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さらなる精神世界へと部屋が音に吸い込まれる

☑『What Is Not Strange?』/Tashi Wada


*PLANCHA 発売中 2,420円

ロサンゼルスを拠点に活動するコンポーザー、Tashi Wadaによる最新作。彼が“ドリーム・ミュージック”と呼ぶ今作は、私が想像する緩やかでポップな“ドリーム”とは違っている。シンセやハープシコードが奏でる独特な音階は、厳かで神秘的。部屋に音楽がなじむことはよくあるけれど、これはまるで部屋が音に吸い込まれていく没入体験。そしてJulia Holterの天使のような純真で伸びやかな声が、精神世界へとさらに手招きするようだ。

これが好きなあなたには……
☑『Deerhoof vs. Evil』(2011年)/Deerhoof

『What Is Not Strange?』の録音に携わったChris Cohenが一時所属していたバンド、Deerhoof。自由で遊び心のあふれるサウンドで、メロディーから感じる神秘性は、Tashi Wadaの作り出す世界にも通じるところがありそう。

文/Tokiyo Ooto
大阪を拠点に活動するシンガーソングライター/ギタリスト。コンセプトアルバムのレコーディング中です。夏に完成したらいいな!

驚異の民謡ハーモニーデュオ

☑『Sparrow’s Arrows Fly so High』/すずめのティアーズ


*DOYASA! Records 発売中 3,300円

和歌山出身のシンガーソングライターあがさ、ブルガリア民謡の歌い手・佐藤みゆきによる民謡デュオ。各地の民謡を二人のハモりを軸に、さまざまなアレンジで披露する驚きのデビューアルバム。例えば横浜港で洗濯女たちに歌われた民謡に、同じくブルガリアの洗濯の様子が歌われた歌が挟まる独自の「ザラ板節」、これぞ息を飲む複声芸術! 「ポリフォーニー江州音頭」などアクロバティックな編曲と技術に脱帽、だがさらりと聴かせて踊らせる全10曲なり。

これが好きなあなたには……
☑『かじゃでぃ風節』(2018年)/新崎純とナイン・シープス

祝いの席で歌われる琉球民謡「かじゃでぃ風節」。それを1970年代にビッグバンド編成で演奏した実験的ナンバー。爪弾かれる三線のゆったりしたタイム感と重厚な管楽器の出会い……摩訶不思議で優雅な幸せの時間が流れる。

文/中村悠介
編集者。京都市在住。すずめのティアーズ、先日の中西レモン氏との大阪公演も大盛況。いわく「アレンジ民謡」に心揺さぶられました。

率直すぎる“間違った人”による内省の結実

☑『Right Place Wrong Person』/RM


*BIGHIT MUSIC 発売中 2,915円

正しさを常に求められる、“BTSのリーダー”という境遇に対する迷い、混乱、葛藤、そして希望。入隊を控え制作した本アルバムは、日本からnever young beach、韓国からSilica Gel、台湾からSunset Rollercoasterなどのメンバーがアジアの同胞として脇を固め、欧米からもDOMi&JD BECK、Little Simzらが参加。今最も勢いのあるミュージシャンらと共に作り上げた、オルタナティブな超快作だ。

これが好きなあなたには……
☑『good kid, m.A.A.d city』(2012年)/Kendrick Lamar

「正しい場所にいる間違った人」に対して、「狂った街にいる優等生」を歌ったのがこちら。“優等生”のラマーから見たゲットーでの暮らしを、映画のようなストーリーテリングで巧みに描写したマスターピース。

文/吉田暁音(SAVVY)
SAVVY5年目の編集部員。RMさんには、同年代のラップを同時代に聴いて育った同世代として勝手にシンパシーを感じています。

※この記事は2024年8月号からの転載です。記事に掲載の情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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SAVVY1月号『よしもと漫才劇場となんば』
発売日 2024年11月22日(金)定 価 900円(税込)