ニューヨークから縁もゆかりもない京都に引っ越した
“よそさん”ライターが見つける、京都の発見あれこれ。
vol.35 6色のお札をもとめ、京都をぐるぐる
6体のお地蔵さまを順にめぐり、6枚のお札を集める伝統行事がある。と聞いて、スタンプラリー的で楽しそう、と不純な動機で心待ちにしていたのが毎年8月22日と23日に開催の六地蔵めぐりだ。
由来は平安時代の官僚、小野篁(おののたかむら)。危篤になり冥土に出向いた際、地蔵菩薩に会って人々を救済するよう託された篁は、奇跡的によみがえったあと、木幡山の1本の大木から6体の地蔵菩薩を刻み、祀(まつ)ったという。後に都の平安と、往来する旅人の安全を願った天皇の命により、平清盛が西光法師に供養させ、街道の入り口6カ所に6体を分けて安置した。そこから、地蔵が祀られた寺を巡拝して、お幡(はた)と呼ばれるお札を集める六地蔵めぐりの風習が生まれたとか。お幡6枚を玄関先につるすと家内安全・福徳招来のご利益があるそうだ。
8月22日、朝9時、いざ四条烏丸を出発。まずは南西にある浄禅寺へバスで向かう。京都市内東西南北に分散された6体の地蔵、2〜3時間でまわれると思ったら大間違い。地図アプリを駆使し、1日がかりである(まわる順番は自由)。住宅街にこぢんまりと佇む浄禅寺に到着。艶やかなお顔のお地蔵さまに対面し手を合わせ、お幡(300円)を授かる。1枚目、黄色を無事ゲット!
バスを乗り継ぎ、こんどは西の地蔵寺へ。こちらはマッシブな境内と本堂。お地蔵さまも大きい。お幡は緑。お腹がすいたので、近くの和菓子店[中村軒]の喫茶へピットイン。夏季限定の冷たいそうめんをすすり、名物の麦代餅(むぎてもち)をちゃっかりお土産に買い求めたら、さあ、あと4体!
バスで北上し、源光寺へ。バス停から徒歩17分! ひーっ! でも道中、路面電車の嵐電や、太秦映画村の時代劇セットを目撃するうれしいハプニング。お地蔵さまを拝み、紫のお幡を手に入れたら、バスと地下鉄で北東へ移動し、上善寺へ。境内に並ぶ露店を横目にお詣り。お幡は赤。神々しいお地蔵さまの手から伸びる紐に、役目を終えた古いお幡が結ばれ、風になびく様が印象的だった。
残り2体。最東にある徳林庵へ。道を埋める屋台が、夏祭り感。お幡は紺色。つづいて地下鉄でぐっと南へ下がり、六地蔵発祥の地である大善寺。もともと6体すべてが祀られていた場所である。対面したお地蔵さまは、赤黄白のドレッドヘア? と思いきや、頭に被っておられるのは、蚕の供養で奉納された真綿だそう。白いお幡を受け取り、午後5時、ついにコンプリート!
歩数1万歩超え。酷暑のなか、へとへとになったけれど、6カ所をまわれた達成感と、800年続く伝統行事に参加できた充足感でいっぱい。「お地蔵さんのメッセージを庶民に伝え、悪因悪果、善因善果、悪いことをしたら地獄へ落ちる、清く正しく心を持てと、篁は伝えたかったんやろうね」とは、以前に小野篁の取材でお世話になった六道珍皇寺のご住職の言葉。いにしえからの教え、お盆のこと、あの世のこと……あれこれ思いを馳せ、心もめぐらせた1日だった。
Nihei Aya
エッセイスト。9年のN.Y.滞在を経て、2021年に京都へ。著書に『ニューヨークおいしいものだけ』、『ニューヨークでしたい100のこと』、『ニューヨーク、雨でも傘をさすのは私の自由』など。4月に京都のエッセイ&ガイド本『京都はこわくない』(大和書房)を刊行。
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