このアーティスト、要チェック! 今月のNEWSな人
取材・文/竹内 厚 写真/小檜山貴裕
『Osaka Art&Design 2024
「HANKYU ART FAIR 2024」』
期間:5月29日(水)~6月10日(月)
場所:阪急うめだ本店9階
阪急うめだホール/阪急うめだギャラリー/アートステージ
デジタル/アナログで
割り切れない写真による作品
写真によるさまざまな表現を手掛けている顧剣亨さん。5mほどの巨大な作品も少なくなく、例えば、その都市の最も高いビルの展望台から四方を高解像度カメラで撮影した4枚の画像を1枚に編み込んだ「Cityscape」は代表作の一つ。1ピクセル単位で画素の列や行を手作業で消して編み合わせるという途方もない作業の果てに、360度の都市風景を1枚の作品として見せるというもの。
「最終的な制作過程ではシステマチックにルールを定めて、再現性を持たせられるように考えています。僕は飽き性なんだけど、そうすれば、僕はただマシーンになって働けばいいから(笑)。プログラムを組めば簡単にできることだけど、人間がやればダブって削除したり、スキップしたりっていうエラーがそのままビジュアルにも残っていて。制作にあたっては、そういう身体性を含ませることも大事にしています」
自身でデジタルウィービングと名付けたこの手法で数々の作品を作る一方で、かつて『KYOTOGRAPHIE』では、背中にGoProを付けて京都市中を歩き回って10秒ごとに自動撮影した15972枚の写真を展示したことも。単純にデジタルともアナログとも割り切れない、こうした制作スタイルと作品の幅も興味深い。
「作品を構想するときは、コンセプトを立てるよりも先に旅に出たり、ひたすら移動する中で体験したり、出合ったものをとりあえず撮影しておいたり……そうやっていろんな素材を集めて戻ってきてから、気になったことを掘り下げてテストを繰り返します。ほとんどが没なんだけど、一つでもいけそうなアイデアがあれば、それをコンセプト化して、再現性を持ったシステムを構築するというやり方」
写真家というよりは現代アート寄りの制作だが、聞けば、高校まではロボット工学などに興味を持つ、ばりばりの理系学生だったそう。写真を学ぼうと入学した京都芸術大学で、期せずして現代アートに触れたことから今につながっている。
「僕は現代アートの面白さって、分からないものをなくして分かりやすく整えるデザインとは真逆で、いろんな方法論で分かる部分を取っていって、クエスチョンこそを残していけばいいというプロセスにあると思っています。そのプロセスが大事だから、アウトプットには特にこだわりがなくて、他人が撮った写真を使ってもいいし、作品のサイズもコンセプトに合わせて考えてるだけなんです」
2023年、金沢21世紀美術館の若手個展枠に選ばれるなど活躍の場を広げるばかりの剣亨さん。今回、デジタルウィービングで制作した波の作品(撮影は白夜のアイスランドにて)を[阪急うめだ本店]前のコンコースで展示するとともに、アートフェアにも出品。スケールの大きなその作品を多くの人が目にする機会となりそうだ。
顧剣亨 Gu Kenryou
1994年京都生まれ、上海育ち。今回の取材は京都に構えるアトリエにて。蔡國強や名和晃平といった多様なアーティストの作品や現場撮影も手掛けている。
『Osaka Art&Design 2024 「HANKYU ART FAIR 2024」』
期間:5月29日(水)~6月10日(月)
場所:阪急うめだ本店9階
阪急うめだホール/阪急うめだギャラリー/アートステージ
- 住所大阪市北区角田町8-7
- 営業時間10:00~20:00(最終日〜17:00)
- 定休日不定
- 入場料無料