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若葉の上で弾ける水滴のように
葵 わかなは、みずみずしさをたたえて

 アニメ映画『アナスタシア』に着想を得て作られた同名ミュージカルで、ダブルキャストの木下晴香さんと共に主演のアーニャを演じる葵 わかなさん。初演の2020年はコロナの影響で上演がわずか14回となっただけに再演を望む声も多く、この秋、いよいよ大阪に登場。

『アナスタシア』は
夢のあるキラキラしたお話

編集部(以下、編) ミュージカル『アナスタシア』が3年ぶりに再演されますが、葵さんにとって、とても印象に残っている作品だそうですね。
葵 わかな(以下、葵) 夢が詰まっている、キラキラしたお話で、すごく好きな作品です。2020年は公演が途中で終わってしまったので、好きだという気持ちと、そういう出来事と、この二つの点でとても印象に残っています。
編 葵さんが演じるアーニャの相手役であるディミトリ役とグレブ役は、初演でもトリプル、ダブルキャストでした。それぞれ俳優さんと演じて、いかがでしたか?
葵 せりふひとつでもこんなに違いが出るんだ!って、本当に面白いです。多分、自分もそういうふうに受け止められていると思うのですが、同じ役を演じていても「この方の作るディミトリの一番大切なものとか、順位、種類も、きっと違うんだろうな」みたいな、人間性の違いが空気感やテンションから感じられて、そこも楽しみながら演じていました。
編 葵さんがアーニャを演じるうえで一番大切にしているものは何ですか?
葵 これは、はるちゃん(木下晴香)もそう思っていると思うのですが、アーニャは弱々しい子ではなく、ちょっと泥臭い、根性のある子で。アーニャの持つ強さ……芯が強いとか、気が強いとか、いろんな強さがあると思うのですが、その強さがすごく大事だと思っています。一方で強いということは、弱さもあって。弱さはアーニャが抱える葛藤などにもつながると思うので、強さと弱さの対比は前回からすごく意識して、丁寧に表現したいと思っていました。

引き出しが増えるほど
アーニャは魅力的になる

編 アーニャは、天真らんまんでもありますね。
葵 そうですね、愛嬌があって、周囲の人がついつい許してしまったり、巻き込まれてしまうようなヒロイン気質もあって。そのかわいらしさも見せたいです。
編 葵さんは、劇中のどのシーンがお好きですか?
葵 二つあって。1つは1幕の列車のシーンです。列車が回り舞台の上で動くのが、アトラクションみたいですごい! って感じです(笑)。舞台装置と俳優がリンクしていて、それぞれの役の心情にフォーカスが当たるような動きになっているのが本当に見事です。もう一つは、2幕のアーニャたちがバレエを観るシーンです。これは初演ですごく驚いたのですが、その場面でプロのバレエダンサーが踊られていて。バレエをされている方と一緒にお芝居をする経験がなかったので、そういった部分でも強く刺激を受けました。稽古中も、精神性や、体への向き合い方など、とても勉強になりました。
編 そのシーンの続きで、葵さんを含めての四重唱がありますね。
葵 はい、アーニャとディミトリとグレブと皇太后の4人で歌唱する場面なのですが、ついバレエに見とれてしまって、「あ、私、歌う番だった!」ってなることもありました(笑)。
編 初演から3年が経ちましたが、この3年という時間は、アーニャを演じるにあたって大きな意味を持ちましたか?
葵 そうですね、生きれば生きるほど自分に引き出しが増えていくと思うので、アーニャはそういう引き出しが増えてこそ魅力的になる役なのかなと思います。

ダブルキャストの木下晴香は
刺激と安心感のある存在

編 木下さんのことを、先ほど「はるちゃん」とお呼びになっていましたが、木下さんからは何と呼ばれているんですか?
葵 本当は、私は「はるたそ」って呼んでいて、はるたそからは「わかたそ」って呼ばれています(笑)。もはや最近は「たそ」だけの時もありますが、基本、はるたそ・わかたそです。
編 木下さんとは初舞台のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で共演して以来の仲とのことで、木下さんからどんな刺激を受けていますか?
葵 ミュージカルで活躍されている方なので、やっぱり歌や舞台上での立ち姿を含めて、この世界で輝いている人なんだなとすごく感じます。自分とは違うタイプなので、役や作品の解釈の仕方もまた違って。はるちゃんが自分自身と向き合って役を深めている姿とか、近くで見ていると自分もすごく役に集中できて……。はるちゃんが頑張っていることが自分にとっての安心感につながるというか、「自分も安心して役に没頭できる」と思えて。すごく尊敬もしますし、温かさも感じられるという不思議な感じで。そんな存在の人もなかなかいないなって思います。
編 ちなみに25歳の葵さんが今、一番興味があることは何ですか?
葵 なんだろう……遊びに行きたい(笑)。夏っぽいことしたいなって。花火とか、お祭りとか、行けていないので行ってみたいな~って。同世代のみんなが思っているようなことを思っています(笑)。

 レンズを向けるとにこっとほほ笑み、人懐っこい表情を見せる葵さん。そのはつらつとした印象は取材中も同じく、まばゆいほどの鮮やかな輝きを放っていました。

Profile
葵 わかな
あおいわかな
1998年生まれ、神奈川県出身。2009年の俳優デビュー以降、TVドラマやCM、ナレーションなど幅広く活動。2017年には連続テレビ小説『わろてんか』(NHK)で、ヒロイン・藤岡てん役に抜擢される。2019年にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で初舞台・初ミュージカルに挑み、舞台進出。近年の出演作に、ドラマ『三千円のつかいかた』、『Dr.チョコレート』などがある。

On Stage
ミュージカル『アナスタシア』
10月19日(木)~31日(火) @梅田芸術劇場メインホール


20世紀初頭の帝政末期のロシアを舞台に、記憶をなくした主人公アーニャが自分の過去を取り戻し、家族と自身の心の帰る場所を見つける旅路を描いた物語。ディミトリ役は海宝直人、相葉裕樹、内海啓貴。グレブ役は堂珍嘉邦と田代万里生、そして2役の海宝直人がトリプルキャストの一人として務める。

会場/梅田芸術劇場メインホール
出演/葵 わかな、木下晴香、海宝直人、相葉裕樹、内海啓貴、堂珍嘉邦、田代万里生、大澄賢也、石川禅、朝海ひかる、マルシア、堀内敬子、麻実れい ほか
チケット/ES席14,000円 A席9,500円 B席5,500円(全席指定) 
問い合わせ/06-6377-3800(梅田芸術劇場)

写真/岡本佳樹 取材・文/岩本和子

※この記事は、2023年11月号からの転載です。

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