“女優の仕事以外の時間は
ずっと自分でいさせてくれ!”
確かな演技力と自身のYou Tubeチャンネルですっぴん部屋着で爆買い戦利品を披露するなど、俳優らしからぬ!?飾らないキャラクターで、こと同性から圧倒的支持を得ている仲里依紗さん。スタジオポノック最新作『屋根裏のラジャー』では、主人公の手助けをする少女・エミリを演じています。
想像と現実の世界で冒険を繰り広げ成長していく少年の映画を通して、仲さんが感じたことは? そして大人社会の「常識」に縛られず、自分らしさを貫く仲さんの原動力とは……?
アニメは声だけだからこそ
何処までもどんどん行ける
編集部(以下、編) エミリは当て書き!?と思うぐらい仲さんにぴったりの役で驚きました!
仲 里依紗(以下、仲)エミリは現実にはいない子だけど元気で明るくて、〝イマジナリ〟(架空)の町でみんなに慕われてるリーダー。落ち込んでるラジャーを巻き込むテンションや行動力があるけど、実は隠してる過去もあって、完璧ではない。だからこそ包み込んでくれるような温かさがあって、私は人見知りで仲良くなるのに時間がかかるタイプなので、こういう人いいなあって大好きになりました。
編 エミリを演じる上で心掛けたことはありますか?
仲 年齢的にもみんなのお姉さん的存在なので、明るくしっかりいようと思いました。イマジナリの世界は個性的なキャラクターが多いので、声もアニメっぽく作りすぎず、自然な感じを心掛けましたね。
編 同じ演技でも通常の芝居とアニメでは、全然違いますか?
仲 声に集中できる一方、絵に合わせないといけない難しさもあって。複雑なリズムを刻んだ上に、気持ちよく感情を乗せて台詞を言わないといけないので、技術が要りますよね。でもアニメーションの世界って人間が演じるのは不可能なことも全部可能になるから、可能性は無限大で。私はもともと自分の声があまり好きじゃなかったんですけど、登場人物になった気分で自分の声も、こんなこともできる! ってどんどん行けるし、すごく楽しい。
編 イマジナリの町は特に、図書館の本からいろんな世界が次々に出現して、映像的にもすごく楽しいです。
仲 マチュピチュに跳びーの、長崎の出島に跳びーので。私も今でも自分専用の高速道路でシューって目的地まで行けたらいいのになーとか考えちゃうので、すごくわくわくさせられました。
大人と子どもの気持ち
両方が描かれたファンタジー
編 仲さん自身、子ども時代はイマジナリの世界で遊びました?
仲 架空の友達はいなかったけど、目立つことが嫌だったので、わりと自分の世界で遊んでるタイプだったかな? 一時期、で遊んでるタイプだったかな? 一時期、周りの人が喋ってる声が早口で聞こえていて、自分だけがスローモーションの世界にいるみたいな。若干、片足突っ込んでたかもしれません(笑)。
編 ちなみに、夢中になったファンタジーはありますか?
仲 世代的に『美少女戦士セーラームーン』とか、あとは『不思議の国のアリス』も好きでしたね。体が大きくなったり小さくなったり、猫やウサギが喋ったり、終わらないお茶会とかトランプの兵隊とか、ちぐはぐでぐっちゃぐちゃでこの世界誰が考えたの!? って。普通の人は嫌だと思うものが好きなので、ゾンビとかも大好きでした(笑)。
編 今回の映画で仲さんがぐっときた箇所があれば教えてください。
仲 私も子育て中なので、アマンダのお母さんが「何度言ったら分かるの!?」って怒ってるシーンは「分かるー」って思いましたね(笑)。一方で、自分が子どもだった頃の記憶を思い出して、子どもは子どもでなんで分かってくれないの? って思ってるんだよなって、気付かされもしたし。変わっていくのが自然だからこそ、大人になることを楽しまなきゃなとも思いました。
編 仲さん自身、結婚してお子さんができることで変わった?
仲 付き合いの幅が広がったし、社交的になりましたね。一人で仕事だけしているときは、業界の狭い世界しか知らなかったんだなって。いろんな情報も知れるし楽しいです。
昔は俳優ってこうだよね、という
変なイメージにとらわれていた
編 仲さんといえば髪をショッキングピンクに染めたり、ファッションも個性全開で楽しまれています。
仲 昔は私もみんなの理想にならなきゃと思ってたんですよ。「俳優ってこうだよね」、みたいな思い込みにとらわれて、こういうことはイメージにそぐわないって自分に自分でダメ出ししてた。でも、あるときから何で嘘つかなきゃいけないんだろう? という感覚に陥って。普通に自分が好きなことをやろうって、自分の中の変なしがらみをぶった斬った。
編 そんなふうにぶった斬れた直接のきっかけはありますか?
仲 やっぱり家族ができたことと、年齢や時代もありますよね。SNSで自分で自分のことを発信できるようになって、反応も直接返ってくるようになって、好きなことしていいんだって思えたんです。事務所のスタッフも最初はあたふたしてましたが、最近は諦めたのか暴走しても何も言わなくなりました(笑)。
編 今日の服もネイルもかわいい!
仲 サム・スミスを見に行くから、網タイツネイルにしよーって。自分の気分を上げたくてやってるので、最近は人が見てどう思うか、全然考えなくなりましたね。
編 自分ファーストが最強だし、楽しいですよね。
仲 仕事に関してもそう思います。自分が好きなことやって、それを好きと思う人が楽しんでくれるのが一番だなって。
編 そんなふうに自分を曝け出している仲さんが「他人を演じる俳優」なのが、面白い。
仲 アリスじゃないけど、あべこべですね。俳優の仕事は楽しけど、自分になれないのが難点かな。だって自分が一番面白いですもん。俳優の仕事以外のときはずっと自分でいさせてくれ! って思って、実践してます(笑)。
ざっくばらんでチャーミング。場の空気をハッピーに変える仲マジックに取材陣一同、ほれ直しました!
Profile
仲 里依紗
なか りいさ
ティーン誌のモデルを経て俳優に。2006年に劇場アニメ『時をかける少女』でヒロインを演じ、2010年には、実写版『時をかける少女』『ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-』で日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得。今年はNetflixドラマ『離婚しようよ』も話題に。
『屋根裏のラジャー』
12月15日(金)公開
ラジャーは愛を無くした少女アマンダの“イマジナリ”(想像の友達)。屋根裏部屋で毎日楽しく過ごしていた二人だったが、“イマジナリ”は人間に忘れられると消えてゆく悲しい運命にあった。そして失意のラジャーは、かつて人間に忘れられた想像たちが身を寄せ合って暮らす「イマジナリの町」にたどり着く――。
原作/A.F.ハロルド「The Imaginary」(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)
監督/百瀬義行
出演/寺田 心、鈴木梨央、安藤サクラ、仲 里依紗、杉咲 花、山田孝之、高畑淳子、寺尾 聰、イッセー尾形 ほか
劇場/大阪ステーションシティシネマ、MOVIX京都 OS シネマズミント神戸 ほか
写真/森川英里 取材・文/井口啓子 スタイリング/黒瀬結以 ヘアメイク/近藤志保(reve)
ニットトップス、パンツ/共にKIDILL(Sakas PR) ピアス/Matilda rose(Matilda rose) ネックレス/Elpe visible 左手中指リング/masae 左手薬指リング/maaa 右手中指リング/Thalatta 右手薬指リング/Amitie CREDIR(以上全てRHODES) その他スタイリスト私物
※この記事は、2024年1月号からの転載です。