中国アート、こう楽しもう!
中国陶磁の殿堂[上海博物館]からの貴重な出品を[東洋陶磁美術館]のコレクションと共に堪能できる展示が開催中。本誌連載でもおなじみ、アート好きマスターのフルタニタカハルさんとお出掛けし、楽しいポイント、教えてもらいました!
中国陶磁の殿堂[上海博物館]からの貴重な出品を[東洋陶磁美術館]のコレクションと共に堪能できる展示が開催中。本誌連載でもおなじみ、アート好きマスターのフルタニタカハルさんとお出掛けし、楽しいポイント、教えてもらいました!
フルタニタカハル さん/[TANK酒場/喫茶]マスター。本誌連載ARTRECOMMENDの執筆の他、キュレーター、DJ、アートフェアの審査員など多岐にわたり活躍中。@furutank
『大阪市・上海市友好都市提携50周年記念特別展
中国陶磁・至宝の競艶
―上海博物館×大阪市立東洋陶磁美術館』
期間:開催中~3月30日(日)
場所:大阪市立東洋陶磁美術館
[大阪市立東洋陶磁美術館]とも親交の深い[上海博物館]から海外初公開の19作品を含む、日本初公開の作品22件が登場。[東洋陶磁美術館]のコレクションも並べて展示し、中国陶磁器の新しい見方を提案する。
\教えてくれた人/
本展覧会を担当する、大阪市立東洋陶磁美術館 学芸員の小林 仁さん(左)、因幡聡美さん。[上海博物館]にも幾度も足を運んだ小林さんが担当する展示作品のキャプションは必読!
アート好きマスター・フルタニさんと!
[大阪市立東洋陶磁美術館]できれい!かわいい!焼き物尽くし
▼展示室1
一.展示室1がド迫力だった!
展示室入り口にどっしり!景徳鎮官窯を代表する重さ110数kgの青花雲龍文壺(上海博物館)は焼き上げるのに2週間ほどかかったそう。「展示の冒頭で目にするとものすごいインパクトですね」とフルタニさんも見飽きない様子。
「ポスタービジュアルでひと目ぼれしました!」
緑地粉彩八吉祥文瓶(上海博物館)は、緑の地に粉彩の技法でチベット仏教に由来する八宝文や花文を描いた儀礼用の瓶。清代におけるチベット仏教の存在感を感じられる品だ。「必ずしも本展のメイン作品というわけではないのですが、先入観なく『かわいい!』と思ってもらえる作品としてポスターに採用しました」と因幡さん。
「景徳鎮窯の技術を堪能できる美麗品ぞろい」
善政を象徴するウズラや菊などを緻密に描いた琺瑯彩竹菊鶉図瓶(上海博物館)は「まさに焼き物における宮廷絵画です」と小林さん。
酸化銅を用いた釉薬でトルコ石(緑松石)のような青緑を表現した松石緑釉剔刻蕃蓮唐草文瓶(上海博物館)。「文様や色合いの精密さといったら……この器をアテにしてお酒を飲みたくなるほど!」とフルタニさんも感嘆。
二.奇跡の色を実現した窯変の妙
海外初出品となる蘋果緑釉印盒(ひんかりょくゆういんごう・左、上海博物館)のアップルグリーンとも称される柔らかい緑色にフルタニさんもほれぼれ! 「実は、右のような紅色の豇豆紅釉(こうとうこうゆう)が、窯変により奇跡的に緑色に変化したものなんです」と小林さん。右の豇豆紅釉印盒(上海博物館)も、焼成の難易度で言えばかなり高いレベルだというから、その希少性は推して知るべし。
▼ロビー
常設展示にも注目! ①《国宝を最高の環境で》
国宝である所蔵品・油滴天目茶碗の特徴である、小宇宙を思わせる内外の斑紋と光彩。その魅力を、自然光を取り入れた空間に360度鑑賞可能な専用展示ケースを設置することで余すところなく見せてくれる。
常設展示にも注目! ②《かわい過ぎる虎? 猫?》
朝鮮半島で18世紀に制作されたとされる青花虎鵲文壺。猫のような愛らしい虎が、このたびのリニューアルを機に「mocoちゃん」として[大阪市立東洋陶磁美術館]の新キャラクターに就任。
▼展示室3・4
三.白磁展示で白の無限を知る
