聴きほれる、迷いなき生き物讃歌
☑『IKIMONO』/ONI
*SUPPONPON RECORD 発売中 2,500円
大阪発のロックデュオ、あふりらんぽのメンバーとして知られる佐伯真有美=ONIの5年ぶりのソロ作。優しく美しい“すっぴん”の声、丁寧に紡がれるアコースティックギターの響き、そして音像は部屋の空気に混じらせたい風通しの良さ。全12曲、迷いのない生き物讃歌で、それらは童謡や子守唄のようでもあり、しばし聴きほれてしまうはず。ラッパーの鎮座DOPENESS、EGO-WRAPPIN’中納良恵も参加。猛烈なアートワークは自身の息子作!
〈さらに、あなたへのおすすめディスクは〉
☑『あたえられたもの』(2017年)/ゆうき
こちらも関西発のアーティスト、OORUTAICHIとYTAMOによるユニットの1stアルバム。同じく、迷いなく導かれるような歌たちに引き込まれる名曲アルバム。時代性を問わない、歌の強い芯が本盤でもじっくり味わえるはず。
文/中村悠介
メランコリックでエモーショナルな春へと
☑『sentiment』/claire rousay
*HEADZ 発売中 2,420円
emo ambientを掲げるアメリカ・ロサンゼルスの才女、クレア・ラウジーがシカゴの老舗インディーレーベル・Thrill Jockeyよりリリースする最新作。静かな悲しみを含むギターの音色の上に、飛行機雲のごとく線を描く艶やかなバイオリンの旋律。また、これらの生楽器にオートチューンエフェクトを施したクレアのボーカルがじんわりと溶けて……いずれ虚空になるのだろうか。『sentiment』は私をメランコリックでエモーショナルな春へと導いてゆく。
〈さらに、あなたへのおすすめディスクは〉
☑『Ride the Skies』(2001年)/Lightning Bolt
音楽性は違うが、クレアと同レーベルのThrill Jockeyからリリースされた一枚。ドラム&ベースのノイズロックデュオで、バンド名の通り、稲妻のような爆音速に脳が揺れる。マイクを口にくわえて歌いながらドラムをたたくライブもインパクト大!
文/Tokiyo Ooto
切実で誠実、ハングリー精神に満ちたEP
☑『Backstage』/Flat Line Classics
*P-VINE 発売中 1,980円
東京・品川発、2DJ5MCのフレッシュなクルーによる3枚目のEPが発表された。全員が1997年生まれのZ世代だが、トラックはオーセンティックな90’sサウンドが軸。本作、とにかく春のパンチライン祭りで、「生活は街とともにあれ/死に場所を選べるくらいに」「首元光らすより照らす錆びない生き様」など、彼らのまなざす景色が熱く描き出されるリリックがざくざく。東京らしいヒリついたヒップホップの系譜がまた更新された。
〈さらに、あなたへのおすすめディスクは〉
☑『BOY MEETS WORLD』((2018年))/仙人掌
Flat Line Classicsの面々もリスペクトし、過去には客演に迎えたこともある、東京アングラヒップホップシーンの雄によるマスターピース。本作をサポートしたDJ SCRATCH NICEは、『Backstage』でもトラックを手掛けている。
文/吉田暁音(SAVVY)