今月、スパイされる人
金嶋なお さん
テーマは、“ジャケ買いで見つける好みの本” 3冊
☑1.『目をあけてごらん、離陸するから』
著/大崎清夏 リトル・モア 1,650円
☑2.『仕事ください』
著/眉村 卓 竹書房(竹書房文庫) 1,430円
☑3.『冬の植物観察日記』
著/鈴木 純 雷鳥社 2,090円
見た目で選べば、ジャンル問わず“アタリ”なこともある
「パラパラめくって数文字読んで買うかどうか決めるのは難しい。迷っている本があれば、最終的に“持っておきたい”“本棚に置いておきたい”かどうかで決めがちです。たとえば表紙の雰囲気とか、持ったときの手触りとか」と金嶋さん。
1冊目は、小説、日記、エッセイと形式を問わない短編集。「著者の大崎清夏さんがウエブ連載している映画評が好きで、本も読んでみたいなと思って手に取りました」。作品中に登場する詩に着目するという、詩人ならではの映画解説に魅了されたという金嶋さん。「鳥か飛行機のような三体が描かれたイラストと空色の表紙。新しい気付きがありそうで、まだ読み始めたばかりですがうきうきしています。初めての小説が収録されているというのも決め手でした」
「もうただ単純に表紙の犬がかわいすぎて」という2冊目は、ちょっぴり不思議な短編集だ。「恥ずかしながら著者のことも知らず……短編だし読みやすそうだし、というノリで選びました」。眉村 卓は『ねらわれた学園』などの学園物、宇宙を舞台にした『司政官』シリーズなどで知られるSF作家。表題作の「仕事ください」は、“奴隷”を欲しがっていた男が、いざ登場した“奴隷”に次から次へと仕事を求められるという、なんだかぞくっとする物語。「事故に遭った主人公と猫のちょっと切なくなる物語や、電車の中に不意に登場する奇妙な犬の物語とか、日常のすぐ隣に存在するような不思議さが心地良いんです」
3冊目は、植物観察家として活動する中で、東京から山梨県八ヶ岳へ移住した著者の観察の記録。「本の中には枯れ葉や芽、実など、冬の植物の写真がいっぱい。冬の草木ってこんな楽しいんだ、と感じます。一方、表紙は、草花を観察する抽象的なイラストのみで、逆に想像力がくすぐられます。顔のようにも見えてくる構図もかわいい」
詩や散文、SF小説、日記。直感で選んだら、まるでばらばらな3冊に。「こういう出合いも楽しいですね」と笑う金嶋さんでした。