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ニューヨークから縁もゆかりもない京都に引っ越した
“よそさん”ライターが見つける、京都の発見あれこれ。

納涼床で、冷えたビールをぐびり。

京都暮らしをはじめてから、密かな楽しみがいくつかできた。バスに乗って街を縦横無尽に巡ることとか、肌も心も整いまくる日帰り温泉通いだとか。屋外飲みもそう。陽が傾き、頬にさらっと風を感じる夕刻に、鴨川までぶらぶら歩いて向かい、川岸のベンチに腰かけて缶ビールをぷしゅっ。ああ、最高。ニューヨークでは、公園やビーチなど公共の場での飲酒が禁じられていて(見つかると罰金を取られることも)、長らく私の屋外飲み欲が封印されていた。だから余計にありがたく感じるのだ。

 屋外飲みに飢えているニューヨーカーたちが、夏になると殺到するのがレストランのバックヤード(裏庭の屋外席)と、ルーフトップバーだった。なかでもマンハッタンの高層ビルや、ブルックリンのホテルの上層階に設けられているルーフトップバーは、開放感をぞんぶんに味わいながら食事や飲酒ができるとあって、連日ぎゅう詰めの大賑わい。摩天楼が一望できるなど、絶景ビューがもれなく叶うバーばかりで、私もよく通ったものだった。

 日常から少し離れた屋外で、せかせかした毎日から解き放たれる。そんなルーフトップバーならではの特別な心地が懐かしいなあ……と思っていたところ、京都にも同じような体験ができる場所があるという。そのひとつが、鴨川の納涼床(ゆか)。鴨川の西側沿いの飲食店が5月から10月末の間だけ、川岸にせり出す形で設ける屋外席で、数百年も続く夏の名物なのだとか。

写真映えはいまいちだけれど、納涼床のベストは曇りの日。直射日光がなく快適。

京都在住の友人によると、おすすめは四条大橋のたもとにある中国料理店[東華菜館]の床。視界を遮る隣り合わせの店がなく、屋外席はゆったりとしたつくり。鴨川の流れと、人々が行き交う四条大橋、その向こうに南座、さらに遠くには緑の山々という京都ならではのパノラマを目の前に、水餃子をつまみつつ、冷えたビールをぐびり。なるほど、これは格別な気持ちよさ!

つるり、ぺろり。[東華菜館]の水餃子。

 納涼床とはだいぶ趣が違うけれど、ニューヨークを彷彿とさせるルーフトップバーがある、と小耳に挟み向かったのは[ノーガホテル 清水 京都]だ。ホテル最上階の屋外にバーカウンターとテラス席が贅沢に設けられていて、ここはマンハッタンのホテルなの? と、意識が一瞬で東海岸に引っ張られるような雰囲気。

ホテルは2022年4月に開業。

うおー、ニューヨークみたいだ! と歓喜した[ノーガホテル 清水 京都]のルーフトップバー。もちろん宿泊客以外も利用OK。

ソファにどっかり座り、ぐるりとあたりを見渡せば、京都の街はもちろん、比叡山の山並みまで、ばっちり望むことができる。高層の建物がなく、自然がすぐ近くの京都だからこそ叶うビュー。
カクテルをちびちびすすりながら、タコスをぱくりと口に放り込んだら気分上々。夏は屋外飲みにかぎるよねー。と、日常(と原稿の締め切り)から逃避するべく、今日も京都の屋外を目指す私なのだった。

※最新話(vol.11)は、SAVVY11月号(9/22発売予定)に掲載予定!ぜひチェックしてみてくださいね。

著者

Nihei Aya

エッセイスト。9年のN.Y.滞在を経て、2021年にあこがれの京都へ。近著に『ニューヨークおいしいものだけ』(筑摩書房)、『ニューヨークでしたい100のこと』(自由国民社)。7月にエッセイ本『ニューヨーク、雨でも傘をさすのは私の自由』(大和書房)を刊行。

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※この記事は2022年10月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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SAVVY1月号『よしもと漫才劇場となんば』
発売日 2024年11月22日(金)定 価 900円(税込)