1.円熟した遊びが放つアダルトとポップネス
4/ the band apart (naked) *asian gothic label発売中 3,080円
4枚目となる(naked)名義での新譜。押し寄せるリズム、ざらついたアコースティックギターの感触は、早々と耳を通り過ぎ、私たちの心臓に直接届くかのよう。若さをまとった花や新緑の未熟さゆえの美しさではなく、木の葉や木の幹のような心強い美しさをたたえた全10曲は、CDアルバムとしての一体感をも宿し、この季節のムードに寄り添う。the band apart(naked)でしか聴くことのできない、円熟味が醸すマットな輝きを味わいたい。
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前へ(2016年) □□□ feat. the band apart
the band apartのメンバーをVo.に迎えた本作。Ba.原 昌和が歌う「神話具現」は、サンプリングを駆使した□□□節炸裂のトラックで、2組のレアな化学反応を存分に楽しめる1曲。□□□の三浦康嗣は左のアルバム7曲目にもピアノで参加。
文/原田美桜
バンド「猫戦」の作詞曲と Vo.を担当。猫とワインを愛する日韓ミックスルーツ。6都市ツアーを巡り中、いろんな猫に出会いたい!
2.伝説のライブ・バンド、その強烈な色気
BUT!/ CLISMS *SUPER FUJI DISCS 発売中 3,773円
ゼロ年代の東京インディー・シーンを駆け抜けた孤高のインスト・ロックバンド、CLISMS(クリスマス)のライブ・テイク集が、10年以上の時を経てリリース。一つのドラム・セットを解体、二人の奏者が向かい合って叩く変則ツイン・ドラムを擁して疾走と混沌を表現した彼らだが、クリアとは言えない本作の音質でも十分にその衝動的ガレージ・サウンドのすごみは伝わる。何より音から発せられる強烈な色気、これは現在でも色あせていない。
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US(2022年) おとぎ話
CLISMSに在籍していたドラマー前越啓輔とギター牛尾健太は現在、同じ大学の音楽サークル内で結成されたバンド・おとぎ話のメンバー。歌ものでありながらエッジの効いた演奏に、そのバックボーンがうかがえる。
文/森樹
編集者、ライター。先日LABCRYのライブを東京で観ることができまして、その陶酔感のある演奏にすっかり骨抜きにされました。
3.ますます大胆な切り口で民謡をヒップに更新
日本民謡珍道中/ 民謡クルセイダーズ *Universal Music発売中 3,300円
昨年と今年にはヨーロッパ・ツアーも成功させ、12月からは初の南米ツアーを控える中で発表された6年ぶりのアルバムは、より大胆かつ媚びない音作りでバンドの自信と成長を反映したものに。「佐渡おけさ」「木曽節」「ソーラン節」といった日本各地に根付いた有名曲に、ビンテージな音色のシンセ、クンビアやブーガルーなどの多彩なラテン・アレンジを融合した音の連続は、痛快にしてスリリング。民謡のイメージが一変するはず。
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Cera Perdida(2020年) Frente Cumbiero
民クルとの合体ユニット「民謡クンビエロ」としても作品を発表しているコロンビアの先鋭的なクンビア・グループによる2020年作。今年に行われた来日公演も、アルバム以上にアグレッシブなグルーブを放っていて強烈だった。
文/吉本秀純
大阪在住の音楽ライター。12/3(日)に東梅田[Jazz On Top]で公演を行う中国ジャズ界の才媛ヴォイジョン・シーにぜひご注目を!
※この記事は2024年1月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。