今月、スパイされる人
火川拓海 さん
テーマは、“読書にも趣味を取り入れてみる” 3冊
☑1.『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
著/福徳秀介
小学館 1,650円
☑2.『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
著/若林正恭
文藝春秋 869円
☑3.『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』
著/村上春樹
新潮社(新潮文庫) 737円
人生を豊かにする、笑いあり旅ありの3冊
趣味とつながりのある本を手に取ることが多く、旅行好きなので移動中に読めるような本や、お笑い好きなのもあって笑える要素のある本をつい選びがちという火川さん。
「大好きな芸人が小説を書いたと聞いて、読まずにはいられなかった」と教えてくれたのは、お笑いコンビ・ジャルジャルとしても活躍する福徳秀介さんが、青春のほろ苦い恋愛を描いたデビュー作。「普段芸人としてみているときと、印象が大きく変わりました。コントからは想像できないような感性や優しさが文章から感じられて、著者のことがもっと好きになる。中にはそのせりふや設定はコントから来ているのではないかと思う場面もあり、芸人として活躍する姿も好きな私からすると読んでいてテンションが上がりました」
2冊目は芸人・若林正恭さんが、キューバに一人旅をした時のことをつづった旅エッセイ。ただの紀行文ではなく、著者の過去のことや現代社会について思うことなどを独自の視点から鋭く語りかける1冊。巻末で、新自由主義の日本から社会主義のキューバへ行った本当の理由を知り、競争社会で生き抜くには何が大切なのかを考えさせられたという火川さん。「タイトルでもある、リードにつながれている甘えたように尻尾を振る表参道のセレブ犬と、貧しく汚れているけれど自由であるカバーニャ要塞の野良犬を、現代社会の問題に重ねて対照的に描いているのが印象的。本に登場する旅の写真から当時の高揚感がリアルに伝わってきて、思わず旅に出たくなりました」
ウイスキーをテーマに紀行文をつづった3冊目は、旅行好きの火川さんの旅に出たい欲をさらにかき立てた一冊。「ひたすらにおいしいウイスキーを求めて旅をするというシンプルなテーマですが、著者の独特な言葉選びや比喩表現に引き込まれます。お酒は作っている人の性格も味に影響を与えると知り、人間のように個性があって面白いなと。居酒屋でとりあえずビール! もいいけれど、たまには、憧れのバーでウイスキーをたしなんでみようかな(笑)」
読書で趣味を掘り下げると、好きなことがもっと好きになった、とうれしそうな火川さんでした。