本展覧会では一部所蔵品の鑑賞もできるとのことで、朝鮮半島の白磁を集めた部屋へ。上左、作家・志賀直哉から東大寺元管長に贈られたという白磁壺(大阪市立東洋陶磁美術館)。実は泥棒が入った際に粉々に割られたものを[大阪市立東洋陶磁美術館]寄贈後に修復。目を凝らさないと破片跡が見えないほど見事な修復ぶりも見どころ。下写真、右から、青味のある17世紀の白磁角瓶、透明感のあるやや灰がかった白が美しい17世紀の白磁瓢形瓶、ほんのりと乳白色を帯びた18世紀の白磁面取壺(全て大阪市立東洋陶磁美術館)。時代や作品によって異なる白磁の魅力が分かる。
▼展示室11
四.“法花”の魅力に気付いたかも
“法花”とは、レリーフのように立体的な文様に、鉛釉を掛けて色彩を表現する手法のこと。この法花花鳥文壺(大阪市立東洋陶磁美術館)は、濃紺の地に白や黄、緑が効果的に配された明代の大作! 文様の造形、色合いの調和なども見事で、細部まで見飽きない。
▼展示室11
五.かわいい所蔵品もばっちり
「ふっくらした顔と繊細なポーズがかわいい!」 唐代の加彩婦女俑(大阪市立東洋陶磁美術館)は、その姿を堪能できるよう回転する展示台に設置。釉薬の上に鉄班を散らした飛青磁花生(大阪市立東洋陶磁美術館)は元代のもの。自然採光室に展示され、とろけるような青磁の色合いを堪能できる。
▼展示室11
六.同型品を並べてみたら……
皇帝の象徴とされる五爪の龍が描かれた壺、青花雲龍文梅瓶(右・上海博物館、左・大阪市立東洋陶磁美術館)。共に明の洪武帝の時代の宮廷用器と考えられ、左は「春壽」という銘のある青花雲龍文梅瓶の中で、唯一ふたが残っているもの。
同じ牡丹文盤でも、濃紺の瑠璃地白花牡丹文盤(右・大阪市立東洋陶磁美術館)、洪武帝の赤色好きやコバルトの原料減などを背景にした釉裏紅牡丹文盤(左・大阪市立東洋陶磁美術館)と色味が変わるだけでがらりと異なる趣きに!
▼展示室11
七.用途にびっくり!な器たち
上から、宮廷用飲食器として使われた青花黄蜀葵文碗(上海博物館)はその薄さにびっくり! 別名パレスボウルとも。頭を乗せる枕として使われた白地黒掻落束蓮文枕(上海博物館)。「北欧のインテリアみたいな雰囲気」とフルタニさんが目を留めた鴨は、素三彩鴨形香炉(上海博物館)、つまり香炉なのだそう。かわい過ぎる!
▼展示室10
八.青磁は自然光でじっくりと
陶肌に細かい貫入(細かいひびのような模様)が全体に入った南宋時代の名品、青磁管耳瓶(上海博物館)。
北宋時代に宮廷用として作られた青磁水仙盆(大阪市立東洋陶磁美術館)。「天青(てんせい)」と呼ばれる、他の青磁作品よりもやや強い青味が特徴と言われている。名窯が作り上げた青磁の数々を鑑賞すべく、自然光を取り入れた部屋で展示。中国の人々が魅了されたブルーの奥深さに魅了されるひとときに。
鑑賞を終えて……
“中国の国宝級の陶磁器”と言っても堅苦しくなく、「色がきれい」「造形がいい」という見方で楽しめます! 日本初公開や海外初出品のレアなものもたくさん。そして[大阪市立東洋陶磁美術館]所蔵の逸品と対峙して[上海博物館]の至宝を見られるのはこの機会だけ! 「大阪にもめっちゃいいもんあるやん!」ってなります! 展示品の撮影も全てOKという太っ腹っぷりなので後から見返せるのもうれしい。リニューアルしてさらにすてきな美術館になったのでぜひ。
これもcheck!
XなどのSNSや、展示ガイドアプリ「ポケット学芸員」も活用すれば気軽に見どころを学べるのでぜひ!
『大阪市・上海市友好都市提携50周年記念特別展
中国陶磁・至宝の競艶
―上海博物館×大阪市立東洋陶磁美術館』
期間:開催中~3月30日(日)
場所:大阪市立東洋陶磁美術館
1982年、住友グループに寄贈された安宅コレクションを軸に、東洋陶磁専門の美術館として開館。以降、東アジアを中心に国内外の陶磁を集めた特別展などを精力的に行う。このたび約2年にわたる工事を経てエントランス棟を中心にリニューアルした。
- 電話番号06-6223-0055
- 住所大阪市北区中之島1-1-26
- 開館時間9:30~17:00(最終入館〜16:30)
- 休館日月
- 入館料1,800円
- アクセス京阪なにわ橋駅から徒歩すぐ
撮影/エレファント・タカ 取材・文/SAVVY