今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!
文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、割とジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶を嗜むこと。
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください
☑PARCO PRODUCE 2024
『HIROSHI MIKAMI / HEDWIG AND THE ANGRY INCH【LIVE】』
ヘドウィグ役のレジェンド、三上博史がライブで帰還!
東ドイツから脱出するために性転換手術をするも、股間に「怒りの1インチ」が残ってしまった、異端のロック歌手・ヘドウィグの半生を、シビれるようなロックの楽曲に乗せて歌い上げるミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。かのマドンナをはじめ、熱狂的なマニアを数多く生んだこの作品の日本初公演で、ヘドウィグを演じたのが三上博史だ。彼によって日本でも本作の人気に火が付き、その後何人もの人気俳優がヘドウィグ役に挑戦する礎を築いた。その三上が、なんと初演から20年が経つ2024年の年末に、再びヘドウィグとして舞台に立つ。
アメリカ一人旅中に偶然舞台を観て、日本版の訳詞にも関わるほど、この作品にほれ込んだ三上。派手なメイクと衣装で客席をあおり、嘆き、自暴自棄になりながらも、最後に名曲「ミッドナイト・レディオ」を歌い上げるその姿に、多くの観客が興奮し、涙した。半ば伝説となっていた舞台が、ライブ・バージョンという形で復活。心に深い傷とコンプレックスを抱えながらも、音楽を通して真実の愛と「自分」を探すヘドウィグの姿は、時や世代を超えて多くの観客たちの胸を打つはず。新たな神話が生まれる瞬間を、目に耳に刻みつけたい。
PARCO PRODUCE 2024『HIROSHI MIKAMI / HEDWIG AND THE ANGRY INCH【LIVE】』
日程/12月14日(土)・15(日)
会場/京都劇場
作/ジョン・キャメロン・ミッチェル
作詞・作曲/スティーヴン・トラスク
出演/三上博史
演奏/横山英規(Ba.)、エミ・エレオノーラ(Pf.&Cho.)、テラシィイ(Gt.)、中 幸一郎(Drs.)、吉田 光(Gt.) 料金/10,800円(全席指定)
※チケット発売中 stage.parco.jp/program/hedwiglive/
問い合わせ/☎︎0570-200-888(キョードーインフォメーション)
☑『ロボット』
機械頼りの日常に警鐘を鳴らす、SF作品の金字塔
約100年前に、世界で初めて「ロボット」という名前を使った戯曲を、人間の弱さや愚かさをユーモア混じりに描き出す劇作家・演出家のノゾエ征爾が脚色して上演。とある会社が、人間に変わって労働する人型の機械「ロボット」を大量生産する。しかし改良が進むにつれてロボットは人間に反発するようになり、一部の人たちが恐れていた事態が起こる……。出演の水田航生は「AIが人間の仕事をまかなうことが増えたけど、その先で何が起こるのか? という、予言書を読んでいるような作品」と、その先見性に驚いたそう。来たるべき未来の姿に我々は絶望するか? なおも希望を見出すか? 実際に観て確かめてみて。
『ロボット』
日程/12月14日(土)・15日(日)
会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
原作/カレル・チャペック『ロボット』(海山社・栗栖 茜訳) 潤色・演出/ノゾエ征爾
出演/水田航生、朝夏まなと、渡辺いっけい ほか 料金/9,500円(全席指定)
※チケット発売中 www.gcenter-hyogo.jp/
問い合わせ/☎︎0798-68-0255(芸術文化センターチケットオフィス)
☑『モンスター』
風間俊介の本領発揮? 現代人の闇に迫る名作
複雑な内面を持つ人間を演じさせたら、とりわけ実力を発揮する風間俊介が、その力を余す所なく見せつけてくれそうな作品に出演。現代人の心の闇に迫る名作の多い、D・マクミランが初期に発表した4人芝居だ。あるわだかまりを抱える教師・トムが、心の壊れた14歳の少年・ダリルを担当することに。そこにトムの婚約者やダリルの祖母も加わり、彼らの心に巣食う“モンスター”の姿が浮かび上がってくる……。現在の家族や教育の現状を、たった4人の人間を通して切っていくスリリングな世界。松岡広大をはじめ、舞台で活躍する3人の俳優と風間の濃密な会話のやり取りは、きっと圧倒されっぱなしとなるはず!
『モンスター』
日程/11月30日(土)・12月1日(日)
会場/松下IMPホール
作/ダンカン・マクミラン 演出・美術/杉原邦生 音楽/原口沙輔
出演/風間俊介、松岡広大、笠松はる、那須佐代子 料金/10,500円(全席指定)
※チケット発売中 www.monster-stage.jp
問い合わせ/☎︎0570-200-888(キョードーインフォメーション)
☑ミュージカル『ケイン&アベル』
松下洸平&優也が挑む、世界初のミュージカル
ミュージカルの舞台を足掛かりに俳優として飛躍した松下洸平と、『ジョジョの奇妙な冒険』など注目作への出演が相次ぐ松下優也。激動の20世紀を舞台にしたJ・アーチャーの傑作小説を、世界で初めてミュージカル化した作品に出演する。アメリカの上流家庭に生まれたケイン(洸平)と、ポーランド出身の移民・アベル(優也)。まったく境遇の異なる二人は、やがて銀行家&経営者として、激しく争う関係になっていく。音楽は『ジキル&ハイド』『デスノート THE MUSICAL』などで、日本でも人気の高いF・ワイルドホーンが担当。緊張感あふれるW松下の対決と、二人の高い歌唱力を、ぜひ劇場の空間で体験してほしい。
ミュージカル『ケイン&アベル』
日程/2025年2月23日(日)~3月2日(日)
会場/新歌舞伎座
原作/ジェフリー・アーチャー 音楽/フランク・ワイルドホーン 脚本・演出/ダニエル・ゴールドスタイン
出演/松下洸平、松下優也、山口祐一郎 ほか 料金/S席16,000円(全席指定)※土・日・祝は+1,000円
※12月21日(土)チケット発売開始! www.shinkabukiza.co.jp/
問い合わせ/☎︎06-7730-2222(新歌舞伎座)
☑コトリ会議『おかえりなさせませんなさい』
「おかえりなさい」がある場所を探すSF風会話劇
去りゆく人々&見送る人々の物語を、切なくもユーモラスな視点で描く兵庫の劇団「コトリ会議」。「第八次半世界大戦」が勃発した近未来を舞台に、争いの連鎖から逃れるために生まれた半人半鳥の生物「ヒューマンツバメ」を巡るドラマを上演する。自分が巣立った所が、いつまで「おかえりなさい」を言ってもらえる場所であるかを、彼らがホームと位置づける劇場[AI・HALL]の姿と重ねて考えていくという。誰もがいつかは経験するさまざまな別離との向き合い方と、その痛みを癒やす方法をさりげなく伝えてくる、希少な世界だ。プレトークやバックステージ紹介など、上演以外でも劇場を丸ごと楽しめる企画あり。
コトリ会議『おかえりなさせませんなさい』
日程/12月5日(木)~9日(月)
会場/AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)
作・出演/山本正典 演出/コトリ会議 出演/三ヶ日 晩、原 竹志、吉田凪詐 ほか
料金/一般3,200円(全席自由)
※チケット発売中 kotorikaigi.com
問い合わせ/☎︎050-5240-3066(コトリ会議)
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。
※この記事は2025年1月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。