夢のようにまばゆいダンスフロア
☑『In Waves』/Jamie xx
*BEAT RECORDS / YOUNG 発売中 2,860円
メランコリックで享楽的。ダンスフロアの“華やかな光”を、ヘッドフォンやベッドルームでも再現するかのようなパワフルなトラックの数々。The xxのメンバーとしても知られるDJ/プロデューサー、Jamie xxが9年ぶりに発表した新作は、サンプリングを駆使した優れた楽曲構築力をまざまざと見せつける傑作。ガラージ・テイストからディスコ~ハウス、ソウル・ファンクまでを軽やかに横断しながら編み上げるグルーブに魅了される。The xxのメンバーが参加したボーカル曲も爽快!
これが好きなあなたには……
☑『We Will Always Love You』(2020年)/The Avalanches
『In Waves』にもゲスト参加しているエレクトロデュオ、The Avalanchesの、歌にフォーカスした2020年作。古今東西のグッドミュージックをサンプリングして作られる、遊び心にあふれたダンスサウンドは至高。日本からはコーネリアスも客演。
文/森 樹
編集者、ライター。先日見た小沢健二「LIFE再現ライブ」、大感動。『LIFE』が発売された30年前は、ぴちぴちの小学生でした。
甘くも衝撃的な東南アジア発メロウソウル
☑『ペラック』/ジ・マーローズ
*BIG CROWN RECORDS / Music Camp, Inc.
発売中 3,080円
インドネシアのスラバヤを拠点としながら、現行ビンテージメロウソウルの登竜門的レーベルであるアメリカのBIG CROWNと契約した3人組による、初アルバム。ジャジーな雰囲気も醸す洗練された演奏とアレンジに、英語とインドネシア語を使い分けながら歌う女性ボーカルも秀逸なサウンドは、程よくエキゾチックな温度感もまた絶妙。ネオソウルやクルアンビン好きから亜モノ・フリークまで、まとめてうならせる音世界は心地よくも衝撃的なはず。
これが好きなあなたには……
☑『Primasuara』(2024年)/Various Artists
こちらはインドネシアの気鋭レーベル・La Munaiが発表した、現地の新世代ジャズミュージシャンたちによるダンサブルな楽曲を集めた編集盤。ブロークンビートなども消化した生演奏グルーブで、クラブジャズ系の高水準さに驚かされる。
文/吉本秀純
大阪在住の音楽ライター。ジ・マーローズは10/23(水)に大阪・南堀江[SOCORE FACTORY]で初来日公演! お見逃しなく。
悲壮感を潜り抜けた先にある強さと優しさ
☑『しゅー・しゃいん』/寺尾紗穂
*こほろぎ舎 発売中 3,300円
「僕も死ねばよかったろうか」。ともすれば悲しみや憎しみをまといかねない写実的な歌詞をひたむきなまでにすくい上げてしまう清らかな歌声、そして無駄のないアンサンブルは、聴く者の心の戸を優しくたたいてまわる。心の戸を開き、「死」や弱さを認めて向き合った私たちの耳に届くのは、「生」や強さへの賛歌だ。マジックのようで、しかしそこにはタネも仕掛けもない。涙を流した後のような爽やかさと共に、歌が持つ本当のエネルギーを強く感じる一枚。
これが好きなあなたには……
☑『Billie Holiday』(1954年)/Billie Holiday
ジャズシンガー、ビリー・ホリデイの不朽の名盤。当時の黒人差別を題材としながらも、その熱情を叫びではなく、語りかけるかのような優しい歌によって最も人の心に訴えかける、『しゅー・しゃいん』にも通ずる深奥なエネルギーを秘めた一枚。
文/原田美桜
バンド・猫戦の作詞曲とボーカルを担当する、ネコとワインを愛する日韓ミックスルーツ。遅めの夏休みに韓国の済州(チェジュ)へ行きました。