2024年3月17日、大阪・上本町にて37年続いた名店[なかたに亭]は閉店した。そのニュースはテレビ番組にも取り上げられ、最終日には300人以上が長蛇の列をなすほどだった。あれから1年……[なかたに亭]オーナーパティシエ中谷哲哉さんを訪ねた。新章がスタートした中谷さんに、これまでの軌跡とこれからの展望を、出身者や、現在も関わる[YARD]のスタッフと共に語ってもらった。SAVVY.jpでは全4回でお届け。
写真/わたなべよしこ 濱田志野(Komorebi)
編集・文/長瀬 緑
vol.1 閉店して1年、今の想いは…
あまりの突然の出来事に、驚いた読者も多かったはず。
1年経った今だから話せること、その真相や今後について聞きました。
2024年3月17日、大阪・上本町にて37年続いた名店[なかたに亭]は閉店した。そのニュースはテレビ番組にも取り上げられ、最終日には300人以上が長蛇の列をなすほどだった。あれから1年……[なかたに亭]オーナーパティシエ中谷哲哉さんを訪ねた。「なぜ閉店したか……。一番聞かれるけど、一番難しい質問ですね。理由は一つではないですが“これまでやれなかったことをやりたくなった”からですかね」。65歳をひと区切りと思い、数年前から決めていたと話す中谷さん。閉店後に恒例となった月1回の旅行では、日本の食文化のすごさを実感し、海外ではなく日本にもっと目を向けたいと思ったそう。「地方の生産者が作る食材を大事に、その素晴らしいものを使ったお菓子を自家焙煎のコーヒーと一緒にお客さんに楽しんでもらう。それがこれからやるべきことなのかな」と話す。「リタイアとか引退とか、『何歳までやるんですか? 』とか言われるけど。結局、息子が[YARD]をやっている以上は、どういう形で携わるかは別として、僕も死ぬまでやることになる。大変ですが楽しみでもあリます」。新章がスタートした中谷さんに、これまでの軌跡とこれからの展望を、出身者や、現在も関わる[YARD]のスタッフと共に語ってもらった。
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中谷哲哉さん/1958年、大阪生まれ。南仏の三ツ星レストラン、大阪のグランメゾン[シェ・ワダ]を経て、1987年に[なかたに亭]をオープン。閉店後は、息子・奨太さんと共に営む[YARD Coffee & Craft Chocolate]にて、製造をはじめ、後進育成やメニュー開発などに携わる。
改めて聞く 中谷哲哉さんへ6の質問
Q1 [なかたに亭]を閉店した理由は?
A1 うーーーん。一番難しい質問。いろいろありますが“これまでやれなかったことをやりたくなった”は一因かもしれませんね。
Q2 では、やってみたかったことは何ですか?
A2 長期旅行、日々の運動、家での料理。そのどれもかなっていますね。水泳と料理は日課になっています。信州、九州など日本国内が今面白い! 生産地でいろんな食材や生産者さんに出合うのも楽しいです。
Q3 閉店時の反響にはどう思われましたか?
A3 想像以上で驚きました。お客さまの思いを知ることができて、とてもうれしかったです。
Q4 [なかたに亭]で一番好きだったお菓子は?
A4 シュークリームとチーズケーキ。シンプルで優しい味が一番好きです。
Q5 生まれ変わってもパティシエになりたい?
A5 今も現役なので……想像できないですね。でも、もしパティシエになってなかったら、森林警備隊になりたかったです。
Q6 これからやってみたいことは何ですか?
A6 今、天然酵母のパン作りにハマっていて、家でよく焼いています。パンと軽食、ワインなどを[YARD]でも出せたらいいですね。コーヒーやケーキがあって、その延長線に軽食もあって、お客さまの日常に幸せな時間をより増やせたらと思っています。どのくらい先になるかは分かりませんが。
「中谷哲哉さんと辿る[なかたに亭]の足跡 vol.2関西で活躍する卒業生のお店を訪ねて…」は、2/12(水)15:00更新予定です!お楽しみに。