王道が吹かせるシティミュージックの新風
☑『イリュージョン』/RYUSENKEI
*ソニー・ミュージックレーベルズ/アルファミュージック 発売中 3,300円
2001年の活動開始以来、シティミュージックシーンに数々の名曲を残してきた流線形がリブート。新生・RYUSENKEIの幕開けとも言うべき1曲目は、それに相応しい爽やかなストリングスが初夏のムードへと誘う。多彩なRYUSENKEIサウンドを吹き抜ける新たな風となるのは、シンガーソングライター・Sincereのフレッシュで芯のあるボーカル。リスナーの待望に応える揺らがない仕上がりと、今なお変化を続ける風通しの良さが心地よい一枚。
これが好きなあなたには……
☑『Musica Popular Japonesa』(2022年)/シンリズム
左のアルバムをはじめ、RYUSENKEIワークスを管弦アレンジで支えるシンリズムによる2022年のアルバム。ブラジリアン・ポピュラー・ミュージックの風をまとうサウンドと粒立つ日本語詞のコントラストが軽やかなバランスで映える。
文/原田美桜
孤高の声に酔いしれる
☑『Lives Outgrown』/Beth Gibbons
*Beat Records / DOMINO 発売中 2,860円
ベス・ギボンズ、その退廃的でスモーキーな声はやはり別格である。ダークな質感のサウンドで知られるユニット、Portisheadのボーカルであり、近年ではケンドリック・ラマーとのコラボも話題となった彼女の初ソロアルバム。ユニットの代名詞だったブレイクビーツを排し、生活用品などで構成されたドラム・キットをはじめ、弦や管楽器を用いた温かい音が特徴。しかしながら、絶望と希望の間で揺れ動くメロディやムードの不穏さに魅力が宿っている。
これが好きなあなたには……
☑『Roseland NYC Live』(1998年)/Portishead
Portisheadが、28人編成のオーケストラと共に演奏した1998年のライブ録音作。ブレイクビーツを生楽器に置き換えたサウンドは至高かつ豊穣で心地よい。だが、その中で喫煙しながら歌うベスの声はひりひりと感傷的に響き渡る。
文/森 樹
アフリカの才人が放つ、究極のオーガニックR&B
☑『Golden Cages』/FAADA FREDDY
*Think Zik! 発売中 2,750円
歌声はもちろん、手拍子などボディパーカッションも駆使し、自身の体から発することのできる音だけでハートウォームなR&Bを奏でるセネガルの鬼才による9年ぶりの作。生命力にあふれたアカペラ曲から、ファレルにも通じるヒップホップ以降の明快なポップ路線、アンジェリーク・キジョーも客演に迎えてアフリカらしさを強く打ち出したものまで。親しみやすくも独創的なオーガニックR&Bは、ジョン・バティステあたりがお好きな方もお試しを。
これが好きなあなたには……
☑『Boomerang』(2003年)/Daara J
フレディが在籍するセネガル発の3人組が2003年に発表した、アフリカン・ヒップホップ新時代の到来を告げた大ヒット作。アフロビーツやアマピアノが世界的に親しまれるようになった今、改めて聴きたい先駆的な名作です。
文/吉本秀純