今月、スパイされる人
清洲理子 さん
テーマは、“本で旅の答え合わせをする” 3冊
☑1.『異邦人』
著/カミュ 訳/窪田啓作
新潮社 649円
☑2.『巴里の憂鬱』
著/ボードレール 訳/三好達治
新潮社 506円
☑3.『大人の友情』
著/河合隼雄
朝日新聞出版 748円
旅先で見た景色、感じた気持ちに寄り添ってくれた3冊
海外移住の第一歩として訪れた、パリの旅中から読み進めているという1冊目は、ヨーロッパでは学校でも習うほどよく読まれているという『異邦人』。読んでいると、現地の人に「それ知ってるよ! 」とよく声を掛けられたとか。自分にうそをつかずに生きる主人公が、社会の不条理に巻き込まれてしまう物語。「彼の言動は側から見ると異常かもしれないけれど、なぜか彼の心情が理解できてしまうんです」と清洲さん。「人間は生きていく過程で自分を大きく見せたりうそを重ねてしまう。それが当たり前になり、うそをつかず正直に生きる人が社会の闇として扱われていく。不条理ですが、それが現実。世の中のおかしさや人間の感情の機微が一冊に詰まっていて、何度も読み返したくなります」
2冊目は、理想郷のように思われがちなパリのリアルを捉えた散文詩集、『巴里の憂鬱』。「何度か訪れたことのあるパリは華やかな場所とばかり思われているけれど、この本を読んでいると、先月行ったパリ旅行で見た景色も美しい部分だけではなく、うっくつとした空気感も強くあったなと思い出しました。旅に出ると、その土地の良い部分と悪い部分の両方を身を持って感じられる。世界を見る視点が変わると、出会うはずのなかった人にも出会える。それが旅の醍醐味だなと思います。旅で見て、感じたことを思い返しながら、一つひとつ答え合わせするような気持ちで読み進めました。この本のおかげで旅の中で物事を見る視点が少し変わった気がします」
旅の途中、ふと寂しくなった時に手に取った3冊目は「大人の友情」。臨床心理学者がさまざまな例を用いて論じた、画期的な大人の友情論。「旅中は充実した毎日だったけれど、友達と過ごす時間がたまらなく恋しかったんです(笑)。大人になるとつい一人に慣れてしまうけれど、やっぱり友人関係は大事。優しい口調で友情とは?の問いに答えてくれるこの本は、これからも大事にしたい1冊です」
旅で感じたもやもやした気持ちをこの3冊が整理してくれた、と気付いた清洲さんでした。