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『連続ドラマW フィクサー Season2』(WOWWOW)にかける、町田啓太の想いとは

正解がない世界だからこそ
考え続けて気付きを増やしたい

 「爽やかな好青年」を絵に描いたような人と思っていたら、不意に子どものように無邪気な笑顔を見せる……。そんなギャップにますます目が離せなくなる。町田啓太という人は、実に不思議な魅力の持ち主だ。
 『ダメな男じゃダメですか?』『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』といったコメディの印象が強いが、WOWOWでシーズン2が7月よりスタートとなる『フィクサー』は、金と欲にまみれた権力者たちと唐沢寿明演じる主人公のフィクサーが暗躍する、町田にとっては珍しい重厚なサスペンス。

おなかいっぱいどころじゃない
ぜいたくすぎるドラマ

編集(以下、編) 『フィクサー』は、ドラマ『白い巨塔』『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』などのヒット作を生み出した井上由美子さんオリジナル脚本の重厚な社会派サスペンスです。実際に完成した作品を見た感想は? 
町田(以下、町) いや、すごいですね。なんといっても脚本が面白いし、共演者の皆さんもとんでもないお芝居をされている。映像も素晴らしく迫力がありますし、もうおなかいっぱいどころじゃないです(笑)。
編 確かに、全てにおいて最近のドラマではあり得ない〝濃さ〟です。町田さんが演じている渡辺達哉は、事件の真相を探る新聞記者で、くせ者揃いの人物の中で一服の清涼剤となる役どころです。

母親との関係性を掘ることで
役の可能性が見えてきた

町 おっしゃるように、渡辺は正義に対する熱量も高いし、真相を知りたいという欲求も強い。それだけ前のめりになっている青年だと思うんですが、それ以上に、今回僕が重要だなと思ったのが渡辺と母親との関係性です。彼はなぜ政治部の記者になったのか、なぜそんなに正義感が強いのか……と考えると、やっぱり幼少期から母が一人で自分を育ててきたのを見て、自分が守らなきゃと正義感が芽生えたのかなと。その一方で、母に聞きたいけど聞けないこともあったからこそ、真実に迫りたいという欲も大きくなったんじゃないかと思って、イメージを広げていきました。
 井上由美子先生の脚本は、読んでいると登場人物の背景を探りたくなり、演じる上でもいろんな可能性が見えてくるんです。その分、本当に微妙なさじ加減で彼の見え方が変わるなと思って、西浦監督ともたくさん話をして、ヒントやアイデアをいただいて……。難しいけど、自分も一緒に作品を作れているなと思えたし、すごくやりがいを感じられました。
編 主演の唐沢寿明さん、母親役の斉藤由貴さんなど、そうそうたる方々との共演はいかがでしたか?
町 唐沢さんが演じた設楽は、正義なのか悪なのか、いったい何を目指しているのかまったく分からない。分からないことだらけの人をサラッと成立させているのがすごいなと、圧倒されました。あの膨大な台詞をまったく飽きさせずに聞かせて、これだけ引き込ませるんだと、衝撃を受けましたし、アドバイスもたくさんいただきました。
 皆さん本当に優しくて、ちゃんとコミュニケーションを取ってくださる方ばかりで。僕自身はあんなにスマートにできないなあと、現場では冷や汗かきながらコミュニケーションをとってました。

いろんな可能性を用意した上で
現場では柔軟でいたい

編 今回に限らずさまざまな現場でいろんな役を演じる中で、常に意識されていることはありますか?
町 まず、自分がどうこう以前に、作品としてどういうものを目指しているかが重要なので、それを知るために監督やスタッフの皆さんと話すことですね。その上で、自分はどうやったらいいか。こういう可能性もあるなーという気付きをたくさん用意した上で、現場ではなるべく柔軟でいたいです。芝居は、現場の空気や相手の方のお芝居によって自然に変わるものなので、結果として準備したものを手放すことになっても、それはそれで新たな気付きがあるんです。
編 今回の渡辺しかり、真っすぐな人物を演じられることが多い気がするのですが、町田さん自身はどんなタイプなのでしょう?
町 常に冷静に自分のペースを守っていたいと思っていますが、こうと決めたことは曲げずに突っ走っちゃうタイプでもあります。とはいえ、基本的にはふわっとしてるかな。俳優の仕事は、スポーツ選手とかとは違って、明確な結果も正解もない。それは、その時々で自分で感じるしかないので、とにかく考え続けて、自分なりの気付きを持つことを大事にしてます。
 作品を作ってる時でも、普段の生活をしている時でも、気付きがあれば作品や生活に反映できる。それを見逃さずキャッチするため、アンテナは張るようにしています。
編 日常生活の中で特に大切にしていることはありますか?
町 「無理しないで寝る、食べたいものを食べる」とかですかね。特別ストイックではないですが、撮影中も準備期間も考えてる方が多いので、ちょっとずつ自分に甘えを許すことも意識しています。

 何が大切で、何が必要か。ロジカルに俯瞰して考えながらも、自然に委ねる柔軟さも忘れない。鋭い知性と感性を併せ持った人なのだ。

Profile
町田啓太
まちだけいた
1990年生まれ、群馬県出身。「第3回劇団EXILEオーディション」で約2,000人の中から選ばれて俳優の世界へ。NHK連続テレビ小説『花子とアン』で注目を集める。主な出演作は『中学聖日記』『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』『テッパチ!』など。

On Air
『連続ドラマW フィクサー Season2』
7月9日(日)スタート 毎週日22:00〜(WOWOW)

脚本家・井上由美子が、世の中を裏から操る“フィクサー” 設楽拳一(唐沢寿明)の暗躍と金と権力に群がる人間たちの姿を3シーズンにわたって描き出す、ノンストップサスペンス。Season2のテーマは“冤罪”。新聞記者の渡辺達哉(町田啓太)が殺人未遂容疑で逮捕・起訴されるが、この冤罪から逃れられるのか?

監督/西浦正記、池辺安智 脚本/井上由美子
出演/唐沢寿明、町田啓太、江口のり子、小泉孝太郎、要 潤、斉藤由貴 ほか

写真/森川英里 取材・文/井口啓子 
スタイリング/宮本まさ江 ヘアメイク/小林真由[MARVEE]

※この記事は、SAVVY2023年8月号からの転載です。

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