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ニューヨークから縁もゆかりもない京都に引っ越した
“よそさん”ライターが見つける、京都の発見あれこれ。

vol.22 え? そうなの? 祇園祭。


  祇園祭は夏の一大イベント。恥ずかしながら私、京都に暮らすまで、1日か2日限りのお祭りだと思っていました。京都のみなさん、どうか無知をお許しください……。

 祇園祭が行われるのは、7月の1ヶ月。連日さまざまな神事&祭事が執り行われ、その最大の見どころが、17日(前祭/さきまつり)と24日(後祭)の山鉾巡行(やまほこじゅんこう/山や鉾と呼ばれる山車が街中を練り歩く)だと言われている。テレビで山鉾巡行を見たことがある私は、山鉾巡行、イコール、祇園祭と思い込んでいたのだ。

 ところが先日……
「知ってます? 祇園祭のメインは、山鉾巡行よりも神輿なんですよ」

 京都出身の知人にそう教えられて、私は混乱した。えーーー!

 知人曰く、祇園祭は疫病を鎮めるため、八坂神社の神様を神輿で担ぎ出したのが始まり。だから、神様を乗せた3基の神輿が八坂神社を出発し、町内を巡って御旅所(おたびしょ)へ安置される「神幸祭(しんこうさい)」、1週間後にまた町内を巡り八坂神社へ還る「還幸祭(かんこうさい)」という神事が真髄なのだという。ちなみに山鉾は、神輿が通る道を浄める役割を果たす。たとえば前祭の17日には、23基の山鉾が登場するけれど、先頭はいつも長刀鉾(なぎなたほこ/大長刀を鉾頭に付けている)と決まっていて、「長刀で結界を切る」のだとか。へー!

山鉾が建つのは、四条烏丸~三条烏丸の西側一帯。前祭と後祭では、山鉾の種類や数が異なる。

 ではこの祇園祭、いつ、どう楽しめばいいのだろう。テレビの山鉾巡行を見る限り、人混みと直射日光が恐怖。地元の人も「家のテレビで見る」そうで(やはり!)、いろいろ総合判断した結果、今のところの私の答えは「祇園祭は夜がいい!」である。

昼間の山鉾巡行は自宅で鑑賞し、夕方から神幸祭へ。八坂神社を出発した3基が石段下で揃うシーンが見どころだけれど、すごい人で断念……。

 まずは前夜祭の宵山(よいやま)へ(前祭16日と後祭23日の夕刻から行われる)。昼間よりは涼しいし、ビールを片手にぶらぶら歩きながら、街中に建つさまざまな山鉾の、迫力や美しさを間近で感じることができる。時間帯によっては「コンチキチン」で知られるお囃子(おはやし)を生で聞けることも。特に16日の宵山は一部歩行者天国となり、露店が立ち並んで賑々しい夏祭り感。通り沿いの飲食店が販売するフードにも目移り。あー、おいしい、愉快。午後8時過ぎになると、夕闇のあちこちに提灯を灯した山鉾が、オレンジ色にぼわんと浮かびあがる。ちょっと鳥肌がたつぐらい幻想的。夜祭りっていいなあ。

宵山も、2日前の宵々山(同じく歩行者天国&露店アリ。ただし前祭15日のみ)もかなり混雑。人混みを避けたければ、3日前の宵々々山へ。歩行者天国や露店がない後祭の宵々山(22日)と宵山(23日)も人が少なめ。

山鉾で限定販売される厄除けのちまき。来年は狙いたい。

 宵山の翌日、山鉾巡行の日は夕刻に始まる神輿見物へ。薄暗がりのなか担がれる神輿は勇ましく、神々しい。「ホイットホイット」という担ぎ手の掛け声と熱気を前に、なるほど、これが祇園祭か! と、鳥肌ふたたび。神輿3基はそれぞれルートが異なるけれど、神幸祭(17日)の見学におすすめなのは、3基を時間差でコンプリートできる三条大橋の上。混んでいないし、夜風が通るのもいい。

三条大橋では19時過ぎに1基、20時半頃にもう1基、さらに21時近くに1基が通り過ぎた。後祭24日の還幸祭はルートが変わるので注意。


宵山と宵々山の屋台に前のめり。
2023年の私的ベスト宵々山&宵山フード。左から、[INDIA GATE]のカップビリヤニ・鯛出汁チキン味。[亀屋良長]のかき氷。[YOLOs]で販売された、[食堂おがわ]の鶏からあげセット。

 ほかにも一般人が参加できる山鉾の曳き初め、からくり式のかまきりで知られる蟷螂山(とうろうやま)のおみくじなど、まだ知らぬ祇園祭はたくさん。来年こそは。と、もう次の祇園祭が待ち遠しい私なのだった。

著者

Nihei Aya

エッセイスト。9年のN.Y.滞在を経て、2021年にあこがれの京都へ。近著に『ニューヨークおいしいものだけ』(筑摩書房)、『ニューヨークでしたい100のこと』(自由国民社)。エッセイ本『ニューヨーク、雨でも傘をさすのは私の自由』(大和書房)など。

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この記事は2023年10月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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