アートボード 23-100

ダブへの愛と信頼を響かせる
☑ 『響鳴』 / あらかじめ決められた恋人たちへ

*SPACE SHOWER MUSIC 発売中 3,300円


近年は『窓辺にて』、『宮本から君へ』といった実写映画やドラマの劇伴を数多く手掛けるなど、リーダー・池永正二の作家活動にも注目が集まっている「あら恋」。ユニットとして約1年半ぶりとなる新作は、感情の機微を描く鍵盤ハーモニカのセンチメンタルなメロディに対し、強靭で骨太なロック・サウンドが見事に融合したフロア仕様の作品。緊張感のある演奏を温かく包み込む残響=ダブへの揺るぎない愛と信頼が音の結晶となり広がっている。

〈さらに、あなたへのおすすめディスクは〉
☑『STILL ECHO』(1987) /Mute Beat
2023年にアナログでリイシューされた、Mute Beatの実質的1stアルバム。スリリングな演奏、叙情性たっぷりのメロディは、都会派ダブの源流。『響鳴』のラストに収録されたクールなバラッド「dawn」から続けて聴いてほしい。

文/森 樹

編集者/ライター。3月に来日するカントリー・ノイズ・ロックバンド、WEDNESDAYを聴いて、寒い冬を乗り切ります。

アフロビーツの一歩先を示した、多国籍R&B
☑ 『Pan African Rockstar』 / Lady Donli

*Spotifyほか デジタルリリース


最近では欧米圏チャートの上位に顔を出すことも珍しくなくなったナイジェリア発のアフロビーツだが、Lady Donliはより進歩的なスタンスで、独自のアフロR&Bを更新し続ける才媛。4年ぶり2作目となった本作では、タイトル通りロックな要素まで取り入れつつ、よりハイブリッドな境地へ。イギリス、カナダ、アメリカ在住のアフリカにルーツを持つ才人たちを客演に迎え、グローバルな繋がりを着実に広げている点も聴きどころ。

〈さらに、あなたへのおすすめディスクは〉
☑『Work Of Art』(1900) /Asake
アフロビーツのメインストリームで今最も聴くべきはこの人。南アフリカ発のアマピアノも取り入れた最新の音作りの一方で、歌やコーラスではフジやハイライフといった自国の音楽要素を強く反映しているところが斬新!

文/吉本秀純

大阪市在住の音楽ライター。2023年は街中の有線でアフロビーツ最大のヒット、Rema「Calm Down」をよく耳にしました。

ハレとケが手をつなぐ、まろやかな人間賛歌
☑ 『恋愛』 / 入江 陽

*P-VINE社 2月14日(水)発売 2,750円


ゴミの舞う繁華街の朝も、きらめくクリスマスの夜も。相反すると感じる景色だって、入江 陽のサウンドと詩世界の中ではきっと平等でまろやかな人間賛歌に。たくさんの目にした風景、耳にした音楽たちは彼に切り取られ物語となり、読み聞かせられるうちに心地良さで眠りについてしまう……。ざわつく心も、歌となって耳に届く頃には安らぎへと姿を変えてしまう音と言葉の群れ。7年ぶりのアルバムは、慈愛から生まれた輝きの紀行文だ。

〈さらに、あなたへのおすすめディスクは〉
☑『In Between Dreams』(1995) /Jack Johnson
上のアルバム3曲目に参加するマリオ・カルダート.Jr がプロデュースの本作。良い意味で “突き抜けない”ハワイアンのムードが憂いを波のようにさらう。甘い歌詞を軽やかに包む至妙のオーガニックナンバー「Banana Pancakes」は必聴。

文/原田美桜

バンド・猫戦の作詞曲とボーカルを担当。猫とワインを愛する日韓ミックスルーツ。友達にたくさん会えていて幸せな今日この頃。

※この記事は2024年3月号からの転載です。記事に掲載の情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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SAVVY1月号『よしもと漫才劇場となんば』
発売日 2024年11月22日(金)定 価 900円(税込)