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今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!

文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、割とジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶を嗜むこと。

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください

☑絢爛豪華 祝祭音楽劇
『天保十二年のシェイクスピア』

任侠 meets シェイクスピアの、派手な舞台に酔え

実在の人物や事件を基にした、数多くの傑作喜劇を生み出してきた井上ひさしの戯曲の中でも、最もスケールの大きな音楽劇を豪華キャストで上演。江戸時代の侠客たちの抗争から生まれた講談『天保水滸伝』に、誰もがその名を知るイギリスの劇作家W・シェイクスピアの37作品の要素を盛り込んでしまった、空前絶後の時代劇だ。
 舞台は江戸時代末期の天保年間。侠客たちが二手に分かれて争う村に、佐渡の三世次という悪漢が現れる。彼はうそを重ねることで争いの火を広げ、最後に自分が君臨することをもくろむが、彼に対抗するために、村を離れていた若者たちが次々に舞い戻ってくる……。『リチャード三世』や『マクベス』、『ハムレット』を思わせるキャラクターが大挙登場し、シェイクスピアを知る人なら「そう来たか!」が止まらなくなるはず。逆に一切知らない人でも、人間の愛憎の極限というハードな部分と、軽妙なギャグが飛び交うライトな部分のバランスが神業なドラマに、最後まで引き込まれてしまうだろう。誠実な役柄が似合う浦井健治が大悪党の佐渡の三世次を、ジャンルレスに活躍するダンサー・大貫勇輔がエキセントリックなきじるしの王次を演じるなど、意外性の高いキャスティングにも注目!

絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』
日程/2025年1月5日(日)~7日(火)
会場/梅田芸術劇場メインホール
作/井上ひさし 音楽/宮川彬良 演出/藤田俊太郎 出演/浦井健治、大貫勇輔、唯月ふうか、木場勝己ほか 
料金/S席15,000円(全席指定)※土・日・祝は+1,000円 ほか 
※チケット発売中www.umegei.com 
問い合わせ/06-6377-3800(梅田芸術劇場)

☑『血の婚礼』

中山優馬主演の、男女の愛と激情に満ちた世界へ

さまざまなジャンルの舞台に積極的に出演している中山優馬が、スペインを代表する傑作戯曲に挑戦。炎熱のアンダルシアを舞台に、父親の代から深い因縁を持つ男女たちが、婚礼の晩に思いがけない悲劇を巻き起こす。スペイン人らしい激情を熱く繊細に描き出し、クライマックスでは思わぬ演劇的な仕掛けでもう一盛り上げしていく舞台は、世代や国境を越えて愛されている。2.5次元系から古典作品まで数多くの舞台経験を持つ宮崎秋人に、子役時代からその演技力を高く評価されてきた伊東 蒼と中山が、どのような三角関係を描いていくのか。あまりにヘビーだけどどこか共感してしまうような、激しい人間模様に期待だ。

『血の婚礼』
日程/12月28日(土)・29日(日)
会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
作/フェデリコ・ガルシーア・ロルカ 翻案・台本/木内宏昌 
演出/栗山民也 出演/中山優馬、宮崎秋人、伊東 蒼、岡本 玲、谷田 歩、秋山菜津子 ほか 
料金/9,500円(全席指定)※チケット発売中www.gcenter-hyogo.jp
問い合わせ/0798-68-0255(芸術文化センターチケットオフィス)

☑窓の階『ここはどこかの窓のそと2』

小空間で楽しむ「虚構」と「現実」を巡るアレゴリー

虚構だったはずの物が現実に侵食したり、現実が虚構によって曖昧になっていく。そんな“虚構”と“現実”の関係の面白さを楽しむ舞台を大阪で作り続ける、ユニット「階」。作品ごとにユニット名が変わるが、今回は「窓の階」と称して、休館している図書館の裏庭を舞台にした新作を上演する。本を返しに来た女、電車を間違えた男、図書館のスタッフの3人が「虚構の遺伝子」を巡り、禅問答のような不思議な会話を繰り広げる。一見哲学的だけど、ふっと「その感じはなんか分かる!」と思った瞬間、世界の見え方がぶわっと変わるような感覚にとらわれる。そんな経験を味わえたら、あなたはもう「階」の虜だ。

窓の階『ここはどこかの窓のそと2』
日程/2025年1月23日(木)~25日(土)
会場/聖天通劇場
脚本・演出/久野那美 出演/七井 悠、北村 守、桜田 燐
料金/一般3,500円(全席自由)ほか ※チケット発売中floor.d.dooo.jp
問い合わせ/090-9657-2437(窓の階) 

☑二兎社『こんばんは、父さん』

日本の父親はなぜ大変? 傑作3人芝居の再演

風刺の効いたコメディーで評価される劇作家・演出家の永井 愛が、2012年に発表した作品を、キャストを一新して再演する。舞台は廃墟となった町工場。そこに3人の男たちが思いがけず集結し、次第に彼らの抜き差しならない状況が明らかになっていく……。「父さん」を演じるのは演劇界のレジェンド・風間杜夫、エリートから社会の負け組へと転落した「息子」を演じるのは萩原聖人、ひょんなことから父子と関わりを持つ「青年」は竪山隼太。世代は違えども、実力は間違いのない3人の俳優が集まった。男たちのどうしようもなさに苦笑しつつも、「こんな日本に誰がした?」と、つい考えてしまうことになるはず。

二兎社『こんばんは、父さん』
日程/【滋賀】2025年1月11日(土) 【兵庫】18日(土)
会場/滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
作・演出/永井愛 
出演/風間杜夫、萩原聖人、竪山隼太 
【滋賀】料金/S席6,050円(全席指定) ほか 問い合わせ/077-523-7136(びわ湖ホールチケットセンター)、
【兵庫】7,500円(全席指定)問い合わせ/0798-68-0255(芸術文化センターチケットオフィス) 
※チケット発売中nitosha.com/nitosha48

☑ミュージカル『レ・ミゼラブル』

一度は生で観ておきたいミュージカルの代表作

2025年で誕生から40年を迎える、ミュージカル界の名作中の名作が、大阪にはなんと6年ぶりに帰ってくる! 仮出獄した後、逃亡生活を重ねながら愛や誇りを取り戻そうと懸命に生きるジャン・バルジャン。そんな彼の激動の生涯を、全編台詞ではなく歌だけで紡いでいく。その中には「夢やぶれて」「民衆の歌」など、聞き覚えのある名曲も多いはず。ヒュー・ジャックマン主演の映画版も優れているけど、大勢のキャストが歌い上げる生歌の迫力は、ライブでしか味わえないもの。一生に一度はぜひ観ておきたい傑作だけど、公演期間が長くても完売の確率が高いほどの人気作なので、今から観劇計画を立てるのが吉!

ミュージカル『レ・ミゼラブル』
日程/2025年3月2日(日)~28日(金)
会場/梅田芸術劇場メインホール
オリジナル・プロダクション製作/キャメロン・マッキントッシュ 出演/吉原光夫・佐藤隆紀・飯田洋輔(トリプルキャスト)、伊礼彼方・小野田龍之介・石井一彰(トリプルキャスト) ほか ES席17,500円(全席指定) ほか※土・日・祝は+1,000円
※1月18日(土)発売www.umegei.com
問い合わせ/06-6377-3800(梅田芸術劇場)

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。

※この記事は2025年1月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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SAVVY2月号『関西美術館さんぽ』
発売日:2024年12月21日(土)定 価:900円(税込)