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今月、スパイされる人 静谷みさと さん

社会人を経て、ただいま芸術系の学校でデザインを勉強中。「本は、デザイン関連とは関係なく、いったんデジタルからアナログに頭を戻したいときに手に取ることが多いです」

☑1. 『ウール100% 完全版』 


(著)フジモトマサル 平凡社 2,420円

☑2. 『おやすみ短歌』 


(著・編)枡野浩一、pha、佐藤文香 実生社 2,750円

☑3. 『え、 この声 え?この声 え、この声』 


(著)渡辺剛太 筑摩書房  1,650円

歌集に小説。頭をほぐしてくれる本を、枕元に。

「眠る前にいろいろ考えてしまうタイプで」やや寝付きが悪いという静谷さん。「お酒も飲まないし、部屋を暗くしたり音楽をかけたりしても結局目がさえちゃうので、開き直って本でも読むか、と」。手に取ったのは、ヒツジの女の子・ドリーが主人公のコミック。2001年に初版が発行され、2023年に完全版として新装復刊した一冊だ。一人暮らしをしながら会社勤めをするドリーは、時にお出掛けしたり、友達と会ったり、その日常は、特に事件が起こるわけでもない平凡なもの。「ちょっぴりぽやぽやして、楽天的。ストレス0で日々を送っているところがなんだかかわいいキャラクターです。フジモトさんのほど良く低温な、でもどこかほっこりするタッチも相まって、読んでいるとリラックスできます。続編(『ウール101%』)があるそうなので、これも読んでみたいな」

 2冊目は、歌人・作家・俳人の3名が集い、「安眠」をテーマにした短歌を100首集めた歌集。「一日の終わりに、もやっとした言葉やざわざわした言葉が頭に残りがちなのですが、五七五七七の言葉を頭の中でぐるぐる回していると、なんだか穏やかな気持ちになれます」。作家であるphaが手掛けるゆるっとしたイラストも脱力感を誘う。「それぞれの短歌の横に解説文も付いていて『あ〜こんな解釈もできるんだな〜』などと考えているうちに眠気が……。良い感じで頭のストレッチになっているみたいです」

 「文字に書かれた言葉を、自分の頭の中で再現してみるうちに、眠くなっていることが多いなと思って」。3冊目はピン芸人が主人公の小説。ものまねをきっかけに大御所声優から人気アニメの声優となる道に誘われるが、夢を諦めきれず……。「小説内にもいろいろ仕掛けがあって読みやすいし、芸人&声優という登場人物の声も想像しやすい。タイトルも実は回文になっていて、なんか自由律俳句っぽくないですか?」

 眠る前に、頭の中をすっきり洗ってくれる、枕元に置いておきたい3冊でした。

※この記事は2024年3月号からの転載です。記事に掲載の情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認ください。

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