今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!
文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、割とジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶を嗜むこと。
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください
☑ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
映画から生まれた傑作ミュージカル、再び大阪に
1980年代のイギリスの炭鉱町を舞台に、バレエの楽しさに目覚めた少年・ビリーが、幾多の障害を乗り越えて夢をかなえる姿を描いた映画『リトル・ダンサー』。2005年に監督のスティーヴン・ダルドリー自らの演出でミュージカル化され、映画同様に世界中で大ヒットした。2017年には日本キャストの上演が実現し、大絶賛された舞台が帰って来る。主役のビリーは、オーディションで選ばれた4人の少年が交代で出演。歌やバレエはもちろん、タップダンスやアクロバットの高い技術が求められ、しかも声変わりしたら終わりという、まさに選ばれし者のみに許された役だ。それだけに、時に周囲の反応に戸惑い、時に怒りを踊りのパワーに変え、時にダンスの愛を歌い上げるビリーの姿に、私たちは激しく胸を揺さぶられる。『ライオン・キング』など、ミュージカルの作曲家としても一流のエルトン・ジョンの音楽も、ビリー&周囲の人々のドラマをさらに盛り上げる、エモーショナルな名曲ぞろいだ。原作映画のファンを決して失望させないのはもちろん、最近心を動かされることがないと思う人も「忘れていた何かを取り戻したい!」という気持ちに駆り立てられるであろう、文句なしの名作をぜひ体感して。
ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
日程/11月9日(土)~24日(日) SkyシアターMBS
脚本・歌詞/リー・ホール 演出/スティーヴン・ダルドリー
音楽/エルトン・ジョン
出演/浅田良舞・石黒瑛土・井上宇一郎・春山嘉夢一(クワトロキャスト)ほか
料金/ES席15,000円(全席指定)※土・日・祝は+500円
※チケット発売中 https://billy2024.com/
問い合わせ☎︎06-6377-3800(梅田芸術劇場)
☑『セツアンの善人』
葵 わかなが二役に挑む、人間の本質を問う音楽劇
主演する時代劇『おいち不思議がたり』(NHK)が放送されたばかりの葵 わかな。舞台俳優としても、抜群の存在感を発揮している彼女が、世界的な名作舞台に出演する。葵が演じるのは、貧民窟のセツアンで暮らす娼婦シェン・テ。ふとしたことで神様に「善人」と認められ、大金を手に入れた彼女だが、周りの人に翻弄されるのに疲れ果て、架空のいとこを作り出す……。「見ている人によってもいろいろと感じ方が変わるような役でもあると思うので、そういう部分も楽しんでいただけるように頑張りたい」という葵。演出が、数々の若手俳優のポテンシャルを引き出してきた白井 晃だけに、魅力的な二役を見られるはずだ。
『セツアンの善人』
日程/11月9日(土)・10日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
作/ベルトルト・ブレヒト 上演台本・演出/白井 晃
音楽/パウル・デッサウ
出演/葵 わかな、木村達成 ほか
料金/9,500円(全席指定)
※チケット発売中 https://www1.gcenter-hyogo.jp/
問い合わせ/☎︎0798-68-0255(芸術文化センターチケットオフィス)
☑マシュマロテント『みえない』
本物の「暗闇」を体感する、戯曲賞大賞作の再演
関西発の戯曲賞・OMS戯曲賞で、昨年大賞を受賞した作品を、劇場の規模をスケールアップして再演。特定の地域が突然漆黒の闇となる、謎の現象に襲われるようになった世界。幼い頃から、異常なほど仲の良かった二人の女性は、この現象がきっかけで、見ないことにしていた過去を振り返らざるを得なくなる……。心の闇と向き合う人々の姿を、本当に漆黒の闇を作り出せる「劇場」という場所の特性を生かして表現する点が、高く評価された作品。日常ではなかなか体感できない本物の「闇」を、物理的にも心理的にも味わえる、技ありの舞台だ。一部キャストの配役を変えた、三つのバージョンで上演するのにも注目。
マシュマロテント『みえない』
日程/10月25日(金)~28日(月)AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)
作・演出・出演/武田操美
出演/小石久美子、上田ダイゴ、思い野未帆、桂 米紫 ほか
料金/一般前売3,000円、当日3,200円(全席自由) ※チケット発売中 http://mmtento.html.xdomain.jp/
問い合わせ/mmtent33@gmail.com(マシュマロテント)
☑『そのいのち』
宮沢りえ&佐藤二朗が、佐藤脚本の舞台でタッグ
コメディのイメージが強い俳優・佐藤二朗だけど、社会的弱者にスポットを当てた、シリアスな作品を得意とする脚本家でもある。そんな佐藤が、ミュージシャン・中村佳穂の楽曲にインスパイアされて、12年ぶりに新作を書き下ろし。しかもこの戯曲に興味を持った宮沢りえが出演を快諾! 障害者の妻とその夫、妻の介護に通うようになった女性ヘルパーの関係が、穏やかに狂っていく様子を見せていく。人間の暗部を容赦なくとらえつつも、そこはかとないユーモアと、中村の楽曲と同じく、光り輝くようなポジティブさを感じさせる舞台となりそうだ。妻の役は、実際の障害者の俳優がWキャストで演じる。
『そのいのち』
日程/11月22日(金)~24日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
脚本/佐藤二朗 演出/堤 泰之 出演/宮沢りえ、佳山 明・上甲にか(Wキャスト)、今藤洋子、本間 剛 佐藤二朗 ほか
料金/11,000円(全席指定) ※チケット発売中 https://www.ktv.jp/event/sonoinochi//
問い合わせ/☎︎0570-200-888(キョードーインフォメーション)
☑リーディングアクト『一富士茄子牛焦げルギー』
笑いあり涙ありの朗読劇に、岡﨑彪太郎が再挑戦
Lil かんさいの岡﨑彪太郎が出演した、全編関西弁の朗読劇が、好評の声を受けて再び上演されることに。原作は、明石在住の絵本作家・たなかしんの小説。「おかん」を事故で失い、初めての正月を「おとん」と過ごすことになった「ぼく」。おとんが妙な初夢を見たのがきっかけで始まるシュールな冒険を、3人の俳優の声だけで立体化する。ボケ・ツッコミのようなおかしな掛け合いに大笑いし、親しい人と突然別れることになった人たちの葛藤にしんみりし、最後は思わず涙する展開が待っている。珍しくはっちゃけた姿を見せる岡﨑と、百戦錬磨の舞台俳優である、羽野晶紀&山西 惇との絶妙な絡みに期待して。本文
リーディングアクト『一富士茄子牛焦げルギー』
日程/11月7日(木)~10日(日) 松下IMPホール
原作/たなかしん 脚本/野上絹代 演出/河原雅彦 音楽/瓜生明希葉 出演/岡﨑彪太郎、羽野晶紀、山西 惇
料金/7,500円(全席指定)※チケット発売中 https://www.ricomotion.com/1fuji2024/
問い合わせ/☎︎06-6923-3535(リコモーション)
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。
※この記事は2024年12月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。