを出そうかなと言ってみると、匿名で? と聞かれ、そうだよな、匿名のほうがいいのかな、とあらためてなやむ(ここにはもう書いてしまったが)。まあ年末年始の休みもたっぷりあるし、ゆっくり考えてみることとする。
- 電話番号080-3855-6606
- 住所神戸市中央区元町通4-6-26 元村ビル1F北
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- 定休日水・木&不定
- カード使用可