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マルチに活躍するアイドルが増えている昨今、文壇に衝撃を与えるような作品を書くアイドルもちらほらと。そんな中、今をときめく現役アイドルが、アイドルを主人公に小説を上梓。しかも、甘酸っぱい恋愛をテーマに。

話すより文字にする方が
自分の気持ちを伝えやすいんです

アイドル側も、ファン側も
うまく描けたかな……

編集部(以下、編) 売り出し中のアイドル(4人組のセンター)である高校生の女の子と、その追っかけをする地味な大学生の男の子。この二人が交互に一人語りする構成で小説は進んでいきます。現役アイドルが、恋愛をテーマに書かれたのに驚きました。
安部若菜(以下、安) アイドルとファンの恋愛みたいなところが取り上げられる部分ではあるんですけど、夢に悩んでる10代の普通の女の子と男の子が成長していく、みんなが共感できるところを書いたつもりです。全然「恋愛小説」とは身構えず読んでほしい。でも書いてみて、なんでこんなにファン心理が分かるんだ、こんなにバレてたなんて、ってファンの方にも言われたりして。ガチ恋の部分は想像で書いたんですけど、そうやって共感してもらえたなら「よし!」って感じです。(NMB48の)メンバーにも読んでもらって、めっちゃアイドル側の気持ちもめっちゃ分かるって言ってもらえてどっちも心情をちゃんと書けたのかなって。
編 アイドルとしての葛藤も小説の中で描かれています。安部さんの考えるアイドルは、どういうものでしょう?
安 キラキラしていて、現実のちょっと嫌なことを忘れさせてくれる、同じ人間だけどちょっと夢のような存在。古い考えかもしれませんが、やっぱり夢を見せてくれるのがアイドルだなって思います。自分がアイドルになって、自分自身が夢の存在と思えないので現実過ぎて、こんなんでいいんだろうかって思うところはありますけれど。小説の中で出てくるアイドルの人間らしい部分は、ファンにとっては見たくないかもしれないなっていう迷いがありながら書いてました。裏側を知られるのが不安だったんですけど、〝小説だと思って楽しく読めたし、安部さんがこういう考えを持ってるのかなってのぞき見れた気がして楽しかった〟って、ファンの方が言ってくれてうれしかったです。なんて懐が広いんだってびっくりしてます。

編集者さんに
褒めて伸ばしてもらった

編 小説を書くのは、簡単ではないと思います。子どもの頃から本好きだったとうかがっています。その影響も?
安 すごく大きいと思います。ちっちゃい時から小説をたくさん読んできたので、なんとなく書くイメージは湧きやすかったです。両親も本を読むのが好きでよく図書館に連れて行ってくれたりとか。結構人見知りで友達が少なかったので、図書室でずっと本読んでいたりとか。昔から文章書くのが好きで、小学校の時も友達とけんかをしたら先生に言いに行くんじゃなくて、原稿用紙にけんかの内容を全部書いたり。今思えばすごい変わってたって思うんですけど、でも言葉にするより文字にする方が、自分の気持ちを書けたので、そういうことが活きてるのかなぁ、って思います。
編 わりとスッと書けた感じですか? 
安 まず1文字目から、何から書けばいいんだろうっていう。小説の書き方って正解がない。台詞を書いたり心情を書いたりはまだできたんですけど、情景描写とかが足りないって出版社の編集さんに言われて、パソコンの横に「空間とか時間を書く」っていうのをメモしてずっと忘れないようにしていました。小説を書き始めてから他の本を読んだら、この人は情景描写がすごい丁寧だなぁ、この人は逆に心情がめちゃくちゃ上手だなぁ、とか。本当に初めてのことだったので手探りでやってきた感じです。
編 編集者からのアドバイス……、なんだか緊張しちゃいますね。
安 最初は前編後編で、アイドル側とファン側にしてたんですけど、「交互の方が同時に両方の気持ちがわかる」って言われて、確かに、と思って。時間軸通りに話が流れていた方が良いっていうのも、途中でアドバイスをもらって。やっぱり私は本に関しては全然初心者なので、そこは、プロの意見を取り入れた方が良いなって。
編 アイドル活動をしているからこそ、他人のアドバイスを受け入れやすかったのもありますか?
安 それもあるかも知れないですね。振り付けとか歌を練習しているときと同じというか。でも、すごい褒めて伸ばしてくださって、ダメ出しというより、こうしてもいいんじゃないですか?と提案してもらったので、そこは自由に書きやすかったです。

NMB48あってこその
小説家・安部若菜がいます

編 アイドルと、小説家。どちらも表現する人ですが、違いはありました?
安 アイドルは、ステージで歌ったり、踊ったり、決められた振り付け通りにやりつつ、どこで自分のオリジナリティを出すか?みたいな世界で。個性を出し過ぎてもダメだし、でも出さなきゃいけない。小説は自分一人だけで自由にやっていいので、それは初めての経験でした。アイドルは集団行動みたいな部分があるんですけど、本を初めて出して、一人でやることの自由さと、逆に責任みたいなものも感じました。だから普段アイドルの仕事をしているだけじゃ出会えない人にも、私のことを知ってもらいたいです。先輩がバラエティで活躍されたり、いろんなところでNMB48を広げているなかで、じゃあ自分は小説という分野で、また新しく知ってもらえたらいいなと思って挑戦しました。個人として知ってもらった先に、NMB48も知ってもらえるのが一番うれしいし、恩返しになると思うので。自分は特別な何かを持ってるというより、NMB48だからこうして活動できてるところもありますから。だからこそ自分の強みを生かせるのは、こういうアイドルをテーマにした小説を書くことかなと思います。内容を全部書いたり。今思えばすごい変わってたって思うんですけど、でも言葉にするより文字にする方が、自分の気持ちを書けたので、そういうことが活きてるのかなぁ、って思います。

写真/中部里保 取材・文/小栗真琴

Profile
安部若菜(NMB48)
2001年、大阪府生まれ。NMB48チームM副キャプテン。2018年に、NMB48に加入。“100通りの楽しみ方ができるアイドル”として、落語、経済などさまざまな分野で活躍中。2021年「吉本興業×ブックオリティ 作家育成プロジェクト」に応募し、出版権利を獲得。『アイドル失格』で小説家デビュー。

Book
『アイドル失格』

絶賛売り出し中のアイドルグループ「テトラ」のセンターを務める実々花。そして彼女のことを推す、冴えない大学生のケイタ。嫉妬や活動への温度差など「テトラ」内での不協和音が響く中、実々花とケイタが急接近!? アイドルとファンが禁断の関係になる!? SNSが発達した時代だからこその、甘く切ないエピソードも満載。
安部若菜(著)
KADOKAWA 1,650円

※この記事は、2月21日(火)までの期間限定公開です。
※この記事は、2023年3月号からの転載です。

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