このアーティスト、要チェック! 今月のNEWSな人
取材・文/竹内 厚 写真/米田真也
『空のかたさがわからない』
期間:5月1日(水)~6月8日(土)
場所:cafeやなぎ
大阪へ拠点を移して2年、
変わり始めた表現の形。
東京の芸大でテキスタイルを専攻していた岡本風愉さん。大学では主に染織を学び、ノルウェーの国立芸術大学にも交換留学をした彼女が、大阪での初個展を開く。それも身近なものに題を取って描いた絵で。もともとはどんな作品を?
「布にできるしわをなぞって描くということをやっていました。きっかけはノルウェーに行ったときにスーツケースにたくさんの布を詰めてたんですけど、向こうで一人で不安になって、そのしわくちゃな布を見てたら日本にいた頃のことを思い出して。そこでそのしわをなぞって毎日過ごそうって決めたんです」
服があり余る世の中で、単純なファッション業界への憧れでは制作できないことにも早くから気付いたというが、布そのものへの対する関心は今も持ち続けている。
「布って始まりは1本の糸なのに、それが集積して軟らかくてしなやかで強くて大きなものになることに引かれます。絵を描くキャンバスでも紙でも構造的に分解すれば布だから、全てのルーツは布(笑)。だからこそ、布のことを無視して絵を描くという感覚にはなかなかなれなくて、シワを描くことからしか始められなかったんですけど、そこからようやく自由になってきたのが大阪に来てからですね」
今、大阪に暮らしているのは、釜ヶ崎芸術大学などの活動でも知られる[ココルーム]との縁があってのこと。5月から始まる今回の個展にしても、[ココルーム]で出会った俳優・中川圭永子さんの[カフェやなぎ]での展示を見に行った際に、あなたもここで展示しちゃえば、と勧められたところから。居場所を変えて多くの人と出会う中で、背中を押されるようにして自身の表現も少しずつ変化してきたらしい。
「生きることと作ることの距離を開けずに、表現のそばに自分がいたいとずっと思ってきました。ただ、大阪に来てしばらくは仕事ばっかりになっていて、あ、私自身の表現を忘れてたなと思って。どれだけ忙しくても1日に1本の線を引く。それだけでもそれが自分にとっての絵なんだから、まずはそこからと思って描いています」
そうやって手元にあった色鉛筆で家の中のものを描きはじめたのが、2023年頃のこと。まだほんの1年前だ。そこからフライヤーの絵を頼まれたり、ライブペインティングに誘われたり、と早くも岡本さんの絵が広がりつつあるのも興味深いところ。
「自分の表現が……って悩んでたのが、個展を開くより先に仕事をもらったのも面白くて。やっぱり私自身が変わってきたんだろうなと思います。けど、絵を描いてるということ自体は、昔とやっていることはそんなに変わらないのかなとも思っていて。いずれはまた布を織ったり、布で何かを作りたいという気持ちがありますね」
岡本風愉 Okamoto Fuuyu
2020年多摩美術大学大学院修了。2022年から大阪在住。「生きるようにつくること」をテーマにさまざまな表現を行う。
『空のかたさがわからない』
期間:期間:5月1日(水)~6月8日(土)
場所:cafeやなぎ
- 住所大阪市浪速区浪速東1-4-3
- 営業時間11:30~19:00
- 定休日火・日・祝&第3月&不定
- 入場料無料(要1オーダー)
- アクセスJR芦原橋駅から徒歩すぐ