久保史緒里

自分なりの力強さを出せたら……
“いのうえ歌舞伎”でいざ、新境地へ

 劇団☆新感線による“いのうえ歌舞伎〞に乃木坂46の久保史緒里さんが初登場。元禄時代を舞台にした“入れ替わり〞のアクションバトル時代劇で、物語のカギを握る巫女を演じる。けれん味たっぷりの本作は、酸いも甘いも噛み分けた百戦錬磨の名優ぞろい。さて久保さん、どう立ち回りますか?

大好きな新感線の舞台に
「まさか出演できるとは」

編集部(以下、編) 新感線の舞台は、よく観に行かれていたそうですね。
久保史緒里(以下、久) はい。何度も観に行かせていただいて。殺陣や音楽のパワーにいつも圧倒されていて、その中に自分がいるという想像が全くつかなくて。(出演は)すごくうれしかったですけども、まずは驚きが大きかったですね。
編 今回の『天號星(てんごうせい)』では、「歌って踊って神を降ろしてお告げを伝え
る踊り巫女」の「神降ろしのみさき」という役で、演出のいのうえさんによれば「乃木坂にはない歌を歌ってもらうと思う」とか。
久 新感線に出演させてもらえると決まった段階で、歌があると聞いてはいたのですが、その時点でごりごりのロックテイストな歌を歌うんだろうなと、なんとなく思っていました。
編 そんな今の心境はいかがですか?
久 乃木坂46で歌っている感じとは全然違うテイストなので、稽古期間でどれだけパワフルさを手に入れられるか。そこはちょっと不安ではあるのですが、それを見越して稽古に入る前から準備はしてきたので……。チャンバラがメインの舞台ですが、その中で歌が一つの大事な要素として確立できたらいいなという気持ちです。
編 ちなみに、どのような準備を?
久 いつもボイトレでは乃木坂の楽曲に近いラインの歌の練習をしていたのですが、新感線の出演が決まってからはちょっと強めの楽曲に挑戦しました。

激動の幕開けとなった22歳、
新たな一面が開花する?

編 そういう強めの楽曲を歌ってみて、手応えや感触はいかがですか?
久 自分はしゃべっているときも、歌うときも、声の線が細いと思っていたので、その不安がすごく大きかったんです。果たしてそういう強い曲が歌えるのかなと思っていたのですが、ボイトレの先生に「そのテイスト、絶対合うよ」って言ってもらったので。自分なりの力強さを出せたらなって、今はちょっと楽しみに変わりましたね。
編 みさきのキャラクターには、ご自身にはない面もあるとのことですが、今までにない久保さんを見てもらえるとしたら、どんな姿だと思いますか?
久 一番分かりやすいと思うのはやっぱり歌ですね。これまでと全く違うテイストの歌に挑戦させてもらうので、今までと違う面をお見せできるのではないかと思います。あとは、巫女役も初めてですし、物語の鍵を握る役でもあって、彼女の二面性みたいなところで新しい自分を見せられたらなと思っています。
編 22歳になって1本目のお芝居のお仕事が新感線の舞台となると、激動の幕開けですね。
久 いや~、本当に(笑)。21歳もすごくお芝居のお仕事に恵まれた年でしたが、22歳はまさかの新感線からのスタートで。今年はいろんな役をやっていきたいなと思っていたところに初めての巫女の役ということもあって、勝手にご縁も感じていて。より頑張らないと、という気持ちです。

自分にも相手にもきちんと
向き合えるから手紙が好き

編 ところで、久保さんはブログでも丁寧に言葉をつづられていて、文章もすごく素敵です。「書く」という点で、何か気にかけていらっしゃることはあるのでしょうか?
久 私は誰かに手紙を書いている時間がすごく好きなんです。だから、誰かに文章を届けるときは、それがブログであっても、いつも手紙だと思って書いています。ブログはたくさんの方に見ていただくものではあるけど、いつも1対1の関係性で届くように言葉をつづるようにしていますね。
編 今はメールやSNSのメッセージで簡単にやり取りができますが、手紙に込められた温もりというのは、もらうとうれしいですよね。
久 今は便利な時代だと思うんです。でもそこに危惧する部分もあって。簡単に送れる時代になっちゃったから、感情の振れ幅がすごく狭まってきているなと感じています。メールとかは指先だけで気軽に気持ちを届けることができますが、本当の思いを伝えるときは自分も長い時間、気持ちに向き合って、ちゃんと手を疲れさせて書くことでようやく伝わることがあると思っています。私はすごいアナログな人間なんです(笑)。台本も書き直して覚えたりして。だから、常に紙とペンを持ち歩いています。
編 便箋とかペンは、見つけちゃうとすぐ買ってしまいますか?
久 買っちゃいますね。家にいっぱいあります。乃木坂のツアーのときも便箋と封筒とペンを常に持ち歩くようにしていて。遠征先のホテルで手紙を書くのがすごく好きなので、今もよく誰かに書いています。

 一言一言、確かめるように、丁寧に言葉を紡いでいく久保さん。そして、穏やかな口ぶりながらも、芯の通った強さも見え隠れ。その二面性、『天號星』で遺憾なく発揮されるのでは? 期待しています。

Profile
久保史緒里
くぼしおり
2001年生まれ、宮城県出身。2016年に3期生としてアイドルグループ乃木坂46に加入。雑誌『Seventeen』の専属モデル、ラジオ『乃木坂46のオールナイトニッポン』メインパーソナリティを務める。2023年は大河ドラマ『どうする家康』やドラマ「連続ドラマW湊かなえ『落日』」に出演。また、映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』、『リバー、流れないでよ』に出演するなど、幅広く活躍中。

On Stage
2023年 劇団☆新感線 43周年興行・秋公演
“いのうえ歌舞伎”『天號星』
日程:11月1日(水)〜20日(月) 
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

元禄の世を舞台に“入れ替わり”をテーマにした本格バトル時代劇。引導屋の主人・藤壺屋半兵衛役を劇団☆新感線の看板俳優・古田新太、半兵衛と中身が入れ替わる殺し屋・宵闇銀次を早乙女太一が担う。早乙女友貴、山本千尋、池田成志、そして高田聖子、粟根まことをはじめとする劇団員らが顔をそろえる。

住所:大阪市中央区大阪城3-6
演出:いのうえひでのり 脚本/中島かずき 出演/古田新太 早乙女太一 早乙女友貴 久保史緒里高田聖子 粟根まこと 山本千尋 池田成志ほか
料金:14,800円/ヤングチケット 2,200円(全席指定・税込)
問い合わせ:☎0570-200-888(キョードーインフォメーション) 

写真/桑名春香 取材・文/岩本和子

※この記事は2023年12月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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