interview_藤ヶ谷奈緒_HE-100

辻村深月のベストセラー小説の映画化作品『傲慢と善良』で、主演を務めているのが、藤ヶ谷太輔さん(Kis-My-Ft2)と奈緒さん。現代人が無意識に持つ「傲慢さ」や「善良さ」ゆえ、本当の自分をさらけ出すことができず、すれ違ってしまう男女の姿を通して、2人が感じたこととは……? 

「絶対怒らないでしょ?」に「と思うでしょ?」で返したい(奈緒)

編集部(以下・編) 藤ヶ谷さんは映画化が決定する前から原作を読んで、映像化されるなら自分が演じたい! と切望していたそうですね。
藤ヶ谷(以下・藤) 原作を読んだとき、辻村先生は自分のことを書いたんじゃないかと錯覚するぐらい、架(かける)と重なるものを感じていました。僕自身、デビューしてテレビに出始めた頃は背伸びしていないと潰れてしまいそうで、いま思えば必死で格好を付けてました。
 架はクラフトビール会社の若社長でイケメンで友達も多い。”生まれながらに持ってる“男性がゆえの善良さと鈍感さをあわせもった男性ですよね。
奈緒(以下・奈) だからこそ架って演じ方によっては嫌な人に見えちゃう。でも藤ヶ谷さんは前に共演したときから思っていたんですが、すごくピュアで優しい方でちょっと抜けてるところもあるんです(笑)。だからこそ、善良さと鈍感さを含んだチャーミングな架が映画の中にも誕生したんだと思います。
 奈緒さん演じる真実は、関東郊外の保守的な家庭で親の望む”いい子“であろうと生きてきた女性です。
 私自身、真実に共感する部分はありました。誰しも「他人から見られる自分」と「自分だけが知っている自分」があると思うんですが、私は人から「すごくいい子」という印象を持たれることが多い時期があって、その頃は、そこまでいい子じゃないんだけどな……と焦りを感じたりモヤモヤしていました。今は、どう思われてもいいか〜何か印象を持ってもらえる事がありがたい! と思うようになったけど、真実みたいに他人から求められる自分像に合わせようとすると苦しいよねと共感しました。
 奈緒さんは言動が柔らかくていつもフラットで、絶対怒らなそうなイメージはあるよね。だからこそ、ちょっとでも笑っていないと今日はどうしたんだろう? と心配になる(笑)。
 よく、怒ったことありますか? と聞かれるので、逆に怒ったエピソード探さなきゃ! ってなる(笑)。
 人のイメージなんて勝手なものだよね。
 最近はそれも楽しめばいいかなと思うようになってきました。絶対怒らないでしょ? と言われて、と思うでしょ? って。
 そういう返しができるのも信頼関係があればこそだよね。

相手に対して求めないことが最大の愛だと思う(藤ヶ谷)

 撮影中はみんなが自分の恋愛・結婚観を話し合うなど、親密なムードの現場だったそうですね。
 それを役に生かすとかではなく、撮ってるシーンがきっかけで自分だったらこうだなとか、自然にそういう話になってたよね。
 そうそう、私の友達はこうだったとか。それこそ今回、真実と架はマッチングアプリで出会ったという設定なんですが、私たちは使う機会がないので、マッチングアプリですてきな人と出会って幸せに暮らしてる友達の話を共有して、今はこんな選択肢もあるんだ! って盛り上がりました。
 マッチングアプリを通した出会いについては、どう感じました? 
 出会いが広がることは素敵だなと思うけど、自分をよく見せたいあまり、プロフィールとか背伸びしちゃいそうな気もするよね。
 難しいですよね。私はもしやるとしたら、実際に会った印象の方がいいなと思ってほしいから、あえて期待されないプロフィールにしちゃうかも。
 なるほどね。真実と架みたいに背伸びするよりは、普通に書いてマッチングした相手の方が長続きしそうかも。
 お二人は恋愛がうまくいくために大切なことは何だと思いますか?
 僕は恋愛に限らず人に対して求めすぎてたところがあって、相手に対して求めないことを最大の愛だと考えるように変わったら、自分自身すごく楽になりました。
 嘘はつきたくないなと思います。相手の気をひきたい気持ちは理解できるし、相手を傷つけないために嘘をつく場合もあると思うけど、信頼関係が築けなくなる嘘をつくなら素直に伝えた方が良い。結局、相手のためになるか、二人のためになるかどうかが重要だなって、今回の作品でも学びがありました。
 嘘って一度つくとどんどん重ねないといけないことが多い。俺はそれを覚えてる自信がないから嘘は向いてないと思う(笑)。
 架と真実に限らず、人は誰しも「傲慢」と「善良」の両方を持ち合わせています。そういう不完全な自分とうまくやってゆく秘訣はありますか?
 やっぱり人と比べないことですよね。隣の芝はどうしても青く見えるものだからこそ。
 私が具体的にやっていることは、その日に自分がやったことを紙に書き出すことですね。特に最近忙しくて何もできてないなーと思った時とか、家に帰ってから5分とか時間を決めて、箇条書きでバーっと書き出してみると、今日は仕事の合間に友達と行くご飯の予約をしてた、私って意外と時間をうまく使えてるなとか。何もできてないならないで、いっぱいいっぱいになってるなとか、自分を可視化することができる。
 そういう時間を持つことは大事だよね。僕も30代になって本を読むようになって、視野が広がることで自分のことも俯瞰して見れるようになったし。かなり生きやすくなったかも。

 終始、和気あいあいとした二人のトークには、私たちが自分らしく朗かに生きるヒントが詰まっていました。

PROFILE

藤ヶ谷太輔
TAISUKE FUJIGAYA
1987年、神奈川県生まれ、2005年にKis-My -Ft2結成、2011年にCDデビューを果たす。俳優としても活動中。主な出演映画は『MARS~ただ、君を愛してる』(2016年)、『そして僕は途方に暮れる』(2023年)。笑福亭鶴瓶とMCを務める番組『A-Studio+』も好評。

奈緒
NAO
1995年、福岡県生まれ。ドラマ『めんたいぴりり』で俳優デビュー。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』でヒロインの親友役に抜擢。ドラマ『ファーストペンギン!』『あなたがしてくれなくても』『春になったら』、近作映画『陰陽師 0』『告白 コンフェッション』『先生の白い噓』など。TBS10期主演ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』が控える。

☑INFORMATION

『傲慢と善良』9月27日(金)公開

©2024映画「傲慢と善良」製作委員会

社交的で友人も多く、仕事も順風満帆の架。真面目でおとなしく、親の敷いたレールの上を生きてきた真実。2人はマッチングアプリで出会い婚約するが、その先に関係性を進められずにいた。そんなある日、真実が姿を消し、行方を追って奔走する架は、真実の知りたくなかった過去と嘘を知ることになる。

監督/萩原健太郎 脚本/清水友佳子 原作/辻村深月
出演/藤ヶ谷太輔、奈緒、倉 悠貴、桜庭ななみ、阿南健治、宮崎美子、西田尚美、前田美波里 ほか
劇場/TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸 ほか
公式HP/ gomantozenryo.asmik-ace.co.jp

写真/森川英里 取材・文/井口啓子
藤ヶ谷太輔 ヘアメイク/大島智恵美 スタイリスト/横田勝広(YKP) SPiKe(SPiKe)
奈緒 ヘアメイク/masaki スタイリスト/岡本純子

※この記事は、2024年11月号からの転載です。

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SAVVY11月号『神戸』
発売日 2024年9月21日(土)定 価 900円(税込)