このアーティスト、要チェック! 今月のNEWSな人
取材・文/竹内 厚 写真/西島 渚
『ART WORKS』
期間:開催中~4月1日(月)
場所:coffee books gallery iTohen
描かなかった15年
ごく自然に描いている今
勢いのある若手作家が次々と出てくる一方で、ある程度のキャリアになれば制作や表現を続けていくことの大変さもにじむ。テレビ番組『あちこちオードリー』なんかで芸人たちがお笑い界におけるそんな話をよくしていて、ことアートに限らないだろうけど。今回登場いただく廣田くみこさんは家庭に入ったこともあって、15年ほどまったく描かない時期が続いたという。
「そのことに特に葛藤もなく、絵の展示はよく見ていたけど、描きたいとも思ってなくて。それが2015年に横尾忠則の展覧会を見てたら、突然もういい! て思って、また描きだしました。それはもう発作的に(笑)」
家にあるチラシの裏にマジックで描くような制作から始めて、個展やグループ展にも参加。専門学校時代はイラストを学んでいたというが、発表を重ねるごとに描く絵もだんだん変化して、今はかなり抽象的な作品になっている。
「コロナ禍で閉じ込められた感覚になったから、絵だけでももっと自由に表現できるんじゃないのかなって、物の形を追うのではなくなりました。自分の気持ちと照らし合わせながら絵日記のような感覚で描いてるかな。もともと、勉強もスポーツも友達作りも苦手な子どもだったけど、絵の中でだけは自由で……だから、小さい頃から変わってないのかも」
そして、専門学校時代の同窓生6人でのグループ展が決定。作家として活動を積み上げてきた人もいれば、しばらく発表を休んでいた人もいる。
「それぞれにいろんな形で表現に関わってきたので、制作を続けていくことのリアルもお伝えできるんじゃないかなって思ってます。だから、展覧会のタイトル『ART WORKS』というのも、絵だけじゃなくて、私たち自身も作品だっていう意味で」
見事にデザインされたフライヤーやSNSでは、確かに作品だけでなく作家像も発信されている……が、そこに写る廣田さんは寝そべって描いてる!?
「サボってるの? って言われるんですけど、別に座って描いても寝ながら描いてもそんなにこだわりはなくって。この姿が私らしいかなって思います」
実際、がたがたと揺れる線で自身の感情を表すような廣田さんの作品は、いびつさも隠すことなくそのまま残したようなナチュラルさ。
「絵の具が苦手で、クレヨンとかで描くことも多いので、どうしてもガタガタとした線になるんだけど、まあいいかなって。部屋に落ちてるペンでもいいんです。それを見つけたことに意味があるから。とにかく私は絵をほんとに頼りにしていて、絵に付いていくだけ。絵がいろんなところに連れていってくれるからこれからも楽しみですね」
廣田くみこ Hirota Kumiko
1982年生まれ。ペンやオイルパステルで線画を描く。今回の撮影は、卒業した大阪総合デザイン専門学校の前の道で。
『ART WORKS』
期間:開催中~4月1日(月)
場所:coffee books gallery iTohen
※出展は廣田くみこ、亀澤裕也、トヨクラタケル、中村晃大、haako、橋本ユタカ
- 住所大阪市北区本庄西2-14-18
- 営業時間11:00~18:00(最終日~17:00)※土・日・月のみ営業
- 定休日火〜金
- 料金入場無料(要1drink)