見る前に知りたい!アート深掘り話
文/岡山 拓
『デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン』
期間:開催中~2023年6月18日(日)
場所:大阪中之島美術館
重なりあう二つのクリエイション
明るくて広い展示室、整えられたモダンな空間は、まるで海外の美術館のコレクション展示のような雰囲気。展示の動線や区分を特に行わずにさりげなく配置されていて、キャプションも最小限。とてもスマートな印象を受ける。この展覧会は空間全体を感じて、鑑賞者それぞれが動線を作っていく参加型の企画。目的はデザインとアートの「重なりしろ」を考えること。映画ポスター、家具、家電、携帯電話、絵画、彫刻、現代美術が違和感なく隣り合わせ。通常の展示であれば、分かりやすくジャンルや時代、地域ごとに区分されることが多いが、今回はあえてそれをしていない。唯一、戦後の国内のものに限っている点で、私たちの日常感覚に近くとても観やすくなっている。
スマートフォンが普及する前夜、20年前にauから発売された「インフォバー」は、機能もさることながら、初めてデザインで注目された携帯電話だ。生み出した深澤直人は無印良品のデザインを手掛け、日本民藝館の館長も務めている。ボタンを隙間なく並べるデザインは技術者を困らせたようだが、ニューヨーク近代美術館のデザイン部門に収蔵されるなど評価が高い。その後もauは草間彌生や彫刻家の名和晃平とコラボレーションして、アートとデザインの両方をまたぐプロジェクトを展開した。そして、草間を代表する「無限の網」シリーズや名和のガラスビーズでヒツジの剥製を覆った初期の彫刻と共に展示されていて、デザインとアートが互いに刺激し合っていることがわかる。
現代美術の主要な作品を押さえながらも田中一光、剣持 勇、柳 宗理、倉俣史朗といったレジェンド・デザイナーの傑作が並び、戦後の文化史も垣間見られる。作品横のデバイスでは、デザインとアートの「重なりしろ」を投票できて、最後の部屋でプロジェクションされた映像に反映され、ほかの観覧者の結果も見ることができる。美術館は、あなたが「何をアートと感じ、何をデザインと感じるかの重なり」を知りたがっているのだ。
『デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン』
期間:開催中~2023年6月18日(日)
場所:大阪中之島美術館
- 電話番号06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
- 住所大阪市北区中之島4-3-1
- 営業時間10:00~17:00※最終入館~16:30
- 定休日月
- 料金入館料1,600円
- アクセス大阪メトロ肥後橋駅から徒歩10分
※この記事は2023年7月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。