神戸・元町四丁目の本屋[本の栞]を営む、田邉栞さんの日々のブックマーク
VOL.15
わたしのたましいは いつだってちぎれていて
text and photo
田邉 栞(たなべ しおり)
神戸で[本の栞]という本屋をやっています。
次回イベントは4/27(土)、ミツメの川辺 素さんのソロライブです。
3.7 thu.
パンフレットは買いっぱなしで結局きちんと読みきらないことが多いから、ふと思い出しては読み返している。今朝は、まだ布団から出たくないけれどかといって二度寝するほど眠くもないという気分で、枕元に放ってあった『きのう生まれたわけじゃない』 1 のパンフレットを読んだ。最後の頁に載っている詩を、はじめは目で追って読んでいたけれどどうも頭に入ってこないので、なんとなく声に出して読んでみた。気持ちよい。起きるまでまだ時間があったので『桜桃の味』 2 の続きも観る。メタ的な終わりは、苦手な映画『ホーリー・マウンテン』 3 を思い出す。
パーマをあて、川沿いを下っていつもの花屋さん 4 へ行き、[高田屋] 5 へ。お母さんに、今日は一人なん?と聞かれる。うん、ひとり。きゅうりぬか漬け、焼き万願寺、マカロニサラダ、赤星一本。美容院にいるときと、[高田屋]で『宇宙人の部屋』 6 を読み終えた。お会計のときに、本、すすんだ? と聞かれたので、うん、読み終えた、アル中と共依存のひとの話やねんけどね、と答えると、隣の席で連れのおじさんと楽しげに軽口を叩きながら飲んでいたお姉さんが、なにそれ、おもしろそう、写真撮らせてもらってもいい、と話しかけてきて、3人ですこし話す。あんまり、ふつうの本屋さんでは売ってへんかもしれないですけど。そうなん、そんなんどこで知るん? とお母さん。ああ、わたし実は本屋なんです。え、そうやったん! なに、今まで知らんかったん、とお姉さん。そやなあ、いつも、今日も寒いねえ、とかしか話さんもんなあ。そうですよねえ。
3.8 fri.
大きな雨音で目が覚める朝7時、4時に届いた長い長い連絡をちらりと見て、突っ伏してまた目をつむる。つぎに目をひらけたら9時をすぎていた。寝ころがったままで、長い長い長い返信を打ち、起きる。おはようとか、おつかれさまとか、そんなささやかなやりとりが生活のなかにあるだけで、ひどく穏やかな気持ちになる。いたわりといつくしみ。もう夏の予定の話をしている。このひとに対する気持ちが、たましいがちぎれるみたいな、そういうものでなくて、ほんとうによかったとおもう。
昨日は帰ってからさっさか布団に入って、『気がする朝』 7 を読んだ。伊藤 紺さんの短歌は、言っちゃいけないんじゃないかと思っているようなことも、さらりと言ってくれる。うすくかがやくオブラートに包まれた生。
この人じゃないけどべつにどの人でもないような気がしている朝だ
下心のあるやさしさだとしてもありがとうやさしくしてくれて
かえでちゃん 8 の友人が店に来てくれた。一昨年の年末の[壬生モクレン] 9 で映画の話をした女の子。かえでちゃんと、その女の子と、3人で一緒に帰った。わたしはその話をされるまでその日のことを思い出せなくて、それはおそらくべつのことに気をとられていたからなのだけど、せっかく話しかけてくれたのに困惑した顔をしてしまった。自分の記憶力のなさをうらむ。またすこし映画の話をした。最近、良かった映画はありますか、とお互いに聞きあって、出てきたタイトルたちがどれもすきなものや気にしていたもので、このひとのこと、なんとなくすきだな、とおもった。また次会うときもおなじ顔をしてしまうかもしれないような人間なのだけど、わたしは。彼女もちょうど『気がする朝』を買っていってくれた。
- 電話番号080-3855-6606
- 住所神戸市中央区元町通4-6-26 元村ビル1F北
- 営業時間12:00~19:00
- 定休日水・木&不定
- カード使用